SCT's Live Story -performance-
ぼくのなまえは、もぶぼさーる。
宇宙をすくう、救世主なのです。
こないだも銀河をこえ、スペースギャラクシーコスモモンスターと大バトルをくり広げておりました!勝ちました!ぼくは強いのです。
そんなお話の絵本をいっぱい書いてみつるくんに見せてたら漫画家になれよと言われました。でも、漫画家は絵が描けないとなれないのです。
どうやらぼくの絵はあんまりうまくないらしく、スターくんに「下手くそ」とだけ言われました。あんまりです!ぼくは怒っているのです!
でもぼくは動物園の飼育係さんになって、たくさんのお友達とコミュニケーションがとれるようになりました。前よりもお猿さんの声がはっきりとわかるのです。
じつは、ウキー!の「ウ」と「キ」にも、いろんな思いが込められているのです。低い「ウ」の時は悲しいとか、高い「キ」の時はお腹すいたーとか、ぼくはわかっちゃうのです。
えんちょーさんは、そんなぼくにびっくりして、いっしょーけんめいお猿さんの言葉を覚えようと三日三晩がんばってくれました。でも一言も分かることができなくて、こーさんしてしまい、ぼくのお給料がアップしました!
ぼくの毎日は、本当にハッピーなのです。
そして今日みんなに会えるので。
ぼくは誰とも前約束をせず、みんなそれぞれに、それぞれの時間を楽しんでもらっているのです。
誰からも何も聞いてないから予想だけど。
たぶん、みつるくんは坂下さんとデートしてて、
上崎さんと星野さんは仲良くなったからお茶してて、
スターくんと平賀さんと花蕾さんのいつもの3人は、ランチしてたら、その中の誰かが、気を遣って抜け出して、
抜け出したその一人は京急川崎駅でひかりちゃんと合流してたりして。
そんなことがもし起こっていたら楽しそーだなーって、ぼくは何となく思いながら、モブキャラとしての職務をまっとーすることにして、先に交流館さんに足を運んで三角関数さんのお手伝いをしていました。
イスのセットを終わらせて、みなさんもひと息ついています。
そして時計を見たら、
おっと、そろそろ17時。
みんなをむかえに行きましょうー!
ーーーーーーー
京急川崎駅。17時。
久々に9人が揃った。
セミロングになった輝きと波奈。あの二人が、今は双子のような愛らしい対照さを醸し出している。
「充くん、会いたかったよー!」
「おー!波奈ー!元気にしてたかー?」
会いたいんだ今すぐその角から♪とサビメロが流れるテンションで飛び出してきてくれるそんな高嶺の波奈子さんは相変わらず元気だ。
サイドアップにしている麗を見て、目をキラキラさせているのは輝きさん。
「うわぁー!麗かわいいー!超かわいいー!」
「ありがとう!ほたるちゃんも髪伸ばしたんだね!かわいい!」
そんな可愛すぎる愛しの麗様を誇らしく胸張って何も言わず自慢気な態度を輝きに向けていると、俺を見た彼女はあからさまにうぇぇと吐き気を見せる。何なら小声でボソボソと「やだ、寒気がする、コイツ無理」とまで仰っている。そんな思いを女の子にさせてしまったのであれば、俺も紳士の端くれ、寒気に身を凍えさせている輝きの体調を気遣い、態度を改めるほかない。
だが、真顔になったらなったで突っ込まれる。
「アンタ、麗が可愛すぎるからって変なことしてないでしょうね?」
「麗には何もしてない。俺はケツを見ていただけだ」
「はー!?ケ、え!?クズ!キッショ!変態死んで!」
リアクションからの罵倒スピードはもうギネスに認定されるそれである。彼女が俺を罵るのは今に始まったことではないが、彼女が年々それを加速されていってしまっては俺もそのギネスに受けて立つぜ!という姿勢で罵倒護身術なる秘儀を編み出し、その資格を習得せざるを得ないかと思っていたのだが、そんなアホみたいなことを考えていたら先に麗がフォローを入れてくれた。
「あっ、違うよほたるちゃん!充くんはね、本屋さんに置いてあったパンダのおしりを見てたの!それにハマっちゃったみたいで」
「あー…そういうこと…いやどっちにしろ気色悪っ!」
「気色悪いとは何だ。公式アンケートによる埼玉県の有名人物、堂々の一位はクレヨンしんちゃんだ。上野で2頭のパンダが生まれ、急速にケツの需要は増えている。ある意味エモい。もしくはエモい、あるいはエモい。つまりエモいを通り越してエモい」
俺がエモーショナルなアロマを焚いてそのお香に包まれているような未知の領域のエモさに達し、エモエモの実の能力者になっている姿は完全に無視され、ほたる、麗、波奈で楽しそうに喋っている。
一方、いつもの3人組は相変わらずで、平賀さんのギリッとした目が怖いんだよね、うん、ほんとずっと怖い。でもクセになるんだよね、あれ。
スターとはまあちょくちょく会ってるし。でも花蕾さんが声優デビューはマジで快挙!アンパンマンの子グマ役、おめでとう!
