第113話 カーム教国首都アベリア
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クレイン独立国のファルコン村郊外にある草原で一泊した僕たちは、現在朝食後に平家のリビングで、温かい紅茶を飲みながら会議中である。
今日はカーム教国の首都アベリアまで移動する予定だ。
「エル、このまま空から国境を越えても大丈夫かな?」
「うーん、以前戦争をしていた国同士だから、平野が広がるこの一帯は警備が厳しいかもしれないのだわ。北上して山越えをしながら国境を越えた方が安全ね」
「わかった、それで行こう」
今日の進路も決まり僕が残りの紅茶を飲んでいると、左隣に座るリゼの視線を感じた。
「リゼ、どうしたの?」
「お兄様、首都アベリアに到着したら服を探したいです。これから更に寒くなると、今の服装では皆が風邪をひいてしまいます」
一週間前に帝都では半袖ワンピースを着ていたリゼが、今日は長袖ワンピースにカーディガンを羽織っている。
エルとカルラも同じような服装だ。クラウでさえも、いつもの短パンではなく長ズボンを着用している。
大陸の北方にある地域で十一月を迎えるとなると、これから気温が低下してどんどん寒くなっていく。
北方の地域での季節は、前世の日本とほぼ同じだ。十月下旬の今は秋である。これから冬を迎えるためにも厚手の服が必要になるだろう。
ちなみに帝都は大陸の最南端にあるため、前世の沖縄みたいな気候で冬でも寒くはない。着る服も季節ごとに用意する必要がなくとても楽だ。
「そうだね、リゼの言うとおりだ。アベリアに着いたら冬服を見て回ろうか。おそらく昼過ぎには到着できる予定だし」
「はい、楽しみにしておきますね。寒いのは大変ですけど、色々な種類の服が着れるのは嬉しいです」
やはり時代や地域が違っても女性は、オシャレをするのが楽しいようだ。
リゼがニッコリと微笑んで僕を見つめている。
うん、僕の妹は今日も超絶可愛い!
僕はリゼが愛おしくてたまらず、頭を優しく撫でた。
すると今度はリゼが満足そうに瞳を閉じて、僕に寄り掛かってくる。
しばらくリゼと肩をくっつけて座っていると、なんだか力が沸いてきた。
充電も完了したようだ。
「よし、そろそろ行こうか」
女性陣を見ると、皆が引き締まった表情で頷いた。
僕たちは平家を出て新風力車に乗ると、クレイン独立国内を一気に北上して、国境沿いにある高い山を探した。
今回も帝都の冒険者ギルドで購入した世界地図が大活躍である。
まとめて全部入手しておいて本当に良かった。
僕たちは二度の休憩を挟み、ひらすら北上を続けている。
「お兄様、あれかもしれませんね。左側に高い山が見えてきました」
「うん、あの山だと思う。エル、地図と景色を照合してみてくれる?」
「了解なのだわ」
僕は新風力車の運転中なので、細かい確認作業をエルに一任した。
「周辺の町や川の位置から見て、この山で間違いないのだわ」
「了解。山越えの途中では、休憩ができないかもしれないから、少し早いけど昼食を取ろうか」
僕が新風力車内のキッチンで作業中のカルラに視線を送ると、気付いた彼女が微笑み返してくれた。
「クリスっち、サンドウィッチでいいっすか? すぐに作れるっすよ」
僕が確認のためリゼを見ると、うんうんと頷いて可愛く笑みを零している。
カルラが作る料理は何でも美味しいので、インフィニティの皆に大人気だ。
「それでお願い。よろしくねカルラ」
「了解っす!」
元気よく返事をしたカルラが調理作業を開始した。
僕も山の麓に広がる草原を見つけたので、新風力車を移動させ着陸させる。
その後、皆で食べたカルラ特製サンドウィッチは極上だった。
高級食材である巨大牛、巨大豚、巨大鶏の新鮮な肉を香ばしく焼いて、フレッシュな生野菜と一緒にパンへ挟み込んでいる。
パンも柔らかなものとパリッとした歯ごたえのあるものが選べて、皆好きな方を遠慮なく手に取っており、あっという間に売り切れた。
勿論一番多く食べたのはリゼだ。
大聖女は自分を守るために魔力を常に消費しており、とてもお腹が空くのである。
この状況にもすっかり慣れたカルラは、いつも気を利かせて一人分多い六人分を用意してくれるのだ。
昼食後、再び新風力車を上昇させた僕は、高山の少し上を飛び続けて山を越えた。
おそらくこの先がカーム教国である。
遠くまで続く森林の遥か先には、複数の町並みが点在している。
しばらく上空を進んで行くと、ひときわ大きな町が見えてきた。
「お兄様、遠くに見えるあの立派な町が首都アベリアでしょうか?」
「たぶんね。とりあえずあの町から確認していこう」
僕は、いつものように町から少し離れた草原に、新風力車を着陸させた。
そして下車すると、皆で歩いて町の検問所を目指す。
検問所に到着して門番に確認すると、間違いなくカーム教国の首都アベリアの町だった。
僕たちは冒険者カードを門番に提示して入場すると、賑わう町中の探索を開始する。
そして、大きな通りに面した服屋で、各々冬服を購入した。
その後店を出て、リゼと手を繋ぎながら周囲を観察していると、驚くべき発見をしたのだ。
僕とリゼは五年間ずっと帝城内に居たので、外の世界を見始めてまだ半年しか経っていない。
なので人族以外は見たことがなかったのだが、今ネコ耳少女とウサ耳少女が歩いていたのだ。
「エル! カーム教国には獣人族が住んでいるの?」
「ええ、獣人族は元々グロリア公国に多くの集落を構え点在していたのだけど、魔力持ちが少なく魔法を使えない者が多かったのだわ。そこを公国の貴族が武力で制圧し、奴隷にするようになったの。男性は労働力として、女性は……。何でもネコ耳とウサギ耳の女性は、特に人気があるらしくて、美人だと凄い高値で取引されているらしいのだわ。公国の貴族は変態が多いって噂になっているのよ。そんなことがあって獣人族は、公国から逃げてカーム教国に住むようになったのだわ。この国は奴隷を禁止しているし、人種差別も禁止なのよ。だから色々な種族が集まって構成されていて、『人種のサラダボウル』なんて呼ばれているのだわ」
さすがエル、博識だ。
他にはどんな種族がいるのだろうか?
