第115話 ボクっ娘
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光魔法Sのエクストラヒールを使って孤児院の院長を治療した僕は、バスラー隊長に聖女だと思われ『ボクっ娘』と認識された。
リゼとクラウ以外の人たちに弟キャラ扱いされることが多く、男らしくありたいと日々奮闘してきた自分が、兄キャラに昇格するどころかボクっ娘キャラに降格したのだ。
ボクっ娘……自分のことをボクと呼称する女の子……もはや自分は男にすら見えないのだろうか……
僕は顔をうずめていたバスラー隊長の柔らかなFカップに別れを告げて距離を取ると、そのまま膝から崩れ落ちた。
「あああ、お兄様!」
「しっかりするんだ旦那様、傷は浅いぞ!」
リゼとクラウが心配して声を掛けてくれる。
「どんな魔物にも勇敢に立ち向かい討伐してきたクリスっちを、言葉だけで撃沈させるなんて、ダークエルフは恐るべき種族っすね」
「カルラの言うとおりなのだわ。クリス君、元気を出して。あなたは私たちのリーダーで、とても頼もしい男性なのだわ」
いつも僕を弟のように見ていたエルが励ましてくれている。
「エル……本当に?」
「ええ、クリス君は私たちインフィニティの立派なリーダーで、正真正銘の男なのだわ」
エルが美少女スマイルで、僕を見つめて微笑んでいる。
ついにエルが僕を弟ではなく、正真正銘の男と認めてくれた。
「ふおおおお! 元気出てきたかも」
エルの言葉に自信を取り戻した僕は、勢いよく立ち上がり復活した。
「ん? 結局クリスの性別はどっちなんだ?」
困惑するようにバスラー隊長が、小首を傾げて僕を見ている。
「いやいや、今のやり取り見てれば分かるよね!? 僕は、どこからどう見ても男だよ!」
「そうなのか? てっきりクリスの名前は、クリスティーナというボクっ娘聖女なのかと」
「誰がクリスティーナだよ! 僕の名前はクリストハルトだ!」
「クリストハルト……たしかに男っぽい名前だな。でも、それだけでは信じられんな」
そう言うとバスラー隊長が僕の股間をジッと見つめている。
「ちょっ、何か良からぬことを考えているだろ!?」
「いや、触って確かめるのが確実だとは思うが、院長を救ってくれた恩人にこれ以上無礼を働くわけにもいかんしな。勝手に女と誤解して済まなかった。そして院長を助けてくれてありがとう、クリストハルト殿」
バスラー隊長がペコリと頭を下げた。
「どういたしまして。まあ、分かってくれたのなら問題ないよ」
「私からもきちんとお礼を言わせて欲しい。クリストハルト殿、本当にありがとうございました」
院長が僕に向かって、丁寧に頭を下げた。
「いえいえ、完治したようで良かったです。頭を上げてください」
院長は下げていた頭を元に戻すと、朗らかに笑みを零した。
「ここで長話もなんですから、中にお入りください。温かい紅茶を用意しますので」
「ありがとうございます」
僕たちは院長の後に続いて孤児院の建物に入った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
院長に案内されたのは事務用の椅子と机が一組、それとローテーブルを囲むように三つのソファーがある質素な部屋だった。
僕は三人掛けのソファーにリゼを真ん中に座らせてから、左側にクラウ右側に僕が座る。
別のソファーにエルとカルラ、バスラー隊長と院長の組み合わせでそれぞれ着席した。
問題ないとは思うが、念のため院長を鑑定しておこうか。
【エクムント・ランセル】
カーム教国 アリッサム孤児院長 人族 61歳 男
知力 71/72
武力 56/58
魅力 90/90
剣術 D/D
槍術 E/E
弓術 E/E
馬術 D/D
水魔法 D/D
話術 C/C
算術 C/C
芸術 B/B
料理 B/B
特筆することは無いけれど、魅力が90と高く減少していないので、信用できる人だと思う。
「おもてなしをしようにも、普通の紅茶くらいしかなくて申し訳ありません」
院長が自ら紅茶を入れて皆に振る舞ってくれる。
「一般的な茶葉でも院長のいれた紅茶は絶品だからな。さあ、飲んでみてくれ」
バスラー隊長が僕たちに紅茶を勧めながらも、彼女が真っ先に飲み始めた。
「ふー、今日の紅茶も美味い!」
つられて僕もカップに入った温かな紅茶を一口飲んでみると、滅茶苦茶美味かった。
茶葉は標準的なものを使っているのであれば、淹れ方が上手いのだろうな。
「お兄様、この紅茶素晴らしいですね」
リゼも大満足のようで、可愛い笑顔全開である。
周囲を確認してみると、エルもクラウもカルラも皆が紅茶を堪能して頬が緩んでいた。
「クリストハルト殿、先ほどは本当に助かりました。あのまま病院に入院していたら、子供たちの世話ができなくなりますから」
「そうだぞ院長、もう年なのだから屋根の修理は私に任せてくれ」
バスラー隊長が苦笑しながら院長を見ている。
「クリストハルト殿、エクストラヒールのお礼をしたいのですが、ここは孤児院なもので……」
「いえいえ、院長お気になさらず。もう美味しい紅茶を頂きましたから」
「クリス、私に何かできることはないだろうか? エクストラヒールに見合うものがあれば良いのだが」
「バスラー隊長には、町で助けてもらいました。お互い様ですよ」
「いや、ぜんぜんつり合わない。これでは私が納得できないのだ」
バスラー隊長が真剣な眼差しで僕を見つめている。
うーん、何かお願いすることがあるだろうか……あっ、バスラー隊長は闇魔法がSだったな。
「では、僕に闇魔法を教えてください」
「それは構わないが、お前闇魔法の適性があるのか?」
「はい、よろしくお願いします」
「うむ、承知した。しかし光魔法使いが闇魔法も使えるなんて、聞いたことがないぞ。ますますクリスに興味がわいてきたな」
そう言うとバスラー隊長の視線が、僕の股間を捉えていることに気づいた。
「ちょっ、どこ見てるんですか!?」
「あはは、スマンスマン。一度気になると、どうしてもな」
僕はジト目でバスラー隊長を見ながら、残りの紅茶を口にした。
「そうだクリス、私と一緒に風呂に入ろう」
「ブホッ!」
僕は思わず紅茶を噴き出してしまった。
「名案だろ? 私はクリスの性別がハッキリしてスッキリ。クリスは美少女ダークエルフの裸が見れて幸せ。まさにウィンウィン」
バスラー隊長がニシシって微笑みながら僕を見ている。
たしかにダークエルフの裸には興味がある……人族と同じなのかどうか。
しかも美少女である。
「あー、今私の裸を想像しただろ? クリスのエッチ」
「し、してないよ!」
ああ、小悪魔が一人増えてしまったようだ。
僕は、からかわれてオモチャにされる未来が簡単に想像できてしまい、不安になるのだった。




