替え玉
こんにちは。今回はちょっと尻切れ蜻蛉みたいになりました。原稿用紙十枚分です。
秋風が吹くと、木の葉を舞い散らせる。
季節でいうと神無月。つまりは十月。
この頃には全国の神様が出雲大社に集まるから神々がいなくなるという意味で神無月なのだ。国語で少しは習ったけど、まさか神様が全員いなくなるなんて思いもしなかった。
そのちょうど真ん中あたりの中間テスト前。
二年一組の教室で国語の授業を受けるオレ。
宮下公一、十七歳。
オレには妹がいる。
宮下恵理、十七歳。
つまり性別は違うけど、双子ってわけ。
顔も髪型もオレと同じだし、胸だってないから、制服さえ変えればどっちか同級生ですら見分けがつかない。
だからたまにやってるんだ、替え玉。
つまりはオレはアタシで、アタシはオレ。
ややこしい?
そりゃそうだわな、オレだってわけわからないときがあるからな。
こっからは恵理にバトンタッチな。
え? お兄ちゃん、てか、アタシ?
えっと、アタシ、恵理ってのはお兄ちゃんから聞いたよね?
どっから話せばいいのか、とりあえずお兄ちゃんより先に自己紹介しておくね。
アタシは大阪の稲葉台高校の英語科の二年二組。
お兄ちゃんも英語科でアタシの教室の斜め。
さっきもお兄ちゃんが言ったと思うけど、アタシ、たまにお兄ちゃんと制服交換して入れ替わってる。
先生も友だちも気づかない。
だって、アタシ、ちっさいときからこんなことしょっちゅうやってきたから、アタシが男っぽい性格でお兄ちゃんがちょっとナヨってるから、本当にどっちが男で女かわからないんだ。
それにアタシだって、普段はオレって言ってる、これ言うと余計にわかりにくいね。
でも事実なんだ。お兄ちゃんがエッチだってことも知ってるから、だからプールの着替えのときなんかはお兄ちゃんと変わってあげるんだ。
でも、お兄ちゃんも言っても男だから、下までは隠せないのね。
いつも一人で着替えて、更衣室にいってる。
アタシは男の体になんか興味ないから別に見ないんだけど。
お兄ちゃん言ってた。
山岸さんのおっぱいが一番キレイだって。
そんなことアタシに言われたって。
そりゃ、アタシはAもないかもしれないからさ、見栄はってBのブラつけてんだけど、、、ってお兄ちゃん、いつまでアタシが自己紹介しないといけないの?
あ、あっちでゲームしてる。
どうせまたマリオカートでしょ。
ピーチ姫じゃ絶対勝てないって、クッパにしときなよ、っていっつも言うんだけど、聞かないんだよね。
で、続き、アタシ、得意な教科は英語、逆に苦手な教科は体育。
だから、お兄ちゃんと入れ替わってるから、アタシもお兄ちゃんも英語と体育だけはバッチリ。
英語科は二クラスって話はしたと思うんだけど、英語科でも成績上位がアタシの二組で一組は下のクラス。
だから、中間の英語のテストは別の時間だから、お兄ちゃんと入れ替わってる。
二人とも、なんとか推薦で外国語関連の大学には行けそう。
でも、お兄ちゃん、英語全然ダメなんだけどね。
それでもなんとか三年までには外国語関連の大学に行きたいな。
お兄ちゃん、アタシの自己紹介終わったよー。
ゴメン、ゴメン、オレな、オレ、公一のほうな。オレは実は、ま、恵理もそうなんだけど、好きな人がいるんだ。
美雪ってコなんだけど、恵理の親友。
で、恵理の好きな人は直樹っていうこれまたオレの親友。
これって意味わかるよな?
つまりオレが恵理と入れ替わることで、二人っきりで過ごせるってわけ。
もちろん向こうは気づいてないから完全直樹はオレのことオレだと思ってるし、美雪は恵理だと思っててまさかオレだとは思ってない。
でも先に言っておくと、この恋は実らない。
いや、今の段階ではね。
どういうことかっていうと、美雪は直樹が好きで、直樹は美雪が好き。
つまりオレも恵理も相談相手ってわけ。
それが妙に悔しくて。
でも、好きな美雪と一緒にいられるならそれでもいいと思って。
恵理も辛いと思うんだけど、やっぱり好きな人と一緒にいられるのは悪くはない。
ただ、もうオレも美雪から散々直樹のことは聞かされてうんざりなんだけど。
あ、もう学校行く時間だから行くよ。
とりあえず美雪と直樹の話を通学途中にしたいんだけど、十分ほどだからいい?
ってオレ誰に聞いてんだろ。
直樹は原付の免許取り立ての同クラの人気ものだが、一風変わり者だ。
なんせ剣道の授業で先生に「五十回素振りしていろ」と言われて、先生がそのまま教官室まで帰ってしまった。
それで「五十回」を「五十分」と勘違いして、延々と五十分素振りをしてたってんだから、そのドジっぷりってありゃしない。
直樹のいいところは悪いとすぐに謝るところだな。
こっちが悪くても向こうから謝るから、こっちはこれ以上きつく言えなくて。
だから直樹がいるとクラスが一つにまとまるんだ。
そんな直樹を美雪が好きな理由、なんとなくわかるな。
オレだって女だったら惚れるよ、てか、妹の恵理は実際に惚れてんだけどね。
直樹の隣の席に座ってるのが秋山さん。
無口の色白。
まんまるとふっくらした体型で、デブではないんだけど、ちょいぽちゃ。
でもちょっと胸のふくらみが他の女子と違って、あるから、ちょいポチャなんだけど男子からはすごい人気。
直樹の親友は井上。
井上はメガネの直樹とは違ってコンタクトをしている。
普段からメガネかけてないからたまにかけてくると、お前、目、悪かったっけ? ってつい思ってしまう。
顔は関根勉を若くした感じ。
井上は一番の持ち味はきつい泉州弁。
「われのや、一番近い駅ってや、どこけ?」と聞いてきたときは、一瞬チンピラに絡まれたような気分だった。
オレのクラスには三人の山田がいる。
実は名字に山のつくやつがもう一人いて、山根っていうんだけど、そいつら四人の山ということで「フォー・マウンテン」て言われてるんだ。
それぞれ細かく言うと、山田一、通称ヤマイチ。
山田伸彦、のぶちゃん。
山田久志、きゅうちゃん。
そして最後の山根は音読みで「サンコン」って言われてる。
で、その「フォー・マウンテン」だけど、ヤマイチはイマイチ。
いや、これシャレじゃなくてマジで。
野球部なんだけど、甲子園目指して本気でやってるんだけど、レギュラーどころかベンチ入りも厳しいぐらい、まったくもって野球らしい野球ができてない。
のぶちゃんは大人しくてあんまりしゃべったことない。
きゅうちゃんは、駅に隣接された自転車置き場からの登下校をともにする仲だ。
きゅうちゃんは宏美のことが好きだ。
サンコンは根はいいやつなんだけど、細いあの人を疑うような目がどこか窮屈だ。
でも憎めない、後輩の面倒見のいいところは、やっぱり中学時代に生徒会長をやっていたからだろうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。また次回、お会いしましょう。