ファンタジー要素が満載で、なんかワクワクしてきた。
しかし公国の貴族どもは、けしからん。たしか帝国でも奴隷は禁止されていたはず。
でも、ネコ耳とウサ耳が可愛いのは認めざるを得ないのだけど。
そうだ! 動物耳のカチューシャを作ってみたら、どうだろうか。
僕は複合魔法でサクッと四種類の動物耳のカチューシャを作成した。
「さすがエル、詳しく知っているね。でも、動物耳って確かに可愛いと思う。そこで、ジャーン! 複合魔法で動物耳のカチューシャを作ってみました」
「わあ、可愛いかも。お兄様、私に似合いそうなものを付けてくれますか?」
リゼが興味津津に瞳を輝かせている。
「うーん、リゼにはネコ耳が似合いそう」
僕がリゼの頭にネコ耳カチューシャを付けてみると、ヤバイくらいに可愛かった。
「お兄様、どうでしょうか?」
「う、うん。滅茶苦茶可愛い」
「やったー。えへへー、お兄様に褒められました」
「ねえ、リゼ。右手をネコの手のように曲げてニャンって言ってみて」
「えーと、こうでしょうか? ニャン!」
グハッ! なんという破壊的な可愛らしさ。
公国の貴族たちが狂うのも理解できる。
だが、奴隷はダメだ。さすがにやりすぎだと思う。
「あ、ありがとうリゼ。とても可愛かったよ」
僕に褒められて、リゼが満足そうに微笑んでいる。
「クリスっち、次は自分にも付けて欲しいっす!」
「えーと、カルラにはイヌ耳が似合いそう」
僕がカルラの頭にイヌ耳カチューシャ付けてみると、普通に可愛かった。
さっきのリゼが強烈すぎたのだ。先にカルラから付けていれば問題なかったのかもしれない。
「どうっすか?」
「うん、とても可愛いよ」
カルラも満足そうに笑い、リゼと見せ合いっこをしている。
「じゃあ、次はエルね」
「ええ!? 私も付けるの?」
「全員分作ったからね」
「仕方ないのだわ。はい、どうぞ」
エルが諦めたように僕の前に立った。
「エルには絶対これが似合うはず。ウサ耳!」
僕がエルの頭にウサ耳カチューシャを付けてみると、ヤバイくらいにエロかった……。
うーん、Hカップとウサ耳のコラボはヤバイな。
僕は、とんでもないモノを生み出してしまったようだ。
「クリス君、どうかな、似合っているのかしら?」
「う、うん。とってもスゴイと思う」
「ちょっ、リゼとカルラには可愛いって言ってたのに、スゴイってどういうことかしら?」
「えーと、凄く奇麗ってことだよ」
「そうなの? うーん、なんだか納得いかないのだけど」
エルに納得してもらうには時間が掛かりそうだったので、次に行こうと思う。
「はい、最後はクラウね」
「やっとアタシの出番か。旦那様からのプレゼントなら何でも嬉しいぞ」
「えーと、もうネタ切れで難しい選択だったけど、クラウに似合いそうなのはトラ耳かな」
僕がクラウの頭にトラ耳カチューシャを付けてみると、普通に似合っている。
可愛いとかエロいとかではなく、カッコイイって感じだろうか。
「旦那様、どうだろうか。似合っているかな?」
「うん、とてもカッコイイよ」
「それは褒めているのか?」
クラウが納得していないようだ。
確かに女性にカッコイイは、褒め言葉ではないかも。
「うーん、恰好良くて可愛い……カッコ可愛いでどうかな?」
「お、なんか新しい言葉だな。カッコ可愛い……気に入ったかも。ありがとう旦那様」
クラウから笑みが零れている。
どうやら納得してくれたみたいだ。
僕がホッとしていると、冒険者風のチャラそうな四人組の男が近づいてきた。
「やあ、お嬢さんたち。俺たちと一緒に遊ぼうぜ」
そう言うと男の一人が、カルラの腕を掴んで離さない。
「触らないでほしいっす!」
「いいじゃねえか、楽しいことしようぜ」
男がなかなかカルラの腕を離さないので、怒ったクラウが一歩前に出た。
まずい、このままだと大騒ぎになるかも。
僕の魔法で対処しても良いけど、手加減が難しくて相手の男が最悪死ぬ可能性もある。
かといって放っておけばクラウが暴れだして、結果的に男が生き残れるかどうか。
「おい、オマエら何をやっている。その手を離せ」
僕が困っていると後ろから怒声が聞こえた。
四人組の男たちは、僕の後ろに居る人を見て顔色が青ざめているようだ。
「ヒイイー! 鬼バスラー」
そう言い残すと、一目散に全員が逃げていった。
どうやら僕の後ろには、鬼が立っているらしい。
まずは助けてもらったお礼を言おうと僕が振り返ると、そこにはダークエルフの美少女が立っていた。




