第108話 再会
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クラウに剣聖様へ伝言と手紙を託した翌日の昼過ぎ、予想より遥かに早く皇帝陛下たちが、検問所から500メートルくらい離れた森の近くまで来てくれた。
エルの実家であるリートベルク侯爵家の馬車が一台止まり、中からクラウが出てきて、こちらへ走ってくる。
「クラウ、お帰り」
「旦那様! 一日顔が見れないだけで凄く寂しかったぞ」
瞳を潤ませてクラウが僕に抱きついてきた。
「僕もクラウが帰ってきてくれて嬉しいよ」
「本当に!? 旦那様もアタシが居なくて、寂しい思いをしていたのか!」
「あー、うん。とても辛かったよ」
クラウの代わりに、エルの抱き枕にされていたからね。
「すまない旦那様、辛い思いをさせて。でも、今日からまた一緒だ!」
クラウが弾けるような笑顔で僕を見つめている。
うーん、日本語は難しい言語だな。話が噛み合っていないが、まあいいか。
僕は一旦クラウと離れて、姿勢を正した。
「父上、城外までご足労おかけしてしまい、申し訳ありません」
僕は、馬車から降りてきた皇帝陛下である父上に、ペコリと頭を下げた。
「いや問題ない。それよりも皆が無事に帰ってきてくれて、安心したぞ」
父上がイケメンスマイルで僕たちを見ている。
「父上、誰かに見られると大変ですので、とりあえず家の中へお入りください」
「うむ、クリストハルトの言う通りだ。皆、速やかに移動するのだ」
「「はっ!」」
父上の言葉に師匠と剣聖様が答えた。
ん? カルラの父である宮廷料理長の姿がないようだが……それに御者が居ないということは、師匠か剣聖様が運転してきたらしい。
僕は、リゼに結界と認識阻害をお願いして、その後全員が平家のリビングへ移動した。
リビングのソファーに全員が座ると、カルラが冷たいフルーツジュースを人数分持ってきて提供する。
「陛下、ようこそお越しくださいました。こちらは、リゼット殿下が光魔法で育てたみかんを使用したジュースになります」
久しぶりに見たな、カルラが猫をかぶっている。
「ほう、それは楽しみであるな」
そう言うと父上は、毒見もさせずにグラスを手に取ると、オレンジジュースを一口飲んで味見をした。
「陛下! 味見をするにしても、私が飲んだ後にしてください」
師匠が、毒見をさせなかった父上を叱っている。
「アレクシス、問題ない。この中に毒を盛るヤツなどおらんだろう」
「それはそうですが」
ああ、父上は僕たちを信用してくれているのだな。それがとても嬉しく感じた。
「それに大聖女のリゼットが居るのだ、万が一毒に当たっても平気だと思うが」
「確かに……ですが、リゼット殿下が居ないときは、用心してください」
「分かった分かった。それよりアレクシスも飲んでみよ。今までこんなに美味しいオレンジジュースは、飲んだことがない」
父上がグラスを片手に笑みを零している。
「おお! 確かにこれは凄く美味しいですな。それに、何だか力が沸いてくる気がしますね。剣聖殿の感想はどうです?」
師匠も気に入ってくれたようだ。
「うむ、滅茶苦茶うまいな! そして元気になってきた気がするぞ」
剣聖様も納得の味らしい。
それと、以前僕も感じたことなのだが、リゼの光魔法で育てたみかんのジュースを飲むと、やる気が湧いてくるのだ。
師匠と剣聖様も同じ意見のようだし、これは間違いないのでは?
