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管理官アラタの異世界間仲介管理業務  作者: 紅咲 いつか
一章 管理官アラタの異世界転生仲介業務

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File3-17「作戦」


「なら、さっそく作戦会議といこうか」


 オギナのその一言に、アラタとジツは彼を振り返った。

「オギナさん……止めないんですか?」

 呆気にとられた様子のジツに、アラタは小さくため息をついて腕を組んだ。

「正直、俺たちには荷が重いだろうなぁとは思うよ。けど、ぐずぐずしていたら今回の一件を引き起こした連中が証拠隠滅を図ろうとするじゃない?」


 それは、とても面白くないな。


 薄暗い会議室でもそれとわかる、鋭い目で相手を射殺すような笑みをオギナは浮かべていた。

 養成学校時代、この笑顔でどれだけの同級生を蹴落としてきたか。

 アラタはオギナという男の真の恐ろしさをその時に知ったものだ。それだけ、今回の一件にオギナも腹を立てているということだろう。

 平和的な解決を好むオギナが、ここまで好戦的になるのは久しぶりだ。

「オ、オギナさん……?」

「それじゃ、みんなの意見が一致したということで、話を続けようか」

 怯えた様子のジツに、オギナは普段通りの柔和な笑みを向ける。

「まず、連中の行動を阻止するためにも、カトラ管理官の行動を監視する必要がある。それはジツにお願いしようと思う。同じ部署だし、君は隠密魔法が得意だ」

「適任だな。ジツ、頼めるか?」

「は、はいっ! 任せください!」

 オギナとアラタに言われ、俄然やる気を見せるジツ。

 張り切った様子のジツを見て、アラタはとても不安になった。

「カトラ管理官が動いたら、俺たちも防衛部の基地へ侵入しよう。もう一人の男の足取りを急いで追う必要がある」

「侵入するって、どうやって……」

 言いかけたアラタが、ハッと言葉を切った。

「転生者の転生経路の確認を名目にするのか」

「当たり。今回の一件を受けて転生部が真っ先にすることは?」

「送り出した転生者が無事に転生(うけいれ)先の世界にたどり着いたかどうか、その一斉調査が行われるはずだな」

 本来は転生者監視課の役割だが、今回は転生部総出で調査が行われることだろう。

「封魂監に隔離された転生者についても、転生部はその後の様子を把握しておかなければならない。必ず、誰かは防衛部に記録されているデータを回収に行かなくちゃいけないだろうから、それを口実に俺たち二人は正面門から堂々と基地へ入るんだ」

 オギナは共鳴具に触れ、西部基地内の地図を表示する。

「カトラ管理官は必ず防衛部の共謀者と接触する。ジツは防衛部の共謀者を特定したら、奴らの向かう先を調査してほしい。防衛部へ侵入した俺たちの方も、奴らに証拠を消されないよう、そのまま敷地内を捜索する」

「でも、防衛部の敷地は広大です。たった三人ですべてを捜索するのは難しいですよ」

 ジツの指摘に、オギナもあっさり頷いた。

「そうだね。だからこの施設内で、当たりをつけるんだ」

 さて問題です、とオギナが唐突に人差し指を立て、にこやかに笑った。

 戸惑うジツに、アラタは慣れた調子で頷く。

「転生者を迷魂に偽装した上、別次元の空間へ転移させるために必要なものは何でしょう?」

「えっと……例えばですが、鏡光石(オリテア)の粉末を偽装に使うなら、再結晶させて純度の高い吸光石(ワデルグ)に加工すると思います。鏡光石(オリテア)の粉末だけでは、何の使い道もありません。けれどそれを魔法で燃焼させ、急激に冷却することで科学反応を起こし、吸光石(ワデルグ)に再結晶させることができます。この鉱石は魔力を吸い込むことで、周囲から己の魔力量を隠す役割があります。転生者の感情や記憶も、同様に隠すことが可能かと」

 魔法道具関連管理課に所属しているだけあり、ジツは即座に答えた。

「転生者を別次元へ転移させるには、方法は一つしかない。転移方陣を使う以外、このアディヴの地から出ることは難しいからな」

 このアディヴの地に転移方陣は五つしか設置されていない。

 異世界間仲介管理院が所有する四つの転移方陣と、管理官養成学校が所有している第五方陣だ。

 この五つ以外の転移方陣、あるいはそれに類する施設の建造は禁止されている。

 アラタは顎に手を当て、しばし黙考した。

 普段の業務で目にすることが多い第二方陣は、特に変わった様子は見受けられなかった。

 本当に?

