第103話 ファルコン村
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僕たちは新風力車に乗り、地図と睨めっこしながら昼食後、ついにファルコン村に到着した。
現在、村の門番に冒険者カードを提示して、入村の許可を取るところである。
門番は二人おり、一人は僕たちの対応をして、もう一人は周囲を警戒しながら警備を続行しているようだ。
「おい! 何だあれは!?」
突然、警備を続行していた門番が大声で叫んだ。
皆が、叫んだ門番の視線を追うと、遠くに走っている人が見える。
必死の形相で村に向かって走っているのは、赤い服を着た三人の女性だった。
「「「た、助けてー」」」
息を切らせながら、助けを求めて走る三人の女性たちが、門番のところに到達した。
「お前たちは、山菜を取りに行っていたはずでは?」
「そうなんだけど、山菜を取っていたら突然魔物に襲われて」
門番の一人が問うと、一番年長の30代くらいの女性が答えた。
皆が再び視線を遠くに戻すと、よだれを垂らしながら巨大な魔物が村に迫ってくる。
「巨大牛か! すぐに代官様に伝えるんだ!」
「おう!」
僕たちの対応をしていた年長の門番が指示を出すと、もう一人の若い門番がダッシュで代官のところへ伝達に行った。
巨大牛は、ゆったりとした足取りで村に近づいてきている。
「緊急事態だ。ガキ共は、ここから離れて隠れていろ」
年長の門番が剣を抜いて前に出ると、僕たちに隠れていろと言う。
逃げてきた3人の女性は、無事に村の中へ入っていった。
門番一人を置いて、僕たちも逃げるわけにはいかない。
まあ、そもそも逃げる必要がないのだけど。
さて、どうしたものかと思案していると、村から援軍がやって来た。
もう村まで50メートルくらいに迫っている巨大牛に向かって、20歳前後の五人の男たちが立ち向かう。
「Dランク冒険者パーティー『ファルコン』登場!」
先頭を走るリーダーらしき男が名乗りをあげた。
Dランク冒険者パーティーに、巨大牛の討伐は難しいのではないだろうか。
巨大牛はBランクの魔物で、ギルドの討伐依頼で死者も出るのだ。
Cランク冒険者パーティー以上でないと、ギルドで討伐依頼を受けられない。
まあ、これはギルドの依頼じゃないから問題はないけど、かなり危険である。
それを承知で立ち向かう勇気は、称賛に値するけれど。
「弟たちよ、盾で巨大牛の動きを止めるのだ! 俺が一撃で止めを刺す!」
「はい、兄者!」
四人の弟たちが盾を構えて、巨大牛の動きを止めた。
弟の中で一番小柄な人が巨大牛に弾き飛ばされたが、すぐに起き上がり三人に加わる。
「よくやった弟たちよ! 行くぞ巨大牛! はああああ!」
リーダーが、前のめりになっている弟の背中を走り、ジャンプして剣を大きく振りかぶった。
「おお、良い構えだ」
剣聖の娘であるクラウが、思わず声に出してしまうほど奇麗な構えである。
「止めだああああ!」
リーダーが剣を振り下ろすと同時に、巨大牛が頭を大きく動かして迎撃してきた。
そして、リーダーは巨大牛の角によって吹き飛ばされてしまう。
「兄者ー!」
連携の崩れた弟たちを、盾ごと吹き飛ばして巨大牛が村への進軍を再開した。
リーダーも弟たち四人も、気を失っているのかピクリとも動かない。
「よくも息子たちを! 魔物めー」
「代官様!」
