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魔王自ら勇者を育成してやろう!  作者: フオツグ
第三部 決着をつけてやろう!

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約束してやろう

 クヴァールが光に変わっていく。

 数多くの魔物を生み出し、人間を恐怖させた存在はもういない。

 悲劇の魔物が生まれることは、二度とないだろう。


「終わった……のか」


 コレールが光を見つめながらそう呟く。


「いや、まだ終わってない」


 コレールはゆっくりと顔を動かし、我が輩の顔を見た。


「世界は未だ混乱に包まれている」


 コレールはハッと、そのことを思い出したようだった。


「そうだよ、コレール。僕のせいで、人間達は今も無意味に争ってる」


 ボースハイトは目を伏せてそう言った。

 我が輩は首を横に振る。


「ボースのせいではない。フラットリーのせい──元を辿れば、ラウネンの策略のせいだ」

「もし今、魔族が攻め入ってきたら……」

「それはない。魔族は王を失った。人間に攻め入る余裕はないだろう」


【掌握王】ラウネン。

【生殺王】メプリ。

【始まりの王】クヴァール。

 四天王の大半を失った。

 残った四天王【最弱王】ルザは魔王になる器ではない。

 人間からも、魔族からも逃げ回るだろう。

 我が輩はもう、魔王ではない。

 クヴァールの提言により、我が輩に従う魔族は、もういないだろう。

 人間と魔族の大混乱。

 我が輩は〝全てを解決する方法〟を既に思いついていた。

 我が輩はコレール、ボースハイト、グロルに笑いかけた。


「我が輩の配下がすまなかったな。そして、今まで付き合わせて悪かった」

「何を、今更……。出会ってからずっと、振り回されっぱなしだったよ」


 コレールはそう言って笑う。


「これからは自由に生きろ」


 そう言うと、三人は目を丸くした。

 我が輩達は、我が輩と戦うために出会った。

 もう我が輩に三人と戦う意志はない。

 三人を勇者の役目から解放しよう。


「さあ、行け。魔王軍が来る前に」

「ウィナはどうすんだよ?」


 グロルが尋ねる。


「我が輩はここで成すべきことがある」


 我が輩は行け、と手で示す。

 コレールとグロルは困ったように顔を見合わせた。

 ボースハイトは真剣な面持ちで言った。


「死ぬなよ」


 我が輩は鼻で笑う。


「我が輩を誰だと思っている」

「そうじゃなくて──いや、いい」


 ボースハイトは我が輩の目を真っ直ぐ見て言う。


「じゃあ、約束して。また会おうって」

「ああ、約束してやろう」

「……本当に?」


 ボースハイトは我が輩を疑っているようだった。

 我が輩はため息をつきながら言った。


「そんなに心配なら、また会えるように魔法をかけてやろう」


 我が輩は皆に魔法をかけた。

 ふわり、と生温かい風が皆の頬を撫でる。


「また会えるように、と願いを込めた」


 まじない程度の効果しかないものだが、ないよりはマシだろう。


「これで良かろう、ボース」


 ボースハイトは納得していないようだった。

 コレールがボースハイトの肩を叩いた。


「ボース、行こう」

「でも、こいつ、約束守る気ないよ、絶対」

「ウィナを信じようぜ。魔法を使ってまで、約束してくれたんだからよ」


 グロルはそう言って、からっと笑った。

 三人は渋々、玉座の間を出て行った。

 静かになった玉座の間で、我が輩は一つため息をついた。


「……全く、ボースハイトめ、思考を読みおって」


 我が輩は魔力が枯渇していて、《思考防御》が出来なかった。

 だから、思考が読み取られるのは仕方ないことだ。


「おかげで、決意が揺らいでしまったではないか」


 タイレが使っていた、心血を注ぎ、常人では出来ないことを成す魔法。

 それを使い、魔族を剿滅(そうめつ)する。

 我が輩の心血を注げば、それぐらい可能なのだ。

 我が輩は〝最強の魔王〟なのだから。

 魔族がいなくなれば、人間達の争う理由も、なくなる。

 コレール達が不安に思う音もなくなる……。


──代わりに、我が輩はこの世界から消えてなくなる。


 三人にはもう二度と会えないだろう。

 彼らともう一度会う約束は果たせない。

 ボースハイトだけでなく、コレールやグロルも怒るだろう。

 我が輩を信じてくれたのに、本当に申し訳ない。


「でも、これは世界を滅茶苦茶にした、せめてもの償いなのだ……」


 コレール、ボースハイト、グロル。

 三人の勇者が、これから、生き辛くないように。

 悲しまないように。

 苦しまないように。

 我が輩は願っている。


 我が輩は掌を上に向けて、一世一代の魔法を使う。

 指先から徐々に光に変わっていく。

 胴体、足、そして、頭が消えかかったところで、我が輩の視界は眩い光で支配される。

 あまりに眩しくて、我が輩は目を閉じた。

 瞼の裏に浮かぶのは三人の顔だった。


「──ウィナ!」


 三人の声が聞こえて、我が輩は目を少しだけ開けた。

 三人の戸惑っている顔が見えた。

 貴様ら、何故、戻ってきたんだ。

 と思うが、直ぐにボースハイトが密告したのだと納得する。

 ……ああ、そんな顔しないでくれ。

 我が輩は貴様らのためにこの身を捧げるのだ。


 臆病だが、仲間のためなら勇者にもなれる、コレール。

 素直ではないが、仲間を誰よりも大切に思っている、ボースハイト。

 狡猾だが、かなり情に熱い男、グロル。


 三人と出会えたこと、旅を出来たこと、感謝している。

 名残惜しいが、お別れだ。


「出来ることなら、また何処かで──」

終わり

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