 アラタは目を細める。

 このような状況下だ。何か見落としがあったかもしれない。

 アラタは頭を掻きむしった。

 装備部の人たちが調整している様子を必死に思い出す。

 よく出力が弱いと言って、管理部の転移方陣管理課へ供給魔力量を上げるように連絡を入れていた。それで異世界間連合会議の折に、第二方陣を含めた四つの方陣で定期点検(メンテ)が順次行われたのではなかったか。

 魔力の供給率が悪い……?

 ハッとアラタは顔を上げた。

「自力で転移させることができないなら、転移方陣に能力複写の装置なり魔法陣なりを連結(リンク)させるのはどうだ? 転移方陣が起動したと同時に、その効力をコピーして発動させる。それなら管理部の転移方陣管理課の目もごまかせる」

「二人とも、素晴らしい読みだね」

 オギナはジツとアラタの回答にぱちぱちと拍手を送る。

「二人が指摘した通り、盗んだ備品を再加工するための実験施設と、転生者を監禁した上で異次元へ放り出すための装置なり魔法陣、最低でもこの二つが必要になる」

 オギナはニッと口角を僅かに上げた。


「この二つを押さえることができれば、もう言い逃れはできないよね」


 オギナはそうして虚空に映し出した西部基地の地図を見た。

 アラタとジツもオギナと肩を並べて虚空に浮かぶ地図を凝視する。

「再加工に必要なのは化学反応の衝撃に耐えうる強度、そして徹底した外界との遮断です。扱う備品によっては、塵一つ混じってはいけない危険なものもありますから――」

 ジツはそう言って、ある一点を指さす。

 アラタとオギナが、最近訪れた場所だ。

「その条件をすべて満たす場所は、封魂監です」

 アラタとオギナも同意するように頷く。

 攻撃性の著しく高い転生者を徹底的に隔離し、あらゆる物理・魔法攻撃も通用しない護送車の中なら、確かに人目につくことはない。

 目撃したとすれば、護送車内にいた転生者だけだ。

「目撃者をそのまま標的(ターゲット)にしてしまえば、隠蔽工作も容易だな」

 胸糞悪い。

 アラタの目が鋭さを増した。

「そして問題は、転移方陣と連結(リンク)されている施設の方だね。少なからず、魔力を供給、出力する以上、大規模な施設になるはずだ」

 オギナが首を傾げた。

「手っ取り早いのは第四方陣の真下だろうな」

 アラタも悩まし気に呟く。

 管理部の監視も、転移方陣の座標を示していたなら見逃す可能性が高い。

 地下施設でもあれば話は早いのだろうが、さすがにそんなものは地図に記載されていなかった。

「あの、連結って一つの方陣でしかできないものでしょうか?」

 おずおずと尋ねるジツに、アラタとオギナの二人は顔を見合わせた。

「どういう意味?」

 首を傾げるオギナに、ジツは「つまりですね……」と自分の左手首に装着した共鳴具に触れた。虚空に表が映し出される。常時発動している第一方陣以外の、第二から第四方陣の起動日程だ。

「この通り、転移方陣の起動は管理部が日程を調整した上で順繰りに行われています」

 異世界間仲介管理院が創設されて間もない頃、神々の加護が少なかった当時としては転移方陣を起動させるにも一苦労だった。

 今でこそ、異世界間連合に加盟する神々の数も増え、異世界間仲介管理院にもたらされる加護の数も増えたことで第一方陣も常時解放が可能となった。

 それでも、魔力の無駄使いはできない。

 終業時刻になれば転移方陣はすべて停止され、第二から第四方陣も起動させる日時が被らないよう管理部が徹底して魔力消費を抑えるために調整している。

「例えば、第四方陣を起動させて、別の施設へ転移。次に別の方陣が起動したときに、転生者を異次元へ転移させるという風に分割して送り出したという可能性はありませんか?」

「なるほど、転移を見送っている間は魔力をどこかに貯蓄しておけば……一度に転移させるよりもずっと見つかりにくい」

「なら、第四方陣に近い施設は……」

 第三訓練場と操縦訓練場(シミュレーター)、そして封魂監だ。

「残りの施設は時間が許す限り調べるってことになるね。目下の目標として、この三施設は入念にチェックしよう」

「ああ」

「はいっ!」

 オギナの言葉に、アラタとジツは同時に頷いた。

Copyright(C)Itsuka Kuresaki 2021

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