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魔王自ら勇者を育成してやろう!  作者: フオツグ
第一部 勇者学院に潜入してやろう!

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17/56

先生に怒られてやろう!

 レックレス達は保健室に運ばれた。

 決闘後、奴らの怪我はグロルが《回復》してやったのだが、何故か運ばれていった。

 ボースハイト曰く、「彼らは心の傷を負ってしまった」らしい。

 心って傷つくものなんだな。

 一方、我が輩達はというと、職員室に呼び出された。


「何か言い訳はありますかな?」


 職員室に到着すると、バレットが腕を組んで待ち構えていた。

 呼び出された理由はおそらく、レックレス達との決闘の件だろう。

 我が輩はため息交じりに応える。


「突っかかってきたのはあいつらだぞ」

「『やり過ぎ』という言葉はご存じですかな?」


 我が輩はボースハイト達に「手加減しろ」と確かに言った。

 怒られる謂われはない。


「我が輩は何もやってないぞ」

「ウィナくんが焚き付けたと聞きましたがな?」


 隣でグロルとボースハイトがうんうんと頷いている。

 裏切りおって……。

 我が輩はちらりと、頷かなかった一人に目を向ける。

 コレールだ。

 コレールの顔色は真っ青だった。


「お、俺が、大怪我をさせてしまったのは、事実です。ば、罰なら受けます。すみませんでした」


 コレールが深く頭を下げた。


「む……。反省しているなら良いのですがな……」


 バレットがちら、と我が輩達の方を見る。

「反省してる」と我が輩達に言わせたいのだろう。

 今のバレットは教師、我が輩は生徒だ。

 仕方ない。

 ここは口だけでも反省してやるか。


「反省してやろう」

「反省してまーす」

「反省しております」


 我が輩とボースハイトとグロルが示し合わせたかのように言う

 バレットは大きくため息をついた。


「……次は気をつけて下さいな」


 バレットの説教はこれで終わりのようだ。

 教室に行くかと踵を返したそのとき、バタバタと音を立てながら職員室に人間が駆け込んできた。


「た、大変です!」


 職員室内の全員の視線が、その教師に集まる。


「魔王が……魔王が現れました!」

「ほう……魔王が」


 それは大変だ。

 学院が火の海にならなければ良いが……。

 ……って、魔王は我が輩ではないか!

 我が輩が現れたとはどういうことだ。

 ここ数日、我が輩はティムバーの森で経験値稼ぎをしていたのだが?


「落ち着いて下さいな。魔王は一体何処に現れたのです?」

「ブレイヴ王国の端にある〝サクリ村〟です!」

「サクリ村が……!?」


 グロルがサッと顔を青くする。


「何? グロル。知り合いでもいるの?」


 ボースハイトが尋ねると、グロルは震える声で言った。


「サクリ村は……私の故郷です」


 □


 教師達は廊下を慌ただしく走り回っている。

 生徒達は自身のクラスの教室に待機していた。

 暫く待っていると、バレットが教室に現れ、教卓に立つ。


「先程、魔王がサクリ村を襲ったと連絡がありました。これから救助、救命に向かいますな」


 クラスメイト達はざわめいた。

 一部の者は恐怖を感じ、また一部の者は好奇心にかられた。

 そして、一部の者は野次を飛ばした。


「なんで俺達が……」

「魔族に襲われた人達を助けるのも勇者の使命ですな」


 バレット曰く、魔王が襲われた町村に人材を派遣するのも勇者学院の仕事らしい。

 最近は魔王が現れなかったため、こんな事態になるのは数十年ぶりになると言う。

 まあ我が輩、四百年は暴れていないしな……。

 むしろ数十年前に現れた魔王誰だよ。


「それって結局ボランティアでしょ? 僕達にメリットはないよね?」


 ボースハイトがそう言うと、それに同意する者達がちらほら現れる。


「自分達には関係ない」

「そんなことより授業をしてくれ」

「面倒だ」


 などなど。

 それらを聞いて、バレットが唸った。

 三科を無理矢理統合した弊害か、元からこのクラスに団結力はない。

 サクリ村への遠征に行かない者は出て来るだろう。

 グロルが音を立てて立ち上がる。


「お願いします。サクリ村を助けて下さい」


 教室内がしん、と静まりかえる。

 グロルはクラスメイト達の方を向き、膝をついた。


「サクリ村は私の故郷なのです。サクリ村の人達は孤児だった私を受け入れ、ここまで育ててくれました。今私がここにあるのは、サクリ村の人達のおかげです」


 グロルは目尻に涙をにじませる。


「しかし、サクリ村の人達は今こうしている間にも苦しんでいます。お願いします! 皆様! サクリ村を。私の故郷を! 助けて下さいませ!」


 そう言って、グロルはクラスメイト達に願った。

 ……こんなに必死なグロルは初めてだ。

 グロルは狡猾な男だ。

 自分の得のために、うさんくさいと知っているフラットリー教に身を置くくらいには。

 損得抜きにこんなことが出来るとは思わなかった。

 故郷というのはそれほど守りたいものなのか。

 ……我が輩には故郷などないから、わからないな。


「……一時間後、サクリ村へ出発しますな。行きたい者だけ校庭に集まって下さいな」


 バレットはそれだけ言うと教室を出た。


 □


 校庭には生徒達が集まっていた。

 皆、サクリ村へ救援に向かう有志達だ。

 我が輩もその一人。


「うぃ、ウィナも来たんだな」


 コレールが我が輩に近づいてくる。


「ああ、グロルの故郷とやらを一目見に行たくてな」


 グロルが頭を下げるほどの価値がある村だ。

 興味がある。

 コレールは集まった生徒達を見回す。


「み、みんな、結構来てるな」


 グロルの呼びかけのおかげか、僧侶の姿が多く見える。

 戦士もそこそこいるようだ。 

 だが、魔法使いの帽子はあまり見えない。


「ウィナ様! コレール様! 来て下さったんですね!」


 僧侶達と一緒にいたグロルが駆け寄ってくる。


「ウィナ様まで来てくれるなんて思いませんでした。魔法使いは来てくれないようなので……」

「何故、魔法使いは来ないのだ?」


 グロルが言葉を詰まらせる。


「魔法使いはどの職業の奴よりも損得勘定で動くからね」


 我が輩とグロルの間にボースハイトが割って入った。

 グロルはそれに飛び上がって、数歩後ずさりした。


「人間から魔族扱いされてる奴が人間を助けると思う? どうせ行っても、罵詈雑言を浴びせられるだけだ。僕達はそれが一番わかっている」


 ボースハイトはくすくすと笑う。


「じゃ、じゃあ、お前は、何しに来たんだよ」


 ボースハイトはコレールにニッコリと笑いかけた。


「魔王に襲われて惨めになった奴らを見て笑うため」

「お、お前なあ……」


 コレールは呆れた声を出す。

 グロルは首を横に振った。


「いえ、来てくれるだけで心強いですよ。ありがとうございます」


 ボースハイトはすっと笑みを消した。


「別に。お前のためじゃない」


 そう言うと、ボースハイトは我が輩達から離れていった。

 あいつは一体、何を言いたかったんだ。


 暫くして、バレットの号令がかかり、我が輩達はサクリ村へと出発した。

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