第105話 遺志を継ぐ者
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僕たちはシュトラウス夫妻に、大聖女リーゼロッテが残した、光魔法の魔術書を写すことについて許可を得た。
しばらくすると、魔術書を取りに行ったテオフィルさんが、リビングに戻ってくる。
「こちらが大聖女リーゼロッテ様が残した、光魔法の魔術書になります」
テーブルの上に置かれた1冊の魔術書は、全体が薄茶色に変色しており、数百年の歴史を感じる。
「クリス殿、屋敷からの持ち出しはできないが……」
「大丈夫です、1冊なら30分もあれば写せますので」
「はあ!? 一体どうやって? 普通なら数日はかかると思うが」
テオフィルさんが信じられないといった様子で、大きな声を出した。
「魔法を使います。勿論、原本には何の影響もありませんので、心配いりません」
「魔法で?」
「はい、説明するより見てもらった方が早いので、そのまま座ってご覧になっていてください」
僕は、収納ボックスから紙と黒インクと紐を取り出して、リゼに魔術書のページを開いて押さえてもらった。
そして、コピー魔法で魔術書の内容をそっくりそのまま写していく。
黒インクが宙を舞い、紙に付着すると瞬時に乾いて定着する。
これをひたすら繰り返して、最後に紐が動き出し紙を縫い付けると、1冊の複製本が完成した。
「おお! 本当に30分で写し終わるとは」
テオフィルさんが驚嘆している。
「妹が未習得の光魔法Sを確認したいので、ここで読んでも良いでしょうか?」
「ああ、構わないよ」
テオフィルさんが微笑みながら了承してくれた。
僕はリゼと椅子を並べて隣に座ると、一緒に複製本の光魔法Sのページを確認していく。
光魔法Sについては、詳細に説明が書かれており、1ページの表裏に1種類の光魔法Sに関する説明や効果そして呪文が書かれていた。
エル、クラウ、カルラの3人は、ソファーに座ってジッと状況を見守ってくれている。
そして、僕とリゼの求めるものが、光魔法S最後のページに載っていた。
「お兄様! これです!」
リゼが歓喜に満ちた表情で叫んだ。
「うん、間違いないね。テオフィルさん、この光魔法Sの攻撃魔法を、一度だけ妹に使わせていただきたいのですが」
「分かりました。では、村の裏手にある岩山へ行きましょう」
僕たちは、屋敷を出て村の門を通り、村の周りを半周ほど移動した。
すると、ゴツゴツした岩だらけの山がある。
「それでは、妹さん……リゼさんと言いましたか、被害が出ないように出来るだけ威力を抑えて、ここの岩を砕いてみてください」
「はい」
テオフィルさんの指示に、リゼが凛とした声で答えた。
「リゼ、もう一度魔術書を確認して」
「はい、お兄様」
僕が光魔法の魔術書を渡すと、リゼは落ち着いて確認し、静かに頷いた。
どうやら問題ないようだ。
僕は、リゼから魔術書を受け取ると、大聖女の杖を渡してから邪魔にならない位置へ移動する。
そして僕、エル、クラウ、カルラ、シュトラウス夫妻の6人が見守る中、リゼが攻撃魔法の準備に入ったようだ。
リゼの周囲に静寂が響く。
遠くに流れる川の音と、鳥のさえずりだけが聞こえてくる。
準備が整ったのか、リゼが大きく深呼吸して前を見据えた。
「いきます! ……天より降り注げ数多の光、轟音と共に爆ぜよ、ライトニング!」
リゼが右足をくの字に曲げながら上げて、右手に持った杖を前方斜め45度に突き出すと、今まで快晴だったはずの空にどんよりとした雲が出現する。そしてゴロゴロと音がすると、上空がキラリと光り瞬時に稲妻が落ちてきた。
その結果、山の中央にある大きな岩が爆音と共に砕け散り、跡形も無く消えたのだ。
凄い威力だ……こんなものを戦争で人に使ったら、多数の死者が出てしまうだろう。
