ハイスクール・バイスクル
今回はちょっと箸休めで、原稿用紙3枚の超短編です。練習です。
溢れる好奇心と不安な気持ち。入学式の朝は雨だった。本降りの雨ではなく、しとしとと降るほうがかえっていやらしかった。雨の日にと半ば強制的に買わされたクラリーノの靴は、この日のためのようなもので、それ以後履いていった覚えはない。買いたてのウォークマンからはジッタリンジンの『プレゼント』が流れていた。
駅では同じ高校に通うことになった滝沢が僕と同じ制服を着て凜々しく立っていた。鉤ホックの制服は昔の海軍の制服をモチーフにしたもので、僕はこの制服が好きだった。滝沢の横には別の高校に通う同級生がいた。右肩が沈んでいたのと、真新しい制服の肩食い込む鞄でできたよれた皺から相当重い鞄を持ってきたのが見て取れた。
「なんやねん、村上、お前、入学式早々そんな重たそうな鞄持って」
思わず僕は村上の肩を人差し指でつついた。
「今日から、いきなり授業があるねん。しかも6時間。やっぱりシンガッコウやわ」
村上が少し胸を張ってイキる。
「なんか、嫌味やな。んで、1時間目は何やねん」
真顔で滝沢が村上の重そうな鞄を借りて持ち上げる。
「宗教」
村上が真顔で答える。
「で、2時間目は?」
滝沢は少し不思議そうに首を傾げて訊く。
「宗教」
村上が滝沢から鞄を取り返して、面倒臭そうに答える。
「なんやねん、それ」
僕と滝沢がほぼ同時に突っ込む。
「だから、神学校って言ったやん。神の」
「そっちか!」
僕と滝沢が同時に突っ込んだところでホームに電車がはいってきた。
7時台の電車はサラリーマンやOLらしき通勤客と、少し遠い学校に通う中高生が入り交じっている。
いつもお読みいただきありがとうございます。