第114話 イルムヒルデ・バスラー
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僕たちはカーム教国首都アベリアの町で四人組の男たちに絡まれたが、通りかかったダークエルフの美少女に助けられた。
「誰が鬼だよ、失礼な奴らだ。おい、大丈夫だったか? 可愛い獣人族は、狙われやすいから気をつけないとな」
僕たちを助けてくれた鬼バスラーさんが、凛とした顔つきでこちらを見ている。
彼女は茶眼の黒髪ストレートロングで褐色の肌、耳が真横にピンと伸びており、胸はクラウとカルラの間くらいなので推定Fカップ、身長165センチメートルくらいの奇麗系美少女である。
鬼と呼ばれていたのが気になるので、僕は鬼バスラーさんを鑑定してみた。
【イルムヒルデ・バスラー】
カーム教国 第一特殊部隊長 ダークエルフ 75歳 女
知力 58/59
武力 98/98
魅力 90/90
剣術 A/A
槍術 A/A
弓術 A/A
馬術 A/A
闇魔法 S/S
話術 C/C
算術 C/C
芸術 D/C
料理 F/F
見た目は15歳のエルと同じくらいの若さなのに75歳!
あー、エルフって500歳以上生きる設定が多いから、人族に換算すると15歳くらいなのかも。
魅力が90と高く減っていないので、バスラーさんは信用できると思う。
武力98で剣術A……強いな、それに闇魔法Sだ!
第一特殊部隊とは、どんなところなのだろうか?
「えーと、助けてくれてありがとう。この動物耳はカチューシャなんだ」
僕は隣に立っていたリゼのネコ耳カチューシャを取り外して見せた。
エル、クラウ、カルラも自分で動物耳カチューシャを取り外す。
「ふおっ! 耳がとれた……お前たちは人族だったのか」
鬼バスラーさんが、大きく目を見開いて驚いている。
「紛らわしくて、すみません。すれ違った獣人族のネコ耳とウサギ耳が可愛かったので、マネしてみたくなって」
「そうだったのか。それにしても良くできた動物耳だな。どこで買った?」
「いえ、これは僕が魔法で作りました」
「魔法で!? そうか、少年は土魔法使いだったのか。それにしても見事な腕前だ、どこから見ても本物の動物耳だぞ」
バスラーさんがリゼの付けていたネコ耳カチューシャを見ながら、自分のアゴに手を当てて唸っている。
「ところで、お前たち随分と薄着だが、南方……グロリア公国から来たのか?」
「いえ、僕たちはファルケ帝国から来ました」
「はあ!? 帝国って、そんな遠くから……お前たち、一体何者なんだ?」
「えーと、半年前に冒険者登録をしまして……」
「なんだ駆け出し冒険者だったのか。いやまてよ、ここまで来るのに盗賊や魔物に襲われたはず。もしかして、お前たち……」
うーん、このまま尋問され続けると、皇族であることがバレそうだ。何か適当に話題を変えないと……
「そうだ。僕たち足りない物資を補充したいのですが、お店を教えてもらえないでしょうか」
「ふむ、そう言えば私も買い物の途中だった。ついてきな、案内してやるから」
僕たちはバスラーさんにアベリアの町を案内してもらい、不足ぎみだった小麦粉や牛乳などの食品を中心に買い足した。
移動の途中でお互いに自己紹介を済ませたところ、第一特殊部隊の名称がバスラーさんの口から飛び出したので、どんな部隊なのか質問してみた。
簡単に言うと第一特殊部隊とは、その名のとおり特殊任務を遂行する部隊のようだ。
戦時中は敵国の魔術師部隊を無力化するのが仕事の中心らしい。
「いいかクリス、魔法には相性がある。闇魔法は火、水、風、土の四大魔法に対して優位性があり、同レベルの闇魔法と四大魔法がぶつかると闇魔法のみが残り、相殺分を差し引いた威力で発動する」
「つまり僕が土魔法Sを発動させ、そこにバスラーさんが闇魔法Sをぶつけると、土魔法Sはキャンセルされて少し威力の落ちた闇魔法のみが発動する。ということですよね?」
