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魔王自ら勇者を育成してやろう!  作者: フオツグ
第二部 冒険者になってやろう!

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目的地を決めてやろう!

「これから何処に向かいましょうか」


 グロルはそう言って、眉を下げて笑った。

 行く宛のない旅だ。

 何処に行こうと我が輩達の自由。

 ……ではあるが、流石に目的もなく歩くのは難しい。


「そうだな……」


 と言いながら、我が輩は考えてみる。

 行きたい場所などパッと思いつかなかった。

 そもそも、我が輩は最近まで魔王城に引きこもっていた。

 何処に何があるかすら知らないのだ。

 行きたい場所など、思いつくはずもなかった。


「ま、魔王メプリを、討ちに行こう」


 そう言ったのはコレールである。

 魔王メプリを倒せるなら倒して貰いたい。

 そして、ゆくゆくは真の魔王である我が輩を倒しに来て欲しい。

 だが、今のコレール達ではメプリを倒すことなど、夢のまた夢だ。

 ルザは四天王の中で最弱である【最弱王】だった。

 だから、コレール達でも倒せたのだ。

 しかし、正当なる四天王の一角である【生殺王】メプリは倒せない。

 それどころか、対峙する前に瞬殺されるだろう。

 メプリを倒せるまで成長してからなら構わないが、今直ぐにメプリを倒しに行くとなれば止めなくては……。

 ボースハイトは長いため息をついた。


「まさかお前、魔王メプリさえいなくなれば国に帰れると思ってるの? たったそれだけの覚悟で国を出たなら、今すぐ国に帰りなよ」

「え、帰れないのか?」


 我が輩がそう聞くと、ボースハイトは呆れた顔をした。


「当たり前だろ。僕達が『魔王を倒した』と言ったせいで、犠牲者が出た。その責任は取らないといけない」


 魔王メプリを倒せなかったことの責任ではなく、犠牲が出てしまったことの責任。

 それなら、のこのこ帰れないだろう。

 犠牲が出た事実は変えられない。


「そんなこと、わかってるよ。ただ、本当の魔王を討てば、悲しむ人が少なくなると、思ったんだ」

「くすくす。勇者の子孫様は考えも立派だねえ」

「では、コレール様は何処に向かいたいですか?」


 グロルが尋ねると、コレールはバツが悪そうに視線を逸らした。


「か、考えてない……」

「はあ?」


 グロルは笑顔のまま、ドスの効いた声で言った。

 コレールはびくり、と肩を飛び上がらせた。


「た、旅をしていれば、俺達は強くなると思う。だから、当面の間は魔物を倒すのが、目的になるのかな……」


 コレールはところどころ区切りながらも、いつもより早口で弁明する。

「そうですか」とグロルがいつも通りのケットシー被りの声で言うと、コレールはほっとした。


「しかし、困りました。行き先が決まりませんね。ボース……ハイト様、何処かおすすめの場所はありませんか?」

「この先の町にあるカフェがおすすめ。絶品スイーツがあるんだ」


 ボースハイトがスイーツを思い浮かべてうっとりとした顔をして、溢れ出るよだれを啜った。

 そんな顔をするほど美味しいスイーツがあるのなら、一度食べてみたいものだ。


「グルメ旅ですか。それも楽しそうですね!」


 グロルの良い反応にボースハイトは微笑んだ。


「でしょ」

「だ、ダメだ!」


 コレールが二人にストップをかける。


「グルメ旅はお金がかかる! お金には、限りがある! ま、万が一のために、出来るだけ、使わないようにしよう!」

「旅してたら今ある金なんて直ぐなくなるよ」

「そ、それは、そうかも、しれないけど……」


 ボースハイトが深くため息をつき、コレールの方を向く。


「文句言うならお前が何処行くか決めろよ」

「ぶ、ブレイヴ王国から、出たことないんだから、何処に行きたいとか、わからない……」


 コレールはメプリを倒したい。

 そのためには修行をしたい。

 ボースハイトはグルメ旅がしたい。

 しかし、金はなるべく使いたくない。


「平行線だな。一体どうしたものか……」


 我が輩はバレットに目を向ける。

 バレットは我が輩の意図を察し、スッと前に出た。


「でしたら、冒険者になったらどうですかな?」

「話を聞いてなかったのか。我が輩達は何処に行こうかという話をしていたのだぞ」

「ですから、冒険者になることを提案します。冒険者は、人々から出された様々な依頼をこなすことで、報酬が得られます」

「報酬……」

「平たく言えば、お金ですな」


 バレットは親指と人差し指で丸を作る。


「依頼の中には魔物討伐もありますから、修行にもなるでしょう。コレールくんの修行、ボースハイトくんのグルメ旅の資金集め、どちらの目的も果たせますな」


 ボースハイトが希望するグルメ旅の金銭問題が解決し、コレールの【生殺王】メプリを倒すための修行も兼ねられる。


「素晴らしい案だ」


 我が輩は頷いた。


「では、冒険者になってやろうではないか」

「で、でも、俺達、討伐依頼が出されてるんだぞ。そもそも、冒険者の登録が、出来ないんじゃないか?」

「元いた国は出たぞ?」

「と、討伐依頼は、世界中に出されてる。国を出たのは、国内ほど顔が知れ渡ってないと、思ったからなんだよ。で、でも、ちゃ、ちゃんと確認されたら、冒険者の登録どころか、その場で討伐されるかも……」

「つまり、面が割れているから登録出来ないと。それを解決出来れば冒険者になれるのだな?」

「え? まあ、そう、なる、かな」

「では、我が輩が何とかしてやろう」


 我が輩はどん、と胸を叩いた。

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