四天王の一角と戦ってやろう!
ラウネンは仕切り直すように、手を大きく叩いた。
「さて! お喋りはこの辺にして……そろそろ始めようかっ」
「戦闘をか」
「んー、あれ? 気乗りしない?」
ラウネンはへらへらと笑った。
「戦闘を始めるのは一向に構わない。我が輩もそのつもりだ。ただ……」
我が輩は顔を上に向け、ラウネンを見た。
「貴様、我が輩に勝てると思っているのか?」
「魔力の残ってないキミに何が出来るのかなあ?」
ラウネンはそう言ってニヤニヤと笑った。
「……随分と舐められたものだな」
我が輩は床を蹴り、一瞬にしてラウネンの懐に入る。
そして、ラウネンの頬を魔力を込めて殴った。
悲鳴を上げる間もなくラウネンの身体は宙に飛び上がり、高速で横回転する。
その遠心力で四肢と頭が胴体から千切れた。
床や壁に血液を撒き散らしながら、ラウネンの身体達がぼとぼとと床に落ちる。
「し、死んだ……?」
それを見ていたコレールが震える声で尋ねた。
「否」
ラウネンは死んでから真価を発揮する。
床に落ちていた四肢と頭がピクリと動いた。
すると、ラウネンの体らはずるずると床を這いずりながらmラウネンの胴体に向かい始める。
各々、元の場所に収まると、ラウネンは何事もなかったかのように立ち上がった。
「いてて……。嘘でしょー。まだそんなに魔力が残ってるなんてさっ! 本当に怪物だね」
「い、生き返った……!?」
コレールとグロルは目を剥いた。
「生き返ったのではなく、生きていた頃に戻ったのだ」
ラウネンは時間に関する魔法を得意とする。
五体満足で生きていた頃に身体の時が戻るよう、予め自身の身体に《時間逆行》魔法をかけてあるのだ。
例え身体が粉微塵になったとしても、数秒後には元に戻る。
実質不死身のラウネンだが、殺す方法はある。
魔法を使えないようにする魔法《封印》をラウネンの身体に施せば良い。
生きていた頃に戻る魔法を封じてしまえば、ラウネンは復活出来ない。
貴様の攻略法は既に知っている。
「終わりだ、ラウネン」
我が輩がラウネンに《封印》をかけると、魔法陣がかかれた実体のない鎖がラウネンの体に巻きつく。
「絶対嫌だねっ! フラットリー、やれ!」
「はい」
直後、フラットリーがラウネンにかかった《封印》を解き、《封印》の鎖が割れて散った。
ラウネンは我が輩を見て、勝ち誇った顔をした。
「にゃぱぱぱっ! フラットリーを創って良かったなあ。《封印》という弱点のないボクは不死身! さあ! どうやってボクを殺すっ!?」
我が輩はラウネンの頭を掴んで握り潰した。
ラウネンは膝をつく。
倒れる前にラウネンの頭は《時間逆行》魔法で元に戻った。
「な、何──」
ラウネンが何かを言い終わる前に、手を横に薙いで、ラウネンの頭と胴体を分離させる。
頭は床に落ちる前に、胴体へと戻っていく。
そして、ラウネンの意識が戻ったところでラウネンに言う。
「丁度良い。一度殺しただけでは腹の虫が治まらないと思っていた」
ラウネンの首を掴んで、首の骨を折った。
直ぐに、折れ曲がった首が真っ直ぐになる。
「何度でも殺そう」
ラウネンの口の中に手を突っ込み、後頭部まで手を貫通させる。
ずるりと手を引き抜くと、空いた穴が塞がる。
「我が輩の魔力が尽きるのが先か。貴様の精神が耐えられなくなるのが先か」
ラウネンの首を絞めるが、力加減を間違えて、握り潰してしまう。
細くなった首は元の太さに戻る。
「勝負しようではないか」
殺して、元に戻って、殺して、元に戻って……。
それを十数回繰り返したところで、ラウネンはようやく自分の置かれた状況を理解したらしく、我が輩に背を向けて逃げ出した。
我が輩は追いかけて、ラウネンを殺した。
元々、我が輩とラウネンでは戦闘に対する姿勢が全く違う。
我が輩が戦闘を好んで行うのに対し、ラウネンは戦闘を避け、敵の紛れ込み、内側から崩壊させることに注力していた。
それでは、一生我が輩には勝てぬ。
「フラットリー! 何やってる! ボクを助けろっ!」
自分だけではどうしようもないと悟ったラウネンは、立ち尽くしているフラットリーをキッと睨みつけた。
フラットリーは降参とでも言うように両手を頭の横まで上げた。
「助けると言われましても……。こんなのに喧嘩売る気にはなれませんよ」
「この役立たずがっ! さっさと攻撃しろっ! お前を創ったのはボクだぞっ!」
「……はあ。わかりました」
フラットリーは渋々我が輩に向かって、《吹雪》を放つ準備をする。
我が輩は反射的に《防御》した。
「止めろよ! ボース!」
そう叫んで、グロルがフラットリーに掴みかかった。
フラットリーは《吹雪》の準備を即座に止め、《転移》を使ってそれを避けた。
そこにいるはずだったフラットリーがいなくなったことで、グロルは床に顔面を打ち付ける。
「びっくりしたな。急になんだい?」
「創られたからって、そいつに従う必要なんてねえよ!」
グロルはぶつけた鼻を手で押さえながら、顔を上げてフラットリーを見上げる。
「ウィナに攻撃したらお前は絶対後悔する! だって、仲間なんだから!」
それを聞いて、ラウネンがニヤリと笑った。
我が輩はラウネンが何かを企んでいると気づいた。
しかし、フラットリーとグロルの動向が気になって、ラウネンから目を離してしまった。
その一瞬の隙をつき、ラウネンがグロル達の元へと《転移》した。
「貴様……!」
ラウネンを追いかけようと脚に力を入れる。
ラウネンはグロルの頭を両手で掴み、無理矢理自分の顔へと向かせた。
そして、
「《キミはボクの仲間》だよ。《ウィナはキミの親の仇だ》。《一緒にウィナを殺そう》っ!」
そう、嘯いた。
ラウネンに追いついた我が輩は、グロルから引き剥がそうとラウネンの首を掴もうとする。
そのとき、グロルが我が輩を突き飛ばした。
我が輩の手が空を掴む。
「グロル……?」
「そうだった……。なんで忘れてたんだろう」
そう言って、グロルは我が輩を殺さんばかりに睨みつけた。
「お前は仲間なんかじゃねえ。親の仇だ!」
「どうして」とコレールが困惑している。
我が輩には理由がわかっていた。
グロルはラウネンの魔法で偽の記憶を植え付けられたのだ。
ボースハイトのように!
「貴様、何処まで我が輩を怒らせれば気が済むのだ」
「キミを一度怒らせたら終わりだからね。なら、とことんまで怒らせるしかないじゃーんっ!」




