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管理官アラタの異世界間仲介管理業務  作者: 紅咲 いつか
四章 管理官アラタの異世界召喚仲介業務
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File10-14「恨みと羨望」

「っ……まだですよ!」

 オメガが大剣を振るい、アラタは寸でのところで身をかわす。

 受けた傷を修復しながら、オメガはアラタに大剣の切っ先を向ける。

「転生者であり、神々の傀儡たる貴方に負けるわけにはいきません」

「俺は誰の傀儡でもない。ここに立つのも、自分の意思だ」

 オメガの物言いが気に入らなかったようで、アラタは不快げに眉根を寄せた。

「そういうお前はどうなんだ。他人から奪った加護を自分の能力(実力)と胸を張れるのか」

「労せずにして能力を与えられ続けた貴方と一緒にしないでいただきたいですね」

 オメガの額に青筋が浮かぶ。

「能力を餌に転生者を御そうとする神々も、その神々の甘言にあっさり騙される転生者も……世界にとっては害悪でしかない!」

「それはお前の極論だろう」

 ツナギが構えの姿勢を崩さずに断言した。地を蹴り、オメガへ拳を振り下ろす。オメガは大剣の剣身でツナギの拳を受けた。

「加護の有無がその人の能力を決めるわけではない。己ができることを、いかに発揮するかがその人の能力を決めるんだ!」

 オギナの弓から矢が放たれる。光の矢が雨のように降り注ぐ。オメガが離れ、アラタが踏み込む。一撃、二撃と互いに剣や魔法を放った。大地を抉りながら、双方が鍔せり合う。

「お前はそうやって己すらも軽んじてきた。だから、お前は強くなれない」

「貴様だけには言われたくない! 神々に見捨てられた異端者が!」

 アラタの一言に、オメガが激昂する。迫るオメガの大剣の軌跡を目で追いながら、アラタは唇を開いた。

「〝亀裂(ナフイ)〟」

 アラタが右手の剣を滑らせ、黒い靄に覆われたオメガの剣身を切り裂いた。オメガの首が宙を舞う。見開かれたオメガの双眸と目が合った。

「何故……」

 顔の半分が塵と消えながら、オメガの虚ろな瞳がアラタを捉える。

「何故、私は世界に抗えないのですか……?」

 か細い呟きを残し、オメガは消えていった。

「世界の全てを否定したからですよ。報われた魂に目を向けなかった。ただそれだけのことです」

 塵と帰すオメガを見据え、アラタは静かな声で囁いた。

「くそっ、オメガの野郎、あっさりやられてんじゃねぇぞ!」

 ジツの短剣を避け、ゼータが舌打ちをした。

「あんたも後を追いなよ」

 ジツが冷たく言い放ち、ゼータへ刃を振るう。

「管理官権限執行、交錯!」

 アキラが即座に腕を突き出す。ジツの振り下ろした短剣がゼータに向かって四方八方から襲い来る。いくつもの空間に同時干渉し、過去・現在・未来の空間からジツの斬撃を目前にいる標的(ゼータ)へ集めたのだ。

「くそっ、卑怯だぞ! (てめぇ)!」

「卑怯で結構です」

 ジツの攻撃を避けながら凄むゼータに、アキラは動じることなく睨み返す。

「それで大切なものを守れるならば、いくらでも卑怯者のそしりを受けましょう」

 アキラの真っ直ぐな瞳が、ゼータを見据える。

「だからこそ、私はここにいるんです」

「アキラ管理官、私の攻撃も援護願います」

 キエラが双銃を構える。アキラも即座に魔法陣を生み出した。

「管理官権限執行、鏡面回廊」

「管理官権限執行、炎弾、雷弾!」

 キエラの双銃から炎と稲妻を帯びた弾丸が飛び出す。銃口から飛び出た銃弾は虚空に吸い込まれ、ゼータの周囲の空間から無作為(ランダム)で飛び出した。

「ぐっ……」

 ゼータの右太ももをキエラの炎弾が貫く。怯んだゼータに、ジツの短剣が迫った。

「終わりだ」

 ジツの短剣が、ゼータを魂ごと両断する。

 彼の上げる雄叫びがぶつりと途切れた。後には、地面に短剣を突き刺すジツの姿だけが残った。

「任務の第一段階、終了ですね」

 ジツはオメガを討伐したアラタたちを振り向く。

「院長の仇は取りました。後は……元凶を潰すだけです」

「ああ、必ず止めるぞ」

 頷くオギナに、ツナギが皆に次の討伐地点へ向かうと指示を出した。

 アラタは新型魔動二輪にまたがり、オメガが消えた場所を振り向いた。

「……」

 それも一瞬のことで、すぐさま魔動二輪を駆って虚空へと舞い上がる。

 こうして、アラタの中にわだかまっていた因縁の糸は一つ、断ち切られたのであった。

Copyright(C)Itsuka Kuresaki 2022

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