大聖女リーゼロッテが秘匿したのも納得できる。
ただ、魔物討伐には不向きかもしれない。詠唱開始から魔法の発動まで時間が長すぎて、魔物に襲われてしまう。
攻撃魔法の凄まじい威力に、皆が固まって動かない。
リゼもキメポーズのままフリーズしている。
僕はリゼのもとに歩み寄り、後ろからそっと抱きしめた。
「リゼ、お疲れ様」
僕の一言でやっと我に返ったリゼが、振り返ると僕の胸に飛び込んで来た。
「お兄様! 私やりました。これできっと……あ、ステータスを見せてください!」
僕がリゼの手を取りステータスを表示すると、後ろからエル、クラウ、カルラが飛んできて僕の手に触れた。
【リゼット・ブレイズ・ファルケ】
ファルケ帝国 第1皇女(大聖女) 11歳 女
知力 91/95
武力 29/29
魅力 100/100
剣術 G/F
槍術 G/F
弓術 G/F
馬術 G/F
光魔法 SS/SS (SからSSへ上昇)
話術 S/S
算術 A/S
芸術 S/S
料理 D/C
「上がってる! お兄様、SSに上がりました!」
リゼが感極まって、瞳からは大粒の涙が零れ落ちている。
「おめでとう、リゼ。挫けずに最後まで良く頑張ったね」
「リゼ、おめでとうなのだわ。後で沢山甘えて良いからね」
「リゼ、おめでとう。後でアタシも甘えさせてあげる」
「リゼたん、おめでとうっす。第1皇女の次に『大聖女』って書いてあるっすよ!」
僕、エル、クラウ、カルラの順にお祝いの言葉をリゼに送った。
「クリス殿! 妹のリゼさんは、大聖女になったのですか?」
テオフィルさんが慌てて僕のところに走って来た。
うーん、困ったな。ステータスを直接見せると僕のチート能力がバレてしまう……そうだ!
「リゼ、シュトラウス夫妻に光魔法SSのエクストラブレスを見せてあげて欲しい」
「はい、お兄様」
リゼが光魔法の魔術書を見て、呪文を確認している。
光魔法SSのエクストラブレスを発動できれば、リゼが大聖女である証になるのだ。
しかし、その前にやることが残っている。
「テオフィルさん、約束通り攻撃魔法のページを破棄いたします」
僕は、複製した光魔法の魔術書から攻撃魔法のページを破ると、火魔法で灰にした。
「おお、確かに見届けましたぞ」
テオフィルさんが静かに頷いた。
「リゼ、丁度そこにみかんの木があるから、それで試してみよう」
「はい、お兄様。では、いきます! ……咲き誇れ、我が魂に答え瞬時に恵みを与えたまえ、エクストラブレス!」
リゼの呪文と共にみかんの木に花が咲くと、瞬時に沢山の実がなった。
「おお! これは、まさにエクストラブレス。リーゼロッテ様、ついに貴方の遺志を継ぐ大聖女が誕生いたしました」
シュトラウス夫妻が、二人して手を合わせ号泣している。
「お兄様!」
そしてリゼが僕の胸に飛び込んできて、感涙にむせんだ。
僕はリゼをギュっと抱きしめる。
「お兄様に出会えて本当に良かった。自分以外の家族全員が亡くなって、帝城で皇后様に拒絶されたときに、お兄様が手を挙げてくれなかったら、私は光魔法と一生無縁だったかもしれません。お兄様、私の光魔法の素質を見つけてくれて、本当にありがとう」
リゼの瞳から涙が溢れている。
「僕こそリゼと出会えて良かったよ。リゼと一緒だと毎日が楽しくて幸せなんだ。これからもよろしくね」
「はい、お兄様」
リゼが僕を強く抱きしめる。
こうして475年ぶりに、大聖女リーゼロッテ以来二人目となる、大聖女リゼットが誕生したのだった。
これにて第3章成長期編が終了となります。
第4章の話は、頭の中にはあるのですが、一度第1話から文章の確認をしたいと思いまして。
更新の再開については、2024年2月1日を予定しております。
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