第22話 カルラ・ミュラー
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「カルラ・ミュラーです。宮廷料理長の父を超えるために、日々奮闘中です。よろしくお願いします」
カルラが皆の前で自己紹介をした。
宮廷料理長の父を超えるとか、なかなか向上心があって良いと思う。
僕としても、やる気のある人についてきて欲しい。
だけどカルラにとって、僕の第一印象は最悪だろう。
いきなり初対面で、自分の胸のカップサイズを当てる皇子とかって、どうなんだろうか……。
ないよな……、あ~もう! なにやってるんだろうか僕は……。
戦略的撤退をして、別の料理人にチェンジしてもらうのは、どうだろうか。
「料理長、ちなみにカルラの次に若い女性料理人は何歳になりますか?」
僕は、意を決して聞いてみた。
「たしか40代だったはずです」
はいっ、終了~。
これは、もう背水の陣でいくしかないな。
初手で間違ってしまったけど、ここから挽回するしかない。
なんとしてもカルラを説得してみせる!
まずは、情報収集からだな。
料理長のステータスを確認してみよう。
【ラファエル・ミュラー】
ファルケ帝国 平民 宮廷料理長 45歳 男
知力 65/65
武力 75/75
魅力 90/90
剣術 E/E
槍術 E/E
弓術 F/E
馬術 E/D
話術 D/C
算術 D/C
芸術 D/C
料理 S/S
予想通りの料理S、さてカルラのステータスはどうだろうか。
【カルラ・ミュラー】
ファルケ帝国 平民 15歳 女
知力 60/80
武力 50/54
魅力 90/90
剣術 G/F
槍術 G/F
弓術 G/F
馬術 D/C
火魔法 G/D
水魔法 G/D
話術 B/A
算術 D/B
芸術 C/A
料理 C/S
知力80の素質に、料理の素質もS、おまけに火魔法と水魔法の適性もある!
料理人で火と水の魔法が使えると、料理の幅も広がるのではないだろうか。
これは将来、料理長である父を超える料理人になれるかもしれない。
欲しいな……。
「カルラ、僕と妹の旅に同行してくれるだろうか?」
「ごめんなさい。最初は行くつもりでしたが、気が変わりました」
あああ、やってしまった……。
これはもう、逆転できないかもしれないな……。
「えーと、なぜ気が変わったのかな?」
「その質問に答えても、不敬罪にならないのであれば、お答えしますが」
あああ、ダメだ。もうこれ詰んでないか?
何か起死回生の一手はないだろうか……。
やる気に満ちて向上心のあるカルラに、僕が提示できる有益なもの……。
う~ん……
あっ、料理人ならレシピとか?
自分の知らない未知の料理に、興味があるのでは?
たしか帝城の書庫にある魔術書を、コピー魔法で複製したときに、ついでに料理関連の書物をいくつか複製したはず。
「ちょっと待っていてね。カルラに見せたいものがあるんだ」
「はい……」
僕は、急いで旧館の一階に作った図書室に、料理関連の書物を取りに行った。
「やあ、お待たせしたね」
「いえ……」
「これを見てもらえるだろうか」
僕は、持ってきた料理関連の書物を5冊、テーブルの上に置いた。
「これは?」
「帝城の書庫にあった、料理関連の書物を写したものだよ」
「帝城の書庫に!?」
カルラが驚いている。
興味を持ってくれれば、良いのだけど……。
「殿下、拝見してもよいでしょうか?」
「どうぞ」
カルラが料理本を手に取り、パラパラとページをめくっている。
「こ、これは!」
「どうしたの?」
「私の知らないレシピが、たくさんあります!」
カルラが歓喜して、瞳を輝かせている。
「殿下、私も見せていただいて、よろしいでしょうか?」
たまらず料理長も見たいと言い出した。
「どうぞ、どうぞ」
「おお、これは宮廷料理大全集じゃないですか! 昔、何度か見せてもらいましたが、こんな貴重な本を……」
どうやら料理人にとって、喉から手が出るほど欲しいものらしい。
ここが勝負所だな……。
「カルラ、僕と妹の旅に同行してくれた料理人には、この5冊の本を休憩時間に好きなだけ閲覧できる権利を、与えようと思っているんだ」
「好きなだけ!?」
「でも、残念だよ。君の気持ちが変わってしまった以上、他の誰かを探さないとね」
さあ、カルラはどうでるかな?
「え、いや、あの、私……」
ふむ、これ以上は可哀そうかな……。
「カルラ、もう一度お願いするね。僕と妹の旅に同行してくれるだろうか?」
「は、はい。私にお任せください、殿下」
「よろしくね、カルラ。妹と仲良くしてあげて欲しい」
「はい!」
カルラは、満面の笑みを浮かべていた。
自らの気持ちで同行すると決めたのなら、きっと良い仕事をしてくれるに違いない。
カルラの承諾も得られて、これで一件落着だ。
さて、同行する料理人が決まったら、後は食材だな。
帝城の食料貯蔵庫から、少し分けてもらえないだろうか……。
「父上、お願いがあります」
「なんだ?」
「食料を確保したいのですが」
「おお、そうだな……、城内の貯蔵庫から好きなだけ持っていくがよい」
「好きなだけ!?」
「とはいえ、肉や魚は腐りやすいから、食べきれる範囲にするんだぞ」
さすが父上! なんて太っ腹なのだろうか。
転生後、使うことのなかった収納ボックスに、やっと活躍の機会が訪れた。
「料理長、カルラ、僕を食料貯蔵庫へ案内して欲しい」
「「はい、殿下」」
僕はテーブルの上に置かれている5冊の料理本を、収納ボックスへしまうことにした。
旧館の図書室で放置されていたものが、カルラに対する切り札となったことで、その価値は爆上がりだ。
なくさないように、大切に保管する必要がある。
「よし、これでいいかな」
僕は、収納ボックスに料理本をしまった。
「ちょっと待て! お前は収納ボックスを持っているのか」
父上が慌てて聞いてきた。
「はい、女神パラスからもらいました」
まあ、正確には一番良いものを、ぶんどってきたのだが。
「どのくらいの容量があるのだ?」
パラスは、東京ドームが10個以上入るって、言ってたような……。
この世界で比較対象になる建物は、何だろうか……。
魔術訓練場でいいか、東京ドームよりは小さいし。
「えーと、女神パラスが言うには、魔術訓練場が10個余裕で入るそうです」
「なんだと!」
父上が、慌てて料理長を呼び寄せ相談を始める。
そして、しばらくすると結論が出たようだ。
「コホン、前言を撤回する。好きなだけというのは無理なので、肉や魚の腐りやすいものは食べきれるだけ。その他の食料や必要な生活雑貨は、それぞれ最大で2割まで与える。これでどうだ?」
「ありがとうございます、父上!」
その後僕とカルラは、城内の食料貯蔵庫や雑貨貯蔵庫を巡る。
そして、上限となる2割分の食料や雑貨を収納ボックスへ突っ込んだ。
一緒にいた料理長は、在庫管理のため帳簿に何か記載している。
時折、悲鳴をあげていたが、カルラと一緒に気にしないことに決めた。




