第16話 リゼの指定席
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洗濯乾燥魔法が成功した後、昼食が届いたので、リゼと一緒に食べながら今後のことについて確認した。
「リゼ、さっきのことだけど……」
「はい、お兄様」
すごく良い笑顔で、リゼは上機嫌なようだ。
「僕とリゼの二人きりのときは構わないけど、他者がいるときは控えて欲しいのだけど」
僕のその一言で、リゼの顔色が曇った。
「ああいうのは嫌でしたか?」
「嫌じゃないよ! でもね、リゼは第1皇女なのだから、他者の目があるときは、それに相応しい行動をしないといけないよね?」
リゼが口元に指をあてて考えている。
「わかりました、二人きりのとき以外は、しないように気をつけます」
うん、どうやら冷静になってくれたようだ。
「でも、二人きりのときは、たくさん甘えちゃいますね!」
うん? 冷静なのか?
「ええと、お手柔らかにお願いします」
「はい!」
昼食後、洗濯以外にもやるべきことを見つけてしまった。
部屋の隅に、埃が溜まっていたのだ。
これは、掃除が必要かな。
掃除道具が置いてある場所も確認済みなので、午後は掃除をしようと決めた。
「さて、いざ掃除をしようと決意したものの、この広い旧館を全部きれいにするには、半日もしくは一日かかるかもしれないな」
「そんなことになったら、魔法の訓練ができませんね」
「それは困るな……」
「ならば、掃除魔法を作ってみたらどうでしょうか」
「いいね、早速やってみよう」
僕は風魔法で、食堂にある埃を一か所に集めようとしたが、散らばってしまい上手くいかなかった。
「ダメかー」
「難しいものですね」
「埃が散らばらない方法を、考えないといけないね」
「「うーん」」
僕とリゼは二人してアゴに手を当てて、解決策を模索した。
「お兄様、埃を何かにくっつけてしまうのは、どうでしょうか?」
「いいね、名案だよリゼ!」
僕は、リゼの頭を優しく撫でた。
「えへへ-、もっとたくさん撫でてください」
「はいはい」
いつもより多めに撫でてあげると、リゼは目を閉じてうっとりしている。
なんかネコみたいで可愛いな、モフモフしたくなってきた……。
いかんいかん、妹とはいえ必要以上に体に触れるのは良くないよな。
「はい、終わり」
「ええー、もっと撫でて欲しいです」
リゼが頬を膨らませて抗議している。
「また今度ね」
「はーい」
渋々だがリゼは納得してくれたみたいだ。
さて、埃をなにでくっつけたらよいものか……。
道具を使うとなると毎回は面倒だし、コストもかかるな。
魔法のみで完結できる方法が良いけど……。
火は火事になったら大変だし、土は余計に部屋を汚してしまうし、水は……。
「水だ!」
「びっくりした! 突然どうしたのですかお兄様?」
「ああ、ごめんごめん。水を使って埃をくっつける方法を考えついてさ」
「水を使って?」
「うん、コップに水を入れて放っておくと、表面に埃がついて浮かんでいることがあるでしょ?」
「はい」
「その応用で、水魔法で水の膜を作って、風魔法で埃を吸引できたらいけるかなって」
「どういうことですか?」
「言葉だけじゃ、分かりづらいよね。とりあえず実験してみるから見ていて」
僕は食堂内を風魔法で埃が舞う状態にしてから別の風魔法で吸引した。
イメージとしては、ハタキで埃を舞わせて掃除機で吸う感じ。
そして吸い込む場所は、立方体で中の表面が水の膜になっている。
その中を吸引した埃が通過すると、埃だけが水に付着して残りの空気は通過する仕組みだ。
「いくよ!」
掛け声とともに掃除魔法を発動させると、仮説どおりに埃が立方体の中に納まった。
「成功だ!」
「さすがです、お兄様」
「ありがとう。2階は使わないから放置でいいとして、1階の中でいつも使っている部屋だけやればいいかな」
その後、僕とリゼの部屋と風呂場を掃除した。
「こうして毎日洗濯と掃除をすれば、清潔で気分よく過ごせるね」
「はい、お兄様」
「それに、掃除魔法を使えば僕の訓練にもなるし」
「そうですね」
その後、午後のおやつを食べてから二人で庭に出ると、蒸し暑くなっていた。
午後から急激に気温が上昇したようだ。
「今日は暑いね」
「頭がクラクラします」
僕は、慌てて土魔法で屋根を作った。
そして、風魔法でそよ風を吹かせる。
「あ、涼しくなってきました。お兄様、ありがとうございます」
「どういたしまして。さて、もう時間もあまりないし、残りの時間はプールで遊ぼうか」
「賛成です!」
リゼが目をキラキラと輝かせて、元気よく答えた。
「じゃあ、お互い水着に着替えてから、また集合しよう」
「はい!」
僕とリゼは、それぞれ自分の部屋に戻って、水着に着替えた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
先に着替えを済ませて、僕が旧館の庭で待っていると、水着に着替えたリゼが姿を現す。
「お待たせしました、お兄様!」
「いや、僕も今来たとこだから問題ないよ」
「初めて着るタイプだったので、着替えに戸惑ってしまって……」
ん? 前回と同じワンピースじゃないようだ……。
ぐはっ! 何この可愛い水着!
