第109話 帝国の行末
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僕たちはリゼットが大聖女に至るまでの旅を、皇帝陛下に身振り手振りを交えながら、順を追って説明した。
帝国内の魔物討伐では、巨大蜂と呪いを受けた巨大蛙の話が、大きな盛り上がりをみせる。
「クリストハルトよ、魔物討伐以外の話は何かあるのだろうか?」
「はい、父上。ゴルトベルク侯爵領の町シアターで、メーベルト劇場の公演に1か月参加しました」
「ほう、劇場の裏方を手伝って社会勉強とは、おもしろい」
「いえ、舞台に上がりましたよ。主役のリゼットはじめ、インフィニティの五人が主演でした」
「はあ!?」
父上が驚愕している。
「演劇の台本は僕が書きました」
「う、うむ。天才のお前なら驚くことでもないのだろうな。わしは、もう何を聞いても驚かんぞ」
「父上、主役を務めたリゼットの演技は素晴らしかったですよ」
「ほう、是非わしも見てみたいものだな」
リゼが照れくさそうに笑みを零した。
「その後はオルレアン伯爵領に立ち寄り、ロジーネ伯爵夫人と次男のモーリッツ殿に会いました」
「おお、ロジーネは元気にしておったか?」
「はい、父上。気品溢れる美しい方でした」
剣聖様が奥さんを褒められて、嬉しそうに微笑んでいる。
「その次にリートベルク侯爵領へ立ち寄り、長男のベルノルト殿に会いました」
「ふむ、あれの顔は父親にそっくりであったろう?」
「はい、師匠そっくりの超イケメンでした」
「であろうな。リートベルク侯爵家は、帝国一の美男美女揃いと言われておるのだ」
あー、納得できる。奥さんも長女のエルも美人で、おまけにHカップ親子である。
「たしかに、僕もそう思います」
「で、その後はどうしたのだ」
「はい、北上して帝国を離れ、デス砂漠へオアシスを探しに行きました」
「ブホッ!」
驚いた父上が、飲んでいたオレンジジュースを噴き出した。
「ちょっと待て、デス砂漠は大変厳しい環境で、魔物もウヨウヨいる所だぞ。駆け出しの冒険者パーティーが行く所ではないのだがな」
「問題ありませんでしたよ。収納ボックスが大活躍で、食料の心配もいりませんでしたし。リゼットの光魔法、エルネスタ嬢の知略、クラウディア嬢の剣術、カルラの料理、そして僕の複合魔法、Sランク冒険者パーティー『インフィニティ』なら大丈夫です」
「そうか……ん? 今Sランクとか言ってなかったか?」
「はい、巨大サソリ201頭のスタンピードがSSランク依頼だそうで、討伐後にAランクからSランクへ昇格しました」
「はあ!? わしらのパーティーでさえ二年間でAランク止まりだったのに、この短期間でSランクになるとは……」
父上が驚嘆している。
「陛下、魔法の天才クリストハルト殿下と大聖女リゼット殿下がおられれば、帝国は盤石ですな」
師匠が父上にイケメンスマイルで微笑んでいる。
「ああ、今後クリストハルトが皇太子になれば帝国は安泰であろうな。バルバラが絶対に認めないだろうが……」
「たしかに。皇后様は、強く反発するでしょうな」
父上の言葉に師匠が答えた。
「反発だけでは済まぬじゃろうな。最悪、帝国が二つに割れて内乱になるかもしれぬ」
「ふむ、剣聖殿の言う通りかもしれませんな。今後は、あらゆる可能性を考慮しつつ、きたるべき日のために準備せねば」
剣聖様の言葉に師匠が難しい顔をして答えた。
「クリストハルトよ、お前は皇太子になる覚悟を持っておるか?」
父上の問いかけに、僕は即答できなかった。
なぜなら僕は、皇帝になりたくて転生前に第三皇子を選択した訳ではないからだ。
女神パラスにもらったチート能力『可能性は無限大』を使いこなすため、幼少期に能力上げに集中できる環境が欲しかった。大人になる前に死ぬことの無いよう安全面を考慮して、皇族であり自由もきく第三皇子を選択したのだ。
そして大聖女になったリゼを守るためにも、僕は常にリゼと一緒に居るべきだと思う。
皇太子になり、いずれ皇帝になると自由は奪われ、リゼを危険にさらしてしまうかもしれない……。
だけどレオン兄様かエーベ兄様が皇太子になるのは反対だ。
あの二人は貴族学校でも素行が悪く、たくさんの女性を泣かせ、傲慢に振舞っていたと聞いている。僕も幼少期に、たくさん酷い仕打ちを受けた。
兄様たちのどちらかが皇帝になると、帝国の民が悪政に苦しむ姿しか想像できない。
であれば、僕が皇太子になる以外ないのだが、そうなったら常にリゼと一緒に居ることが難しくなるだろう……。
いや、何を弱気になっているのだ!
僕は絶対にリゼを守るし、帝国の民にも安心して暮らせるようにしてあげたい。
ならば両方を守ればいいのだ。今の僕には、インフィニティの仲間がいる。それに皇帝陛下である父上、魔術師団長である師匠、近衛騎士団長である剣聖様も味方なのだ。
「……はい。皇太子になる覚悟は持っていますが、条件が二つあります」
「ほう、申してみよ」
父上が真剣な眼差しを僕に向けている。
「今後も冒険者パーティー『インフィニティ』として活動することを、お許しください」
「うむ、わかった。それともう一つは何だ?」
「はい、僕とリゼットが、ずっと一緒に居ることをお許しください」
「ん? それは、どういうことなのだ?」
「リゼットが自分の意思で僕から離れることを望むまでは、僕とリゼットを決して引き離して欲しくないのです。僕はリゼットを守りたい。大聖女を不慮の事故で失うことの無いようにしなければなりません」
「お兄様、ありがとうございます。……私もずっと一緒に居たいです」
隣に座っていたリゼが、僕にギュッと抱きついてくる。
「わかった、約束しよう。わしも二人は一緒に居る方が良いと思っておる。魔術訓練場事故の救助活動でも感じたことだが、二人の内どちらかが欠けたら、死者を出さずに済んだあの奇跡は起こらなかったはずだ。これからも二人で協力して帝国を守って欲しい」
父上が僕とリゼに優しく微笑んだ。




