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魔王自ら勇者を育成してやろう!  作者: フオツグ
第三部 決着をつけてやろう!
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計画に気づいてやろう!

「あのじーさんが言うにはここらにブジャルドなんてねえらしいが、これからどうすんだよ!?」

「フラットリーのことも、知らないみたいだったな……」


 まあ、この時代を生きていた我が輩も知らないくらいだ。

 かなり狭い範囲で活動していたに違いない。


「お、おかしいよな。フラットリーが魔法を与えたのなら、魔法を使えるお爺さんが、知らないはずがない」

「そうそう! しかも、聞いてた話と全然違うし! メプリが魔王じゃねえってどういうことだよ!?【剿滅(そうめつ)の魔王】って何だよ!? フラットリーって信じちゃダメなん奴なんじゃねえのか!?」


 やっと気づいたか……。

 フラットリーが人間達に魔法を教えたのは嘘。

 魔王がルザ又はメプリなのも嘘。

 ブジャルドが聖地なのも嘘。

 ここまで来ると、もうフラットリーの存在自体が嘘なのではないかと思うくらいだ……。


「……嘘?」


 ふと、我が輩の頭にとある考えが過ぎった。

 転生し、ボースハイトの体を奪ったフラットリー。

 奴を見るに、千年前でも十分通用する魔法の使い手だった。

 あんな逸材を千年前の我が輩が見逃すだろうか。

 ……否、あり得ない。

 フラットリーが突然、この世界に現れたりしない限り……。


「……おい。ラウネンは何処だ」


 我が輩はコレールとグロルにそう問う。

 二人はハッとして、周囲を見渡した。


「あ、あれ? そういえば、いない……!?」

「じーさんに話しかけたときは確かにいたぜ!? 何処にいったんだ!?」


 しまった。


「嵌められた!」


 我が輩は憤慨し、地面を叩いた。

 その音が荒地に虚しく響く。

 我が輩の只事ではない様子に、コレールが心配そうな顔で我が輩に聞いた。


「ど、どういうことだ? ウィナ。嵌められたって……?」

「《《フラットリーなんて初めから存在してなかったのだ》》!」

「え!?」

「全てはラウネンの嘘だったのだ!」


 過去と未来を掌握する【掌握王】ラウネン。

 奴は時間操作や時空間操作だけでなく、人間に偽りの過去を植え付ける魔法も得意としている。

 ラウネンは人間達に偽の記憶を植え付けたのだ。

『フラットリーという偉人がいた』と。

 人間に魔法を与えた聖人、人間を救う救世主などと謳って。

 フラットリー教やフラットリー文書などを作って真実味を帯びさせ、人間達に信じ込ませた。

 フラットリーなど、存在すらしていないのに……。


「フラットリーがボースハイトの身体を乗っ取ったのは、転生なんてものではない……」


 ただ、ボースハイトの人格と記憶が、ラウネンに都合よく創られた人格と記憶に、上書きされたに過ぎなかったのだ。

 フラットリーが我が輩を知ってたのも、ラウネンがフラットリーの創造に関わっていたからだろう。

 ラウネンにとって、フラットリーを消そうとする我が輩は邪魔な存在だ。

 だから、ラウネンは我が輩を千年前に置き去りにした……。


「全て……。全てが……ラウネンの手の上……」


 我が輩は悔しさに、ぎりぎりと奥歯を鳴らした。


「つか、ラウネン様がいなくなっちまったら、どうやって元の時代に帰るんだよ!? 時を超えられる魔法を知ってる唯一の人だぞ!?」


 グロルが突然慌て出す。


「それに関しては問題ない。百年単位の《時空間移動》はそらで出来る」

「で、出来るのか……」


 コレールは困惑した。


「しかし、先程の《千年時空間移動》でかなりの魔力を使ってしまった。千年分超える魔力は今ない。だからといって、魔力が回復するまで待っていられない」


 ラウネンは時間魔法のエキスパート。

 我が輩を千年前に閉じ込めるぐらい造作もない。

 出来るだけ、我が輩が不在の時間は作ってはならない。


「じゃあ、どうするんだ……?」


 我が輩程の魔力を有している者から魔力を借りるしかない。

 例えば、四天王……。

 ラウネンは論外だ。

 あいつはこの時代の自分にも根回しを終えているだろう。

 ルザは我が輩程の魔力を有しているかわからない。

 最弱王という名は伊達ではないのだ。

 メプリとは話す前にコレールとグロルが殺される。

 千年後、ラウネンとの戦闘を考えると、蘇生する魔力を節約したい。

 そうすると、四天王最後の一角、クヴァールだけとなるが……。

 ……期待出来ない。

 あいつは、話すだけ無駄だろう。

 他に、我が輩程の魔力があり、この時代を生きる者はいるか……?


「……はは」


 我が輩は自分の思いつきに思わず笑ってしまった。

 ……条件に当てはまる者が一人いるではないか。


「【剿滅(そうめつ)の魔王》に魔力を借りる」

「は!?」


 千年前の我が輩ならば、《千年時空間移動》を楽々発動出来るだろう。

 千年前と言えば、勇者が来なくなり始めた頃だし、魔力は有り余っているはずだ。


「安心しろ。一度発動した魔方陣は忘れぬ」

「重要なのそこか!? 魔力が足りないんだよな!?」

「魔王の目の前で魔方陣を描いて、発動して貰う」

「いやいやいや! 発動して貰うって、どうやって頼むつもりだ!? 殺されて終わりだ!」

「問題ない。我が輩に策がある」


 我が輩を言いくるめる方法は、何より我が輩自身がよく知っている。


「では、いざ、魔王城へ」


 コレールとグロルの腕を掴み、グッと足に魔力を込める。

 そして、目的地の方角へ、高く跳び上がった。

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