水色ストライプのセパレートタイプで、上は丈の短いタンクトップのような形をしており、リゼのオヘソがちらりと見える。
下はミニスカートのようになっていて、風にヒラヒラと揺れていた。
スカートの中が見えそうになっていて心配だが、よくよく考えてみれば、水着だから見えてもいいのか。
この水着を作った人は天才だな! 皇帝陛下である父上から、勲章を授与されるべきだと思う。
「えっと、お兄様?」
「あああ、ごめんごめん。あまりにもリゼの水着姿が可愛いものだから、見とれてしまったよ」
「本当ですか! 頑張って選んでよかったです」
リゼが微笑みながら喜んでいる。
なにこの可愛い妹!
この世界にアイドルグループがあったなら、センターはリゼの指定席になるだろう。
「さて今回は、どんなプールを作ろうかな……」
「また新しいプールですか? 楽しみです!」
リゼが期待に満ちた表情で、僕を見ている。
これは手が抜けないな。リゼが、あっと驚くものを作りたい。
前回は流れるプールだったので、今回はウォータースライダーでいこうかな。
庭の外壁付近に、土魔法でいつもより高い壁を作って、外から中が見えないようにした。
「リゼ、今日はウォータースライダーを作るよ」
「スライダー?」
「うん、簡単に言えば水の流れる大きな滑り台かな」
「大きな滑り台、なんか楽しそうですね!」
「じゃあ、いくよー」
僕は前世のプールで体験した、直線型のウォータースライダーを想像しながら土魔法を使った。
高さは壁より低くしないといけないので、学校の4階建て校舎くらいかな。
一直線に滑り落ちるタイプで、後半部分から傾斜を緩くして、最後の方は地面に平行に近くなるくらいに調整した。
そして、滑り落ちる場所をプールにして、リゼの腰より少し低いくらいの水位まで水をはる。
最後に水魔法で、ウォータースライダーに水流を作り、土魔法で階段を設置して完成だ。
「できた!」
「すごい高さですね。旧館の倍くらいでしょうか」
リゼがウォータースライダーを見上げて驚いている。
「あの一番高い所から、一気に下まで滑るよ!」
「大丈夫でしょうか? ちょっと怖い気もします」
「うーん、じゃあ一緒に滑ろうか?」
「はい! お兄様と一緒なら安心です」
リゼがほっと胸をなでおろしているようだ。
「よし、上まで登ってみようか」
「はい」
僕はリゼの手を取り階段を登り始めたが、かなり足にくる。
これだけでも立派な訓練になりそうだ。
なんとか二人して、息を切らせながら頂上まで登りきった。
「ハアハア、リゼ、自分にヒールをかけた後、僕にもヒールをかけてくれるかな」
「ハアハア、わかりましたお兄様」
リゼのヒールでお互い元気になり、いよいよウォータースライダーに挑戦だ。
リゼを前に座らせて、僕が後ろから支えるとリゼから注文が入った。
「思っていたより高くて怖いです。お兄様もっと強く抱きしめてください」
「これでいいかな?」
僕は座ったまま、後ろからリゼをギュッと抱きしめた。
女の子の体って、こんなに柔らかいのか……。
いつも寝るときに、リゼが僕に抱きついてくるけど、抱きつかれるのと抱きつくのは感触が違うようだ。
「ありがとうございます。準備完了です、お兄様」
「じゃあ、いくよー!」
僕が体重を前にかけると、一気に滑り落ち始めた。
リゼは着水するまで一言も声を発しなかったので、怖かったのかもしれない。
「リゼ、平気かい?」
「ふー、少し怖かったけど、次は大丈夫かもしれません」
そんな頼もしいことを言ったリゼは、次から普通に楽しそうにしていた。
そして夕食までひたすら、ウォータースライダーという名の階段を昇る訓練と、ご褒美の滑り台を二人で堪能する。
こんな感じで僕とリゼは、魔術書を読んで魔法を発動させたり、体を動かして武力を上げたりと、日々能力上げに励んだ。
これにて幼少期編が終了となります。
クリストハルトが不遇なリゼットを救済し、お互いに信頼関係が築けるまでの様子を、じっくりまったりとお届けしてまいりました。
第17話からは第3章となり、5年間の訓練期間を経て成長した二人をお届けします。
そして物語もいよいよ動き始め、魅力的な新ヒロインも続々登場予定です。