ひかりさんはすごい髪伸びましたね…ガールズで一番短かったのに、今は一番長いじゃん。
そしてご結婚。
これはお祝いしないとな。
「ひ、ひかりさん、ごけ、けこ、けこ…」
「ケコケコ煩いな、ニワトリか貴様」
「おめでとう結婚ございます」
「なんちゅう日本語だ…赤子からやり直せ」
いやだって知り合いで結婚とかマジでなかったからビックリしてるのよ。何だか照れちゃうじゃん、おめでとうって照れくさくて。
そして、何だかホッとした。
かつて振った俺が言える資格はないけど、この娘には、どうしても幸せになってほしかったから。
そんな俺の言葉を受けて、彼女まで照れだした。
「まあ…その…ありがと」
え、可愛い。
たまにこういう一面見せるよねこの子…。
だが、まあ。
そも、蒼井ひかり、いや、詩島ひかりは、誰もが認めるとても可愛らしい人なのだ。
それに最も理解を示していたのは、俺以上に彼の義理の兄、詩島ライトさんだった。
だから。本当に、本当に良かった。
「ったくもー!スター遅い!」
「いやお前が勝手に抜け出したんだろ」
「はあー?アンタがモタモタ食べてたからでしょうが!ばか!」
「はあ?バカって言う方がバカだろ!」
「うるさいわね、ばーか!」
「バカって言うんじゃねぇバーカ!」
「ねーねー、この間ね、青森で桜が開花したみたいだ…」
「黙れモブキャラ!!」
「ウッキッキー!」
お〜、飛んでく飛んでく見事なモブロケット。
案内人を失ってしまいましたので、みんなで交流館へと向かいます。
ちょうど歩いて5分。交流館に到着するとモブが降ってきた。
「もー!スターくんも平賀さんも酷いよぉ」
そんな変わらない、高校生のテンションが残った俺達は、久々にこの館の扉をくぐる。
エレベーターをあがり、4階。劇団!三角関数の楽屋にお邪魔する。
そこには、小堺くんのカッコよさとは雲泥の差のカッコよさを纏うチーフマネージャーさんがメンバーの皆さんの髪型をセッティングしていた。
セッティングされているのは、スターのように声が爽やかで、喉の調子を常に気にしている副リーダーさん。
モブとは違い、かなりしっかりしている演出リーダーさんは、輝きに似た明るさを持つ演出の方と一緒に、CDの音源の最終調整をされていた。
メガネの歌い手さんがお二人。アサガオの髪飾りが似合う、平賀さんのツンとした中に隠れる、じんわりとした優しさがとてもリンクしたその方と、ハッピー♪な歌がとっても似合う、麗と同じくらい可愛らしいチャーミングな声を持った方。
みんなを優しい眼差しで見てくれているのは、波奈のように素敵な笑顔が似合うとても優しい方。彼女もセッティングを終えて待機している。
お客様アンケートの用紙の中にある「好きなキャラクター」という項目に、お客さんから本人の名前をそのまま書かれるという、もはやキャラとして認定された偉業を持つ、神だの何だの言っている怪人物も、小堺くんとはまた違った路線の悪の感じがばっちり決まっていてカッコいい。
そんな個性派揃いの三角関数メンバーと俺達は久々にゆっくり話し合う。
公演の楽しみで期待を膨らませていたら、リーダーが駆け寄ってきた。
「久しぶり。充」
「ああ、ゆーじ」
何だか変な感じだ。この人だけは、他人とはとても思えない。
いつかのように、誰かに裏切られた気になり、
いつかのように、河原に自転車を放り投げて泣いたり、
いつかのように、誰かを突き放してしまったり、
いつかのように、誰かを本気で好きになったり、
そして今のように、生きることの苦しさを痛感したり、
共にこの人と俺は、数々の恋愛のトラウマを乗り越えてきたような、奇妙な感覚にさせられる。
彼は続けた。
「久々にREAL TARGET、スターくんと歌ってくれ」
「え、ステージにまた上がっていいの?」
「うん。ついでにチョコがほしい!も、モブくんと一緒に」
「別いいけど」
すると後ろから、輝きが続く。
「私と麗も『君とハッピーエンド』歌います!あと、麗は久しぶりに『パステル・ダイアリー』歌ってくれます!」
「恥ずかしい…。でも充くんが応援してくれるなら頑張れちゃうかも!」
「する!応援する!全力でします!」
そんな俺達の光景を、まるで生みの親かのように、リーダーは笑ってみていた。
「ああ。みんな、よろしくな!」
ダウンライト、ステージライト。
そんなスポットライトとも呼べない簡易照明へ、俺達は吸い込まれ、久々にこの段を駆け上がる。
お客さんの優しくペンライトを振る光景を目に焼き付けながら、歌声を紡いでく。
きっとこれからも。俺達は正解が見つからずに足掻くだろう。
それでも。
「会場にいるリア充も、非リア充も、今日は手と手を取り合って一緒に盛り上がっていきましょう!わたくし仲沢充が今から『リア充は爆発だ』と言うので、それに続けて皆さんは『うぇぇい!』と返して下さい。一緒に、あの忌々しいリア充を滅ぼしましょう!」
ステージに9人であがり、客席側に三角関数のみんながいる。お客さんと共に、声は交流館の全体に響き渡る。
祭りの概念はみな違えど、色んな経験をした人々が1つの空間に集う。このメンバーとお客さん全員がもう一度揃うことはきっとない。けれど、そんな各々の想いが重なり合うから、祭りは祭りとして成立する。
これからの自分たちの活力になれるように。
俺の言葉に、お客さんが続く。
「リア充は爆発だ!」
「うぇぇい!」
夢見るだけじゃ、
リアルは撃ち抜けない。
さあ、ゆこう。
充たない日々を、
変えて挑むために。
完。




