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リアルに銃を撃て。-社会人編-  作者: 金澤裕志
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SCT's Live Story -星&恋鳥 side-

腹が痛い。

何で花蕾はこんなに食えるんだ。

「どーしたのスターくん!第2ラウンド私が勝っちゃうよ!」

「もう食えねぇよ…。お前食欲落ちねぇのかよ…」

「ふっふっふっ。怪人コトーリですから」

「お前ちょくちょくそれ言うけど、モブに呪われてんのか」

「一番興味のない人が一番印象に残りやすいじゃん」

「いやそうとは限らないし、お前に一生興味を持たれないであろうモブが気の毒で仕方ない」

そんなどうでもいいことを適当に話していると、花蕾がおそらくさっきから気になってたことであろうことに突っ込んできた。

「で、いいの?」

「なにが」

「分かってるくせにー。のぞみん、私達に気を遣って二人きりにさせてきてますけど」

一応友達とは言え、その友達の彼氏と二人きりでいいのかと確認を含んだことを言ってきた。

「いいんじゃねーの。アイツの意図はわかるし」

恐らくは俺が人と絡むの面倒くさがってんのを察して、そういう場を設けた、というあたりだろう。相変わらず要らんお節介だが、その相手が花蕾だから構うこともない。

「てか花蕾、お前も分かって乗っかってんだろ」

「当たり前じゃ~ん、のぞみんの考えることなんて細胞レベルでわかるよ」

「相変わらず気持ち悪いな」

「ふっふっふっ、それが私の取り柄ですから」

気持ち悪い、と言ってみたが、本当に心底から希美を敬愛しているのがわかる。

まあ、アイツの回しすぎる気遣いにはさすがにハテナを浮かべたようで、

「何でのぞみん、そんな天邪鬼みたいなことするんだろうね。まあそんなのぞみんが好きなんだけど」

「アイツの面倒くささは今に始まったことじゃねーだろ。自分のしたいことと反対のことをしたくなる気持ち。普通だったら理解できねぇけどな」

「つまるところ、スターくんは普通じゃないってことですね!」

「まあな。普通が一番ムズい。てか普通じゃないっていうジャンルの常習犯なら俺よりお前だろ」

そう言われて彼女はふっと笑うと、また何を考えてるか分かんねぇような顔をした。

「まあ、私、腐ってるから」

「ほー、腐女子ってやつか」

「今クールのアニメは全部予約したじゃん、とりあえずそれを徹底的に研究して、次に活かすつもり」

「なるほどな」

俺が納得できるのには理由がある。


そう、コイツは、声優になった。


「オーディションはどーなの」

「それがさ聞いてよ、今度アンパンマンに出ることになったの!いっぱいいるキャラのうちの一言だけしかないけど!」

「え、やば、すご」

「スゴいでしょ〜。アキバ高校通った理由がヲタ活だからさ。ちゃんと今に生きてるわけよ」

「お前のこと割とどーでも良いと思ってたけど、お前意外とすげーんだな」

「ストレートにヒドい…。スターくん私のことマジで興味ないよね」

「そうだな。お前がモブに対して興味ないのと同じくらいの熱加減だな」

その言葉を聞いて、自分の言葉を伏線にされたことに気付いたのか、彼女は察した言葉を返してくる。

「あ〜、てことはスターくん、割と私に興味あるってことだ」

「それはお前がモブのこと割と興味あることを認めることになるけどいいのか?」

「モブくんは恋愛対象じゃないからおーけーい!」

「じゃあ、俺もお前のこと恋愛対象じゃないからおーけーい」

「あははっ!なにそれ!」

「あはははー」

花蕾は嬉しそうにケラケラと笑う。俺は棒読みでヘラヘラと笑う。え、なんでコイツと会話するときこんな駆け引きみたいな会話になるの。クソ疲れる…。

たまに、本当にたまにコイツが素を出した時、真意が一瞬見える。それは過去に由来している。

「ま、のぞみんの目的はスターくんのことだけじゃないと思うよ。私、あの子に依存してるからさ、たぶんのぞみん、私に独り立ちしてほしいってのもある」

「別に仲良くしてるだけで依存とかじゃねーだろ」

「うん、知ってる」

そう。どうせコイツは知ってる。何でも分かってしまう。

「あくまでのぞみんがそう思ってるだけなの。私は前と違って声優の卵仲間もいるし大丈夫なんだけどね。まあそれでものぞみんが一番だからそれは変わらない」

「ほー」

久々に、コイツの、あの話が聞ける。




ーーーーーーー




スターくんは私の話を、ずっとやる気なしなノリで聞いてる。

ツンデレなのは、実はスターくんなのかも!なんてね。

だから久々にこの話をする。


懐かしのあの日。

私の運命は変わった。






部屋で引きこもっていた小学生の私。

そこへ連絡帳を届けに来た、まだその時はまったく接点のなかったのぞみん。

「友達なんか、私にはいない!!私なんか、誰も興味ないんだよ!あなただって私に興味ないんでしょ!」


そんな情けない私の言葉に、彼女は即座に跳ね返した。


「そうだよ!私だって友達の約束があるのに、クラスぼっちのアンタなんかに構ってるほど暇じゃないんだから!」


私はお母さんをよけ、彼女を追い払った。

「アンタなんかに何が分かるの!ウザいから帰って!」

そして力いっぱいの、平手打ちが飛んできた。


バシンッ!