「ああ、そのとおりだ」
まあ、僕の魔法は複合魔法なので、もしかすると闇魔法に負けない可能性もある。できることならば、是非とも実験してみたいものだ。
お互いに魔術を極める者同士とても話が弾んで、買い物が終了したあと、午後のティータイムに誘われた。
女性陣に確認を取ると皆が笑顔で頷いてくれたので、バスラーさんについて行くことになった。
町にある喫茶店等に行くと予想していたのだが、着いた先は孤児院である。
なにやらバスラーさんには特殊な事情があり、ここで暮らしているそうだ。
入口の門から敷地内に入ると、リゼと同年代くらいの少女が、バスラーさんのところまで走ってきた。
「イルム姉ちゃん、大変なの。院長先生が屋根から落ちて動けないみたいで」
「院長が!?」
バスラーさんが慌てて少女の後について行く。
僕たちも彼女たちの後を追いかけた。
現場に着くと還暦を迎えたくらいの男性が、地面に横たわって呻いている。
「院長! 大丈夫か?」
「あいたたた……。屋根の修理をしていたら、うっかり落ちてしまって」
「どこをケガした? 見せてみろ」
「バスラー隊長、左腕と左足それと腰が痛い。特に左腕と左足は激痛で……」
「これは……腕と足は骨折している可能性が高いな。腰は打撲かもしれないが、私に使えるのは闇魔法だけだ。闇魔法ではケガを治すことができない。まいったな……」
リゼが僕の方を見つめて訴えている。私が治すと。
でもリゼが大聖女であることは、当分の間秘密にしないといけない。
僕はリゼに向けて首を横に振った。そして僕の右手で自分自身を指さして伝える。僕が治すと。
するとリゼは僕の意図を理解したのか、微笑んで頷いてくれた。
「バスラー隊長、僕が治します」
「クリスが? どうやって? 光魔法が使える聖女を連れてこないと無理な話だぞ」
「僕は光魔法が使えますので、任せてください」
「そうか、とりあえずヒールをかけてくれるだけでも助かる。後は私が病院まで運ぶから」
バスラー隊長が真剣な眼差しで僕を見ている。
帝国に帰国したときに、僕の光魔法をAからSにしておいて良かった。
今の僕ならエクストラヒールが使える。
「では院長先生、今から光魔法を使いますね」
「ええ、よろしくお願いします」
慣れていない光魔法を使うので、僕は目を閉じて気持ちを集中する。
そして、元気に立ち上がる院長先生を心の中で想像すると、目を開けて彼に向け右手を開き前に突き出した。
「いきます、エクストラヒール」
僕の魔法は無詠唱なので、使用した魔法名だけを周囲に伝えるために発声した。
すると僕の掌から眩い光が飛び出して、院長先生の体を白く優しい光が覆っている。
しばらくすると完治したのか、光が消えた。
「院長先生、体の具合はいかがですか?」
「ええ、お陰様で痛みは無くなりました。これなら自分で立てそうです」
バスラー隊長に支えられながら、院長先生は自分の足でしっかりと立ち上がると、笑みを零した。
心配そうに見つめていた孤児院の子供たちから歓声が上がり、一斉に院長先生に抱きついている。
どうやら治療は、大成功だったようだ。
僕がホッと胸をなでおろしていると、突然バスラー隊長に抱きしめられた。
「クリス! エクストラヒールが使えるなんて、凄いじゃないか。お前の光魔法はSだったのだな。見た目からてっきり少年だと思っていたが、まさか優秀な聖女だったとは驚いたぞ。そうか、これがボクっ娘というやつなのだな」
そう言うとバスラー隊長は、さらに僕をギュッと抱きしめて、僕は彼女の柔らかなFカップに顔をうずめた。
以前メーベルト劇場で『弟にしたいキャスト第1位』に選ばれて失望した僕は、それからずっと男を磨いて修行を重ねてきたのだ。
最近は身長も伸びて腕力もついてきたので、男らしくなってきたと自負していたのだが、カーム教国で僕は男ですらなく、不名誉にも『ボクっ娘』の称号を授かったのだった。