50歳くらいの男が巨大牛を睨め付けて立っている。
門番が代官と呼んだので、この男が僕たちの探しているシュトラウス家の末裔かもしれない。
ともあれ、巨大牛を討伐しないと村が危ないね。
村の中からは、多くの女性や子供たちの悲鳴が聞こえてくる。
「えーと、代官殿」
「なんだ、子供は黙っておれ! 今は緊急事態だ!」
僕が話しかけても相手にしてもらえない。
「あのー、僕たち冒険者なので巨大牛を討伐しましょうか?」
「お前たちのような駆け出し冒険者に何が出来るというのだ! Dランク冒険者パーティーである私の息子たちでさえ、倒せなかった巨大牛相手に!」
「ああ、それなら大丈夫です。僕たち巨大牛を討伐したことがあるので」
代官が大きく目を見開いて僕を見ている。
「本当か!? 褒美は弾むから何とかしてくれ!」
「はい、承知しました」
巨大牛を確認すると、あと30メートルくらいまで迫っている。
「リゼ、結界を二重に張って万が一に備えて」
「はい、クリス」
う、戦闘状態だからか久々にリゼが、僕を呼び捨てにしてくれている。
おっと感激している場合じゃなかった、巨大牛に集中しないと。
そしてリゼが光魔法を連続して使い、結界を二重に張った。
「こ、これは何て高度な光魔法なのかしら」
声のする方を見ると、50歳くらいの女性が立っていた。
同年代の男性と手を繋いでいるのだが、夫婦だろうか。
おっと、戦いに集中しないと。
「クラウ! 僕が複合魔法で動きを止めるから、止めをよろしく」
「任せておけ! では、参る!」
クラウが巨大牛目掛けて、勢いよく走りだした。
「じゃあ、行くよーレストリクション!」
僕は、複合魔法で巨大牛を拘束した。
ガシャンと音がして、鉄のような材質の輪がいくつも巨大牛を押さえつけている。
こんなことは初めてだ。もしかしてこの辺は、砂鉄が大量にとれるのかもしれない。
「ブモオオオオオ!」
突然拘束され、巨大牛が怒声を発している。
そして、すでに巨大牛の前に到達していたクラウが、風魔法を使って高く跳躍した。
「はあああ!」
気合を入れたクラウの一撃が、巨大牛の頭に炸裂した。
巨大牛が地面に横たわり、頭からは勢いよく血が噴き出している。
僕が巨大牛を鑑定すると、画面には赤い文字で死亡と出ていた。
「えー、代官殿。討伐完了です」
僕が代官に討伐を報告すると、村の中から大歓声が起こる。
ビックリして僕が中を覗くと、村人たちが抱き合って無事を喜びあっていた。
そういえば、ファルコンの五人兄弟は大丈夫だろうか?
僕はリゼと急いで確認に向かった。
「お兄様! 皆、出血が酷いです!」
「一人ずつ治療していたら、失血死で助からない人が出てしまうね」
「お兄様、エリアハイヒールを使います」
リゼが凛とした声で僕に告げた。
僕にどうしたら良いか聞くのではなく、自分で使うべきと判断したのだ。
この差は、非常に大きい。リゼの成長を強く感じる。
「はい、大聖女の杖」
僕は収納ボックスからリゼ愛用の杖を取り出して渡した。
「ありがとう、お兄様」
リゼがエリアハイヒールの準備に入ったようだ。
僕は邪魔にならないよう、周囲の人をリゼから遠ざける。
「いきます! ……エリアハイヒール!」
リゼが右足をくの字に曲げながら上げて、右手に持った杖を前方斜め45度に突き出している。
伝説の大聖女リーゼロッテのキメポーズをまねた姿……完コピだ!
