早すぎたMy Soul
公式企画『春の推理2022』では数多くの名作が投稿されています。
でも、なぜか公式サイトの検索画面にはでてこない作品もあるようです。
桜の木のたくさん生えた森で、小さなタヌキくんと王冠をつけた白いおサルさんがお話ししている。
どちらも魔法の鏡を持って、別の世界の『小説サイト』を映し出していた。ふたりの間には桜餅がのったお皿が置かれていた。
「子狸くんも『小説家になろう』の企画を読んでんだな」
「うん。白猿さん。僕、推理小説が大好きなの」
「おいらも春の推理2022の掲載作品を読み始めたぞ。おもしろそうな小説がいっぱい見つかったぞ」
「んとね。企画初日の真夜中から始まって、朝までに10本以上投稿されてたの」
「それが変なんだよな。子狸くん。おいらが朝見たときは、30本近く出てたはずだぞ。子狸くんの画面では半分くらいしかでないってことだな」
白猿さんは魔法の鏡を操作して、一覧を見せた。
子狸君も魔法の鏡を操作した。
「んとね。僕もそれ気になってたの。白猿さんは『春の推理2022』のキーワードだけで検索したんだよね。僕のは『春の推理2022』のサイトで参加作品の『もっと見る』の一覧で見たの」
「出てくる結果は同じになるはずなのに、不思議だね。この謎に、迷たんていの子狸くんはどう推理する?」
「んとね、白猿さんの鏡を僕にちょっと触らせてほしいの」
子狸くんは白猿さんの鏡を操作して、自分の鏡でも操作をした。
やはり検索結果の数が違っている。
子狸くんは両方の画面で、投稿時間が一番古いあたりを表示させた。
「白猿さんの画面にあって僕の方にないものは、ほとんどが最終更新日が4/14 00:00かそれより前になっているの。たぶん前の日までに予約投稿をしたの」
「別にいいだろ。4/14の0時から企画開始だよな。長編の連載をそれ以前から始めていても、別にルール違反じゃないよな」
「んとね。たぶん『春の推理2022』サイトの作品一覧は、小説を公開した日時じゃなくて、ジャンルとかを選ぶ前に『投稿する』ボタンを押した時間がひっかかってると思うの」
「おいおい。ってことは、企画1番乗りを狙って0時に設定した人とか、初日の日中に公開するような設定を前日までにやったら……」
「んとね。『春の推理2022』サイトの作品一覧には載らないかもしれないの」
白猿さんはびっくりした感じで、自分の鏡と子狸くんの鏡を見比べている。
「それじゃあ。企画前に予約投稿を設定した小説は、誰にも読んでもらえないのか?」
「んとね。『春の推理2022』サイトのトップには出てたみたいなの。でも、投稿数が多いからすぐに流れるの。小説家になろうや小説を読もうの、新着情報や完結済みのところには出るの」
白猿さんは王冠みたいな飾りを外して頭をガリガリとかいて、かぶりなおした。
「せっかく企画に参加したのに、読む人が少ないのは残念だな。まてよ、よく見たら公式一覧に載らないやつって、ほとんどは連載ものだな。次の話を投稿すれば載るんじゃないか。完結済にしたやつも、後日談とか追加すればいいと思うぞ」
「んとね。企画開始後に次話が投稿された連載もあったの。でも『春の推理2022』のサイトで参加作品の『もっと見る』の初期設定が『新着投稿順』なのが気になるの」
「何が気になるんだ? 更新された順番だよな」
「その小説、なぜか4/14 00:00と同じところに載ったの。これだと埋もれるかも」
「え? そうなの? まあ、公式一覧に載ればOKだと思うぞ。読む人は順番を変えられるしね」
ここで子狸くんは自分と白猿さんの鏡を操作した。
「白猿さん、ちょっとこれを見て。この話は企画開始後に次話を出してるのに、なぜか公式一覧には載ってないの。この原因は調べ中なの」
「ほんとだ。これは謎だな。期待しているぜ。迷たんていくん。で、短編で載ってないのはどうフォローできるかな。再投稿するしかないの?」
「んとね。僕がさっきまでに気づいた短編は4つがあったの。でも予約更新じゃなさそうな投稿時間のもあるの」
子狸くんは、公式一覧で出なかった4つの短編を表示させた。
白猿さんは、子狸くんの出した短編のタイトルを眺めながら桜餅を食べている。
餡を平たい生地で巻くタイプの桜餅だ。
「その話はおいらも全部読んだけど、ホラーチックなお話だから弾かれたんじゃねえの?」
