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管理官アラタの異世界間仲介管理業務  作者: 紅咲 いつか
一章 管理官アラタの異世界転生仲介業務

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File3-20「オギナの領域」

 オギナの短剣が振り下ろされる。

 カダンは手にした剣であっさり防ぐと、両者は睨み合った。

 オギナは短剣に全体重をかける。それでもカダンの剣はびくともしなかった。

 カダンは余裕の笑みを浮かべている。

「お仲間が心配をしている場合か? お前もそろそろ体力も尽きてきたようだが」

「ぐっ……」

 カダンの指摘に、オギナは唇を引き結ぶ。

 オギナの視界の端で、ジツは剣を振るってカトラの弾丸をはじく。しかしその身体に傷が目立ち始めた。致命傷は避けるものの、二の腕や腿の辺りに二発ほど弾丸が掠めた。

 ジツの顔が大きく歪む。

「どうした、飛び級? 随分と苦しそうだ」

 カトラは上機嫌な様子でジツをいたぶっている。

 弾丸を避ける際、ジツの足がもつれて床に転がった。

「くそっ……飛び道具だなんて卑怯ですよ!」

 荒い息をつきながら、ジツが悔しそうに言い放った。

 カトラが嘲笑する。

「馬鹿か? 殺し合いの場に、卑怯も何もない! 悔しかったらお前も己の得意武器でかかってくるがいい!」

 カトラの言葉に、オギナの口元がにぃっと笑みを浮かべた。

 カダンが眉根を寄せる。

「なら、お言葉に甘えさせていただきましょう!」

「っ!? 何をっ?」

 オギナはカダンの剣をはじくと、大きく背後へ跳んだ。

「ジツ、魔法陣を起動させて!」

 オギナの指示に、ジツの行動は迅速だった。

 ジツはあっさり剣を手放すと、魔法陣の外へと転がり出た。

 そのまま両手を床に刻まれた魔法陣に触れる。

「起動!」

 ジツの魔力を受け、足元の魔法陣が光った。

 オギナとカダン、カトラの三人の身体が浮き上がる。

「おぉっ!?」

「くっ、何をするつもりだ!」

 一気に三十階ほどの高度まで上昇したカダンとカトラは、浮いている護送車の屋根を掴んだ。そのまま護送車の上に着地する。

「くそっ、小賢しい!」

 カトラが離れた護送車に着地したオギナに銃口を向け、発砲した。放たれた弾丸はオギナの後ろ髪を掠める。オギナが振り返った。

 カトラの目の前で、銃を構えていた右手が吹き飛ぶ。

「ひっ……」

 カトラが改めて自分の右手を見下した。

 手首から先がなくなっていた。

「うぎゃあぁああぁっ!!」

 右手を抱え込むようにして、カトラが痛みに悶える。

 オギナの手には、弓が握られていた。一メートルほどの一般的な半弓で、握り手の僅か上に宝珠が埋め込まれている。魔力を矢として放つ武器だ。

「ああ……やっぱり(こっち)の方が手に馴染む」

 振り向き様にカトラの右手を吹き飛ばしたオギナは、穏やかな表情で手にした弓を構えた。魔力を込めれば、すぐさま光の矢が形成される。

 その鏃の先を、カダンへ向けた。

「くそっ、射手か」

「卑怯とは仰らないでくださいね。何せ、殺し合いの場では得意な武器で戦ってよいのでしょう?」

 オギナは不敵な笑みを浮かべた。

「私は決して外しませんので、ご安心を」

 カダンがすぐさま護送車の上を駆け、隣の護送車へ跳び移る。そうしてオギナの矢から逃れようとした。オギナの鋭い目が、カダンの動きを追う。

「遅い」

 オギナの弓から、矢が離れる。オギナの放った矢が、カダンの右足の腱を貫いた。

「ぐっ、がぁっ……」

 カダンが護送車の上でドッと倒れ伏す。どうにか身を起こすものの、剣を杖替わりにしている有様だ。

「たかだか手や足をやられたくらいで、大げさですよ。あなた方が遺棄した転生者たちはこれ以上の苦痛を強いられたのですから」

 オギナは無造作に弓の弦を引き、矢を放った。オギナの矢は腰を抜かして後じさりしていたカトラの足元に突き刺さる。

 ひぃっと情けない声を上げ、カトラの動きが止まった。

「いい気になるなよ、小僧っ!」

 カダンが剣を投げ捨てると、懐から何やら液体の入った小瓶を取り出した。

 それをすべて飲みほしたカダンの身体が小山のように盛り上がる。負傷した右足の腱も再生し、彼が纏っていた鎧のベルトが外れて弾け飛んだ。

狂戦士(バーサーカー)への変貌……違法薬物の使用とは、いよいよ持って救いようがありませんね」

 オギナが険しい顔で弓を構える。

 全身の筋肉が盛り上がり、一回りも体格が大きくなったカダンが護送車を蹴ってオギナへと迫った。

 オギナは護送車の天井を蹴った。突き出されたカダンの拳を避け、空中で体を捻る。弦を引くと、同時に三本の矢を生み出した。空中で逆さまの状態から矢を射た。不安定な体勢から放たれたにも関わらず、三本の矢はカダンの背、肩、左腕を貫通した。

 周囲に血をまき散らし、カダンの振り向き様に放たれた剛腕が空中のオギナを強襲する。

 オギナは自然落下するのに任せて、カダンの剛腕を避けた。空中でくるりと態勢を立て直し、下方に漂っていた護送車の上に着地する。

 オギナが頭上を仰ぎ見ると、白目を剥き、唇の間からよだれを垂らしているカダンがオギナを見下ろしていた。

 痛みを感じないのか、負傷した左腕を庇う素振りすら見せない。

 もはや、完全に理性を手放したようだ。

「残念です、カダン管理官」

 オギナが憐れむように目を細めた。

「そんな薬物に頼らずとも、あなたは十分強かった」

 オギナは静かな声音で呟くと、弓を構えた。

 護送車を蹴り、カダンの振り上げた拳がオギナへ迫る。オギナは弦を限界まで引いた。魔力で生み出された矢の先を、カダンの額に据える。


「終わりです」


 オギナの指先が、矢を離した。

 放たれた矢は狙い違わず、迫るカダンの額にのめり込む。

 カダンの頭が吹き飛んだ。

 重い音とともに、カダンの肉体がオギナの足元に転がる。

 薬の効果が切れ、膨張した筋肉が急激に縮小していく。薬の副作用が強すぎたようで、元に戻ったカダンの肉体は、一回り小さくなっていた。

 ボロボロと全身が崩れ、後には血に濡れた衣服の残骸だけが血だまりの中に浮いていた。

Copyright(C)Itsuka Kuresaki 2021

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