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魔王自ら勇者を育成してやろう!  作者: フオツグ
第三部 決着をつけてやろう!

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王を脅してやろう!

 浮遊魔法でブレイヴ王国の上空を通過する。

 その最中、見覚えのある建物が見えた。

 勇者学院ブレイヴだ。

 そういえば、ボースハイト達と出会ったのはあそこだったな……。

 我が輩は首を横に振る。

 ……今は過去を懐かしんでいる場合ではない。

 目指すはブレイヴ王国の中心。

 ブレイヴ城だ。

 顔を進行方向に向けると、ブレイヴ城が見えて来ていた。

 やっと到着だ。

 飛んでる勢いそのまま、我が輩はブレイヴ城の壁にぶち当たる。

 石の壁が砕け、我が輩は城の内部へと侵入した。

 床に着地をし、足でスピードを落とした。


「ぎゃー!?」


 寝間着姿でベッドに横になっていたラウネンが、悲鳴を上げて飛び起きた。


「へっ!? 何っ!? 何なのっ!?」


 ラウネンは青い顔をする。

 前のように護衛騎士が我が輩の邪魔をすることはない、

 予め、この部屋に防音魔法を使っておいた。


「うぃ、ウィナー!」


 我が輩と共に壁をぶち抜いたコレールが声を荒げる。

 コレール達の実力では、我が輩の飛行スピードについて来れない。

 故に、我が輩は二人を引っ張って飛んだ。

 だが、少しスピードを上げ過ぎたか。

 へたり込んでいるコレールの横で、グロルが目を回している。

 コレールはフラフラしながら立ち上がると、我が輩にズカズカと近づいてきた。


「な、何やってるんだよ! 城に乗り込むなんて! 正気か!?

「正面から入れと? 討伐依頼が出されている者を城に入れるか?」

「ううー! 入れないだろうけど! これ、マズいって!」

「何をそんなに怯える必要があるのだ。自分の城に乗り込まれた訳でもあるまいに」


 コレールがぎゃあぎゃあ文句を言ってる間、視界の端で、ラウネンが動いているのを我が輩は見逃さなかった。

 ラウネンはベッドから這い出し、扉の方に向かいながら叫ぶ。


「だ、誰か来てー! 侵入者だよ──ぐむっ!?」


 すかさず、《転移》魔法でラウネンの背後を取る。

 そして、口の中に手を入れて言葉を奪った。


「静かにしろ。殺されたくなくば、我が輩に従え」

「それ、悪者の台詞だよ! も、もっと穏便にして!」

「穏便にしている余裕はない。ラウネン、《時空間移動》の魔方陣は何処にある」


 ラウネンの元に来た目的はそれだ。

 時空を超える魔法。

 ラウネンは四天王の一角、未来と過去を掌握する【掌握王】でもある。

 時空を超える魔法はお手の物だ。


「さあ、言え」

「あががががが!」

「……ああ。このままでは話せないな」


 ラウネンの口から手を引き抜くと、ラウネンは呼吸を整えずに話し出した。


「じ、《時空間移動》? 魔方陣が必要ってことは百年移動するってことっ?」

「たった百年ならば貴様の手なぞ借りぬ」

「だよねだよねっ? 一体、何年移動するつもりっ? 二百年? 五百年?」

「千年だ」

「千年!?」


 驚くのも無理はない。

 百年の《時空間移動》の魔法は何千年も前にラウネンが完成させているが、千年というのは前例がない。


 そもそも、百年の《時空間移動》を十回繰り返せば千年の《時空間移動》は出来るのだ。

 問題は、小分けにすればする程、タイムラグが生まれてしまうこと。

 未来に行こうとすれば目的の時間より未来にずれ、過去に行こうとすれば目的の時間より未来にずれる。

 それを考慮しても、千年《時空間移動》の魔法は必要ないという意見が圧倒的に多く、現在開発はされていない。

 だが、我が輩は知っている。


「千年もの時を超える《時空間移動》の魔方陣。貴様ならば完成させているはずだ」


 □


「もーっ! 暴力で訴えれば何でも通ると思わないでよねっ!」


 そうぶつくさ言いながらラウネンは先頭を歩き、魔法陣がある場所へと向かう。


「陛下ってこんなキャラだったっけ……?」


 コレールがラウネンを見ながら首を捻った。


「人前ではキャラ作ってんだろ。俺みたいに」


 グロルは堂々として言う。


「グロルは、キャラ作らなくて、良いのか?」

「城に侵入した時点でキャラとか関係なくねえか?」

「そ、そうか……」

「ってか、ウィナさんよお。千年も時を超えるなんて一体何するつもりだよ? いい加減教えてくれたって良いよな」

「そうだな。それにはまず、ボースがフラットリーに乗っ取られた理由から話さねばならない。ボースがフラットリーに乗っ取られたのは転生魔法を使ったからだ。千年前にな」


 千年前からフラットリーの魂がボースハイトの身体に送られてくる。

 それは千年前から決まっていることであり、今ここの時代にいる我が輩達には防ぎようもないこと。


「ならば、我が輩達が千年前に行き、フラットリーがボースに転生する魔法を使うのを止めるしかない」


 それが、ボースハイトを取り戻す唯一の方法だ。


「──はい、着いたっ。この扉の先にお目当ての魔法陣があるよっ」


 階段を下りに下って辿り着いた先には、木で出来た扉がぽつんとあった。

 扉を開けると、床に魔法陣が描かれた空間が広がっていた。

 よくよく見渡せば、壁や柱、天井にまで魔方陣が描かれている。

 このフロアそのものが巨大な魔方陣になっているようだ。


「さあ、どうぞ使って下さいなっ。発動出来たらだけどっ。にゃぱぱっ!」

「どういう意味だ」

「この魔方陣、作ったのは良いけど、魔力が足りなくて発動出来ないんだよっ」


 発動には大量の魔力が必要になるのか。

 魔法は魔力の流れが重要である。

 魔方陣は複雑な魔力の流れを視覚化し、且つ魔力の流れを補助する意味がある。

 手本の文字をなぞる感じだ。

 この広大な魔方陣をなぞるために、大量の魔力が必要なのは見ただけでわかる。


「まだ発動したことがないから、何が起こっても責任は取れないよっ? それでも発動するっ?」

「もう発動してしまった」

「は?」


 発動した魔法陣が光を放つ。

 その眩い光がラウネンの呆けた顔を照らしていた。


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