「んとね。ストーリーのチェックはしてないと思うの。公式の一覧で出てくるお話にも、もっと怖い話もあるの。この4つの短編はジャンルが『推理』じゃなかったの。ジャンルは投稿後でも変更できるの」
「あれ? ジャンルが違ったら出ないんだっけ。前回の童話の企画では別ジャンルのもけっこう読んだぞ」
「たぶん、白猿さんが自分で『冬童話2022』で検索したからだと思うの。前回の公式一覧でもジャンルが童話じゃないと検索対象外みたいなの」
子狸くんは自分の鏡を操作して、以前の企画のサイトを出した。
「んとね。冬の童話の企画で、白猿さんのお話もでてたの。これなの」
「おう。もちろん読んだぜ。おいらのすんばらしい活躍が書かれてるよな」
「この作者が白猿さんのお話を出すとき、企画の最終日の23時で予約投稿をしたの」
「なるほど、公式サイトから新しい順で探すとトップに来るってわけだ」
「運が良ければ公式サイトのトップに半永久的に表示される、と思ったみたいなの。でも予約投稿を設定したのが最終日の数日前で、一覧では数日前のところで並んだの。しかも公開されたのが最終日の23時だから、埋もれた可能性もあるの」
「全作読む人が毎日新作をチェックしていても、前日のところに入ったらすぐには気づかないかもな」
「んとね。予約投稿って、長期連載でブックマーク数のたくさんある作品だけが使える機能だと思うの。普通の投稿でも予約投稿だと埋もれやすいの。公式企画でやると今回みたいな変なことになるの」
「なろうには謎仕様がいろいろあるなぁ……」
自身の鏡を眺めていた白猿さんは、ふと気づいたように子狸くんを見た。
「子狸くん。そう言えばよ、おいらの活躍を描いた作者が、子狸くんの活躍も書くって予告してなかったっけ」
丸いタイプの桜餅を食べていた子狸くんは、にっこりと笑って答えた。
「んとね。その話は公式の一覧には出ないみたいなの」
「なんで? もしかして何か月も前に予約投稿したのかな。だったら、誰も読んでないだろうから消して再投稿すりゃいいぜ」
「違うの。子供向けのお話だから、ジャンル『童話』で出すみたいなの。ネタを考え中で来月出すんだって」
ザァーという風の音と共に、森の中で桜吹雪が舞い踊った。
「あれ? 白猿さん。今気づいたんだけど、僕はものすごい勘違いをしていたかも……」
「ん? 勘違いって何を?」
「んとね。公式サイトの検索画面で「詳細条件設定」を見たの。範囲が4/14-5/12なんだけど、「最新部分掲載」じゃなくて「初回掲載日」なの。参加規程の『応募期間内に新規投稿された未発表作品であること』に引っかかってるの。それに公式一覧に4/14 00:00で初めから載っていた作品もあったから、予約投稿のせいじゃなかったの」
「あん? それじゃあ、企画開始前にすでに公開してた分は、次話を出しても公式一覧に載らないってことかな。更新して載ったのは予約投稿の4/14 00:00以前には連載開始をしてなかったか、先に出したときにジャンルが違っていたのかもな」
「そうかも。それと公式一覧の検索画面では、連載は『完結のみ』に設定されてるの」
「え? そうだっけ。てえことは、公式一覧に載らない理由って」
「んとね。3つのパターンがあるの。1、ジャンルが推理じゃない。2、企画開始より前に投稿と公開。3、完結前の連載小説」
「なるほどね。完結前の作品も見たい場合は、自分で『連載中』に切り替えて検索すりゃいいのか。『出題編』『解答編』に分けて、真相を発表するまで数日あけてる作品もあるよな。おいらは公式の検索は使わずに『春の推理2022』がついてるのをかたっぱしから見ていくよ」
「んとね。僕は公式の『もっと見る』にでるのを順番に見ていくの」
白猿さんと子狸くんは、それぞれの鏡を操作して推理小説を読み始めました。
推理とはちょっと違うかもしれないですが、企画自体で気になったことを書きました。
この小説、不定期に更新するかも。
公式企画の作品一覧では『秋の歴史2022』からは連載中のものも掲載されるようになったようです。
『完結するまで表示されない』となると読みづらいですよね。
なお、この下にある「『春の推理2022』参加作品を検索」をクリックすると、企画前から連載開始したものや連載中の作品、ジャンル違いのものも表示されます。