喧嘩を見守ってやろう!
ゾンビフラットリーはボースハイトの機転により、何とか倒すことが出来た。
地上で即死魔法の恐怖を与えていた奴がいなくなり、地面に降りられるようになった。
コレールは地面に背中から着地する。
それを見て、ゾンビの残党はわらわらとコレールに集まってくる。
コレールは一つ深呼吸をした後、体を起こして、ゾンビの足を薙ぎ払った。
ゾンビ達が怯んだ隙に立ち上がり、ゾンビの残党を倒し始める。
地に足が着くと一気に頼もしくなる。
ゾンビをコレールに任せて、グロルとバレットがボースハイトに駆け寄る。
「無事で良かった、ボース──」
「お前、僕のこと殺す気!?」
ボースハイトがグロルに掴みかかった。
「魔力切れたら空飛べなくなって即死だよ!? 危うく死ぬところだった! ウィナが回復してくれたから良かったものの!」
「わ、悪かったって。無事だったから良かったじゃねえか」
「無事? 無事じゃ済まなかったら何て言ってたの?『悪かった』で済ませるつもりだったの?」
「こっちもこっちで大変だったんだよ」
「死ぬこと以外に大変なことって何?」
「こっちも死にそうだったんだよ! コレールが!」
「はあ? こっちは即死魔法の相手をしてたんだけど!? グロルは前線に立ってないから、即死の恐怖なんてわかんないんだろうけどさあ!」
「死の恐怖ぐらいわかってるっつうの!」
グロルが言い返したことで、ボースハイトはますますヒートアップする。
「色恋なんかにかまけてるから、いけないんじゃないの?」
この一言でグロルの顔がこわばった。
「こっちは命懸けでやってるってのにそっちはデート気分? ふざけた話だよ、全くさあ!」
「ぼ、ボース! ストップ!」
そのとき、ゾンビを片付けたコレールが駆けつけた。
コレールがボースハイトを止めに入るが、ボースハイトは止まらない。
「なんで僕が止められるの? 悪いのはグロルだろ。全く、あんな胸だけの女、何処が良いんだか……」
ボースハイトがそう言い終わる前に、グロルはボースハイトに掴みかかった。
「俺が誰を好きになろうと勝手だろうが!」
「はあ? 逆ギレ?」
「俺のことはいくらでも言って良い。でもな、バレット先生のことを悪く言うのは許せねえ!」
我が輩は頭の上にはてなを浮かべる。
「バレット……? なんでここでバレットの名が出るんだ?」
「ウィナ……本当に気づいてないのか?」
コレールが半ば呆れた顔をした。
「ハッ!? もしかして、グロルはバレットが『好き』なのか!?」
確かに、バレットが絡むと、グロルは赤くなったり、変な動きしてたり、変な声を上げたりしていた。
「まさか、あれが『好き』……?」
誰かを『好き』になるとあんな風に変になってしまうのか?
ならば、我が輩は誰も好きになりたくない。
「大体なあ! お前が自分の魔力を管理してねえのが悪いんだよ! 自分の命は自分が守れよ!」
「いつもお前の前に立って、盾になってんの誰だと思ってんの!?」
「コレールだろ! お前じゃねえ!」
「はあああ!?」
二人の口論は止まらない。
コレールは二人の顔を交互に見た後、涙目で我が輩達を見る。
「ウィナ……。バレット先生……」
助けを求められても、我が輩にはどうにも出来ない。
「これは二人の問題だ。第三者が割って入って解決するものではない」
「で、でも、二人は今、頭に血が、上ってるんだ。冷静な判断が、出来ない。だから、冷静な俺達が、何とかしないと……」
「冷静な判断が出来ないなら尚更、我が輩達が割って入っても無意味だろう」
あと、今のコレールは冷静に見えない。
「もうやってらんない」
ボースハイトがそう言い放ち、《浮遊》で宙に浮いた。
そして、我が輩達から離れていく。
慌ててコレールが叫ぶ。
「ど、何処に行くんだ、ボース!?」
「僕はパーティを抜ける」
「え!?」
ボースハイトはグロルを見て「あはは」と笑った。
「これからは気楽な一人旅だ。お荷物がいなくなって、清々するよ!」
「こっちの台詞だ!」
二人はフン、と顔を背け合った。
コレールは飛んでいくボースハイトを追いかけようと、そっと宙に浮いた。
しかし、直ぐに逆さになってしまう。
じたばたと手足を動かして、どうにか頭を上にしようともがく。
が、直ぐに背中から地面に着地する。
「追いかけよう! グロル!」
飛んで追いかけるの諦めたな……。
「ほっとけよ! あんな奴!」
「ほっとけないよ! ここで、ボースを追いかけなかったら、一生仲直り出来ないかも……」
「仲直りなんてしなくて良いし!」
「そ、そんなこと、本気で思ってないだろ……!」
コレールがボースハイトの飛んでいった先を見る。
ボースハイトの姿がかろうじて見えた。
「ウィナ、バレット先生、グロルを任せます。俺は、ボースを、追いかけます」
「コレールはボースの味方すんのかよ!」
「そ、そうじゃないよ……! ボース、ほっといたら、悪さするかもしれないから、見張らないと……」
グロルはハッとする。
「確かに……そうだな。一人にしたら悪さするかもしんねーな、あいつ……」
そう一人でぶつぶつと呟いた後、ため息をついた。
「仕方ねえ。俺も追いかけてやる」
「グロル……」
コレールは安心したような顔をして見せた。
ボースハイトの姿はもう見えなくなっていた。