すると、上空からキラキラとした光の粒が舞い降りて、エリア内の五人兄弟に降り注ぐ。
その光景は、まさに絵本の挿絵と同じ構図だった。
「おい、あれって絵本の大聖女様じゃないか?」
「そうよね、大聖女リーゼロッテ様だわ」
村人たちが騒いでいるが、ファルコンの五人兄弟を確認するのが先だ。
「ファルコンの皆さん、大丈夫ですか?」
僕が声をかけると全員が動き出す。
良かった、皆が無事で。
「あれ? 巨大牛は、どうなった!?」
リーダーが大声で僕に確認してきた。
「えーと、僕たちが倒しました」
「はあ!? お前みたいなガキに倒せるわけが……」
リーダーが周囲を確認すると、巨大牛の死体が目に入り状況を理解したようだ。
「マジか! 凄いなお前たち、一体何者なんだ?」
「僕たちは、Sランク冒険者パーティー『インフィニティ』です。僕はリーダーを務めるクリスと言います」
「はあ!? Sランク!? 嘘だぁ」
僕は、自分の冒険者カードをリーダーに提示した。
「おお、本当にSだ! 初めて見た!」
「兄者、俺にも見せてくれ!」
ファルコンの五人兄弟が大騒ぎになっている。
これだけ元気があれば大丈夫かな。
「ありがとうな……いや、ありがとうございました。ファルコン村を救ってくれて感謝します」
リーダーが立ち上がって、僕に頭を下げている。
それを見て慌てて弟たちも、僕に頭を下げた。
「しかし、俺たちよりかなり年下の少年がSランクとはな。それに比べて俺たちはDランクで、巨大牛相手にこのザマだ。恥ずかしいったら、ありゃしねえ」
ファルコンの五人兄弟が、シュンとして下を向いてしまった。
「そんなことは無いですよ。ファルコンの皆さんは、巨大牛に勇敢に立ち向かった」
「でも……」
リーダーが何か言おうとしたが、僕は構わず言葉を続けた。
「巨大牛はBランクの魔物で、ギルドの討伐依頼で死者も出ます。Cランク冒険者パーティー以上でないと、ギルドで討伐依頼を受けられない。村を守るためにそれを承知で立ち向かう勇気は、称賛に値する」
「ううう、ありがとな少年。いや、クリスだったか」
リーダーが目もとに涙を浮かべて僕を見ている。
弟たちも皆、目もとの涙を腕でぐしぐしと拭っていた。
「クリス殿、息子たちを助けてくれてありがとう。親の私からも礼を言わせて欲しい。ファルコン村の代官を務める、ザームエル・タウアーだ」
「息子さんたちを助けたのは、妹のリゼットです。僕は、Sランク冒険者パーティー『インフィニティ』のリーダーでクリスと申します」
「おお、妹さんだったか。リゼット殿、息子たちを助けてくれてありがとう」
代官のザームエルさんが、リゼにペコリと頭を下げた。
リゼは照れながら、ザームエルさんに微笑み返している。
「クリス殿、お礼をしたいのですが貧乏な村でして……」
代官のザームエルさんが、申し訳なさそうに下を向いてしまった。
「いえ、お気遣いなく。僕が欲しいのは、情報ですので」
「情報?」
「単刀直入に聞きます。ザームエルさんは、かつてターミガン独立国に居た、シュトラウス家の末裔なのでは?」
「いいえ、私もご先祖様も皆、タウアー家ですが……あれ? そういえば、校長のところはシュトラウス家だね」
代官が50歳くらいの夫婦を見ている。
たしか門のところに立っていた人たちだ。
リゼの光魔法を賞賛していたような。
「ファルコン村で光魔法学校の校長を務める、テオフィル・シュトラウスと言います。本来ならお断りするのですが、村を救ってくれた恩人にそんなことをすれば、ご先祖様に叱られてしまいます。お話を伺いましょう」
この人がシュトラウス家の末裔なのだろうか?
何か秘密にしていることがあるのかもしれない。
代官の前で大聖女の話をしても大丈夫なのだろうか?
兎にも角にも僕たちは、ファルコン村でシュトラウス家を名乗る夫婦を見つけたのだった。
100話達成記念に、知人のカプサイシンさんからリゼットの画像を頂きました♪
凄く可愛いです!
カプサイシンさん、ありがとうございます♪
なお、著作権はカプサイシンさんにありますので、無断転載等はご遠慮下さいませ。