「そうやって逃げまくって、都合の悪い時だけ顔出して、ウザいのはアンタでしょ?一回引っ叩いてやりたかったからスッキリした」


私の心の中の怒りは、目の前の彼女へと溢れていた。でも、怒りの中に含まれている根っこの気持ちを、どう伝えれば良いのか、人と上手に関わってこなかった私には分からなかった。

「私は…どうすれば良いの…」

「はぁ?アンタ、バカじゃないの?」

彼女は呆れ切った表情で、私を見た。

私達はまだ小学5年生だった。それなのに、彼女の目は凛としたカッコよさが、あの時にはもう、出来上がっていた。

「友達が出来ないならまずちゃんと相手の目を見て向き合いなさいよ!友達になりたい意志があるならそう伝える!そうしないと変わらないでしょうが!傷つくのを怖がってたら、何も始まらないでしょ!」







こうしてのぞみんと出会えたから私は、ストレートに物を伝られるようになれたのかなーって思う。

いや、むしろそれしかしてない。


誰かのちょっとした仕草にすら敏感で、相手のわずかな態度の変化から何を考えているのか色々分かってしまって。そんな自分が怖いから。


あの頃と変わらずに、今も、分かりやすい愛の言葉だけで、人と会話している。


そんなことをスター君は簡単に見抜いてくる。

「お前から久々に聞いた、この話」

スターくんにのぞみんと出会うきっかけになったこの話をしたのは、これで2回目。

「そうだね。東京見学のあと、二人でウィンドウショッピングして帰ったっけ!まさかあの後スター君とのぞみんが付き合うとは思ってなかったし!私、嬉しいよ!」

「嘘つけ。そうなることも分かってたんだろ、お前は」

ふふっ。相変わらずスター君と会話するのは怖い怖い。

「まあね。そして二人がずっと続いてるのもなんか嬉しい」

嬉しい。本当に。


私は、シンプルな人間だ。


不登校だった時、家で沢山のアニメを観てたからアニメが心の救いになった。

そんな、大好きなアニメの身近な存在になってるアキバ高校を選んだ。

そして声優の専門学校に行って、養成所に入って、オーディションを受けて…っていうそんなステップを踏んで。

本当にわずかだけど、バイトしながらアニメに直接関われている。

だから、本当はチョロい人間だ。

嬉しい、とか、大好き、とか、簡単に口にしてしまう。

そんな、簡単な人間だ。


「私は、それだけで嬉しいな。大好きな二人がずっと幸せそうなんだもん」

そう言うと、彼は優しく笑った。

「お前も、アイツと同じでめんどくせーな」


ドクンッ。


なぜか、心臓が高鳴った。

恋とか分かりやすい気持ちじゃない。

スター君にそういう気持ちを抱くことはない。

けれど、そういうのとは別の感覚で。

何だかゾクッとした。


「めんどくさい?そうかな」

「めんどくせーよ。色々考えて考えて、一番何がいいのかってことを無意識にやる感じ」

それに続けて彼は、びっくりする言葉を口にした。

「お前はチョロくもないし、簡単でもない。安心しろ」

「え!?なんで私の心の中の声当てたの?天才?メンタリスト?それとも変態?スケベ?」

「最後の方はもはや何なんだよ…。いや心の中じゃなくて、お前いま自分で言っただろ。本当はチョロい人間だの簡単な人間だの。数秒前の記憶も消えたのか」


あら…。

私ったら、後半の心の中のモノローグがオンになってたみたいだった。


「気付いたら喋ってた!私、取り憑かれたかも!」

「そうかもな。まあ、そうやって頭の中で色々考えすぎてたら漏れちゃったんだろ。器用に見えて、お前、不器用なところあるからな」

「あらあら、これはわたくしコトーリ、痛恨の失態」

そして変わらず、優しく、大人しく笑って彼は言葉を伝えてくれた。


「いつか。本当にいつかは知らんが。お前の器用なところ以外を見てくれる人が現れるといいな」


そんな、心までも、とろけちゃうくらい穏やかな声が、のぞみんは落ち着くんだろうし、たまらないんだろうな。

なーんだ。スターくんだってめんどくさい。

結局、私のことを色々考えてくれちゃうんだから。

3人とも、お人好しなんだよね、私達。

それがよーく分かったし、またこの後大好きなのぞみんに会えるから、そしてスター君とのぞみんの可愛すぎる推せるコントが見れるから、

冷徹な私をこの人に向けられる。


「そんな人が現れたら、人を捨てなくて済むのかな?」


私は小堺くんの手口が全て分かってしまった。

きっとこの先、どんな男の人が関わってきても、私そのものを見せることは難しいでしょう。

そして、切って捨てるのでしょう。

だって私、腐ってるから。

だからスターくんからヒントが欲しくなった。

そして彼は最後のスイーツを口に入れて、モグモグしながら言う。


「知らん」


「スター君、ひどい!」


まあ何だかんだ3人でいられる今が好きだから、今後のことなんてなんでもいいやー!


「よし!そろそろスター君、行こ!遅れちゃう!もうすぐ17時だよ!」

「ひふぁ、はへへんふぁはら、ふぉっふぉまへ(今、食べてんだから、ちょっと待て)」






続く

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