「師匠、僕も同じことを考えていたのですが、大聖女が育てた果物を食べると、体力や気力が回復するのではないでしょうか?」
「ふむ、クリストハルト殿下の仮説に私も賛同いたします。このオレンジジュースは、まるでポーションのようです」
「であれば今後リゼットが、大聖女の光魔法を使用した場合、プラスアルファの効果があるか検証が必要ですね」
「はい、大変興味深い事案ですね」
僕は今後リゼと一緒に、大聖女の光魔法について検証をしていこうと心に決めた。
そして、父上がオレンジジュースの追加をカルラに注文すると、僕をじっと見つめる。
「クリストハルトよ、リゼットの光魔法がSSになっているのを確認させて欲しい」
「はい、父上。それでは皆さん、僕の手に触れてください」
僕は左隣に座るリゼの右手を自分の左手で握ると、皆が触りやすいように自分の右手をあげた。
すると、皆が僕の周りに集まり右手に触れていく。
「それでは、リゼットのステータスを表示します」
【リゼット・ブレイズ・ファルケ】
ファルケ帝国 第1皇女(大聖女) 11歳 女
知力 91/95
武力 29/29
魅力 100/100
剣術 G/F
槍術 G/F
弓術 G/F
馬術 G/F
光魔法 SS/SS
話術 S/S
算術 A/S
芸術 S/S
料理 D/C
「おお! 確かに光魔法がSSになっておる。それと第1皇女の肩書の後ろに、大聖女とあるではないか!」
父上がリゼの大聖女を確認し、歓喜の声を上げた。
「リゼット、おめでとう。そして、良く頑張ったな」
父上がリゼの頭を撫でると、感極まったリゼが父上の胸に飛び込んだ。
優しく父上がリゼを抱きしめると、皆から拍手が起こり各々祝福の言葉をリゼにかけている。
しばらくしてから抱擁を解くと、父上は僕を見て微笑んだ。
「では、リゼットが大聖女に至るまで、どんな旅をしたのか聞かせて欲しい」
父上の希望に応えるため僕たちインフィニティは、全員で身振り手振りを交えながら順を追って旅の説明をした。
まずは、冒険者ギルドで登録してCランク冒険者パーティーからのスタートになり、帝都の検問所で僕とリゼが捕まりそうになって、エルの名演技できりぬけたこと。
この場所で1か月合宿をしてから、巨大牛の討伐依頼を受けたことを話すと、和やかだった父上の顔色が変わる。
「ちょっと待て、まさか最初の依頼に魔物討伐を選んだのか?」
「はい。何か問題が?」
父上の質問に僕は平然と答えた。
「いやいや、おかしいだろう。わしも貴族学校を卒業してから修行を兼ねて、冒険者パーティーを組んだことがあるが、最初は薬草採取から始めたぞ」
「懐かしい……陛下と私、それから剣聖殿、後に剣聖殿の妻になるロジーネ嬢の4人でパーティーを組みましたね」
「懐かしいのう。あの頃は、いろいろ無茶をしたが楽しかった」
僕の答えに父上、師匠、剣聖様の順に意見を述べた。
そして巨大豚、巨大鶏、巨大蜂の討伐について説明すると、巨大蜂の戦闘で話は一番の盛り上がりをみせる。
あれは全滅になりそうで本当に大変だった。
その後、巨大蛙討伐の話になると剣聖様が大きく反応する。
「殿下たちも巨大蛙と戦ったのですか! あれは気をつけないと大惨事になりますぞ。昔ワシが巨大蛙を袈裟切りにして倒したのじゃが、死ぬ間際に爆散して超クサイのを浴びてしまい、一週間臭いが取れなかったのじゃよ」
おお、剣聖様も昔巨大蛙の呪いを受けたようだ。
「あのとき私がちょっと待てと言ったのに、剣聖殿が一人で突っ込んでいき大惨事になりましたね」
師匠が遠い目をして、昔を思い出しているようだ。
というかクラウのときと状況までそっくりなのだけど!
「父上! アタシも巨大蛙を袈裟切りにして討伐し、爆散されて超クサイ思いをしたのだ!」
クラウが苦い思い出を、父である剣聖様に報告した。
「おお、クラウディアも同じ体験をしておったか!」
「はい、父上!」
「「あっはっはっはっ!」」
最後は親子で笑いあっていた。
ああ、やっぱりこの二人は親子だなと皆が思ったようで、剣聖様とクラウ以外の全員が苦笑したのだった。




