第21話 第一印象
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僕は帝城内に入ると、一直線に父上の執務室を目指した。
執務室に到着し、扉を警備する衛兵に父上との面会を申請すると、すぐ中に通される。
「父上! 大変です、すぐに旧館まで来てください!」
僕が慌てて父上に訴えると、そこには父上だけでなく師匠と剣聖様もいた。
「そんなに慌ててどうしたのだ、クリストハルトよ」
父上が驚いて僕を見ている。
「突然に申し訳ありません。まさか会議中だとは思いもよらず」
「いや、気にせんでよい。今、終わったところだ」
父上が僕を気遣ってくれる。
「それで、いったい旧館で何があったというのだ」
「落ちついて聞いて欲しいのですが、今日の朝食に毒物が混入しておりました」
「なんだと!」
予想外の事実に父上が憤慨している。
「殿下、それで犯人に心当たりは、ございますか?」
師匠であるリートベルク侯爵が僕に尋ねた。
「はい、ただ帝城の中では答えづらいので、皆さま旧館までお越し頂けますか?」
「ワシもか?」
「はい、剣聖様も是非」
せっかく帝国の重鎮が揃っているのだ、この際僕とリゼの秘密についても、旅に出る前に話しておきたい。
後は、どうやって旧館まで移動するかだな。
このまま4人でぞろぞろと移動すると、目立ちすぎる。
すぐに皇后様の耳に、情報が入ってしまうだろう。
「4人で一緒に移動すると目立ちすぎるので、一人ずつバラバラでお願いします。旧館の門番には、話を通しておきますので」
そう言い残すと、僕はリゼの待つ旧館へと急いだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は旧館に到着すると、門番に重鎮が3人やってくることを伝え、リゼの元に移動した。
しばらくすると全員が揃ったので、食堂にて今回の毒物事件について説明を開始する。
「これを見てください」
僕が朝食のスープに鑑定魔法を使うと、先ほどと同じように毒物を示す表示が赤く点滅した。
ディアンフィディア(猛毒、遅効性)
「これは! 大変希少で高価な毒薬だったかと。実際に使われているのを見るのは、初めてですね」
師匠が驚きながらも、皆に毒薬の説明をしてくれた。
「それだけ高価なものを手に入れられて、僕とリゼットを邪魔に思っている人が、犯人だと思います」
僕がそう発言すると、父上は該当する人物に心当たりがあるようだ。
「ここまでするのか……」
「昨日、魔術訓練場で僕とリゼットが、上級魔法を使ったことが原因だと思われます」
「皇太子の件か……、しかしリゼットに関しては理由がわからぬな」
「おそらくは、筆頭聖女の座を脅かす存在と認識したのではないかと」
「そういえば、お前の母ラウラの光魔法がSになったときも、ライバル視しておったな」
「母上に対してもですか?」
「うむ、絶対に負けられないと、険しい表情をしておった」
まさか、母上に対しても殺意があったのでは?
「父上、母上が亡くなったときのことを覚えていますか?」
「もちろんだ、あれは魔物討伐隊にラウラが聖女代表として参加したときだった。たしか一週間くらいして戻ってきたら、体調が悪いと言い出してな。おそらくは、風土病にかかったのだと思う」
「そうだったのですね」
母上は、病死したのか……。
「師匠、この毒薬に遅効性とありますが、これはどういった症状がでるのでしょうか?」
「文献によれば、毎日少量を服用し続けると、一週間後くらいに体調が悪化して徐々に死に至ると記載されていました」
「なるほど」
「それと注釈に、まるで病死のように見せかけることができる、とも記載されておりましたな」
「なんだと!」
師匠の説明に父上が反応した。
「まさか、ラウラは毒殺されたのか?」
「どうでしょうか、これはあくまで推測の域を出ません。確たる証拠がありませんので」
父上の疑問に師匠が答えた。
「今回の件も、皇后様が一番疑わしいのですが、明確な証拠がないのが実情です」
「むむむ……」
僕の意見に父上が、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「父上、このままではリゼットを守り切れないかもしれません。ですので、僕とリゼットは、この城を出ようと思います」
「なんじゃと!」
「もはや、一刻の猶予も許されないかと」
「うーむ……。それで、どうするつもりなのだ?」
「旅に出ようと思います」
「旅じゃと?」
「はい、北を目指そうと考えているのですが、少し説明をさせてください。師匠と剣聖様も聞いて欲しいのですが」
僕は3人の重鎮に、女神パラスからもらった『可能性は無限大』について説明した。
そして、僕とリゼのステータスを見せて、リゼが大聖女の卵であることを伝える。
「まさか、本当にリゼットは大聖女の生まれ変わりだったのか!」
父上が驚きの色を示す。
「いえ父上、リゼットは大聖女リーゼロッテ様の生まれ変わりではありません。リゼットは、リゼットです」
「そうか……」
「はい、リゼットは大聖女の卵なのです」
「わかった。それで、いつこの城を出発するつもりなのだ?」
「今すぐにです」
「はあ!? 大丈夫なのか?」
「はい、僕の土魔法はSなので住む家も作れますし、オリジナルの複合魔法もあります。旧館での暮らしと変わらないかと」
「ふむ……、何か足りないものはないのか?」
「そうですね……、僕とリゼは料理ができないので、宮廷の料理人を1人連れて行ってもよいでしょうか?」
「わかった。アレクシス、宮廷料理長を呼んできてくれ」
「はい、直ちに呼んでまいります」
師匠が父上の指示に従い席を立った。
「あっ、師匠お待ちください」
「殿下、どうされました?」
「リゼットがいるので、料理人は男性でなく女性にして欲しいのですが」
「なるほど、承知いたしました」
「あと、できるだけリゼットの年齢に近い人がいいです。僕以外に話し相手がいませんので」
「かしこまりました。料理長にその旨伝えて人選してまいりますので、少々お待ちください」
師匠は、そう言って颯爽と食堂を後にした。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
しばらくすると、師匠が宮廷料理長と少女を連れて戻ってきた。
「宮廷料理長を務めさせて頂いております、ラファエル・ミュラーと申します。この度、若い女性料理人が必要とのことでしたので、私の娘カルラを推薦いたします」
宮廷料理長が丁寧に挨拶をしてくれた。
「さあカルラ、皆さまに自己紹介をしなさい」
父親の後ろからカルラが姿を現すと、皆の視線がカルラに集中した。
僕はリゼを毎日見ているから衝撃までは受けないが、かなりの美少女である。
セミロングの茶髪をサイドテールにまとめていて、茶色の眼をしている。
身長も普通くらいだろうか……。
そして僕の視線が顔から下に移った瞬間、衝撃が走る。
皆がカルラに視線を集中させている理由が今わかった。
僕の目の前に、巨乳美少女が降臨していたのだ。
全員の視線が、カルラの胸元にくぎ付けである。
いや、師匠だけは平然としているので、もしかしたら女性に興味がないのかもしれない。
僕はカルラの胸元から目が離せず、思わず何カップか計測を始める。
前世の記憶にあるグラビアアイドルの写真とカップサイズを、カルラの胸と照合していく。
E……じゃないな、F……いや……
「Gだ!」
僕は思わずカルラの推定カップを、声に出してしまった。
しかも、皆に聞こえるくらい大きな声で……。
皆の視線がカルラから僕に移る。
「ああ、独り言なので気にしないで欲しいかな」
僕は、努めて明るく言って誤魔化した。
しかし、カルラは左腕を横にして胸元を隠すと、赤面しながら僕を睨んでいる。
どうやらビンゴだったらしい。
あっ、これ第一印象最悪なやつだ……。




