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管理官アラタの異世界間仲介管理業務  作者: 紅咲 いつか
三章 管理官アラタの異世界間事象管理業務
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File9-4「アディヴ陥落」

「ジツ!」

「アラタさん! キエラさん!」

 瓦礫を裂け、崩れた階下へ降り立ったアラタにジツとマコトが向き合った。

「院長、お怪我が……」

「ありがとう、キエラ管理官」

 キエラがすぐさまマコトに治癒を施す。マコトが穏やかな表情で礼を述べた。マコトの怪我を見たアラタの顔から表情が消える。そのまま、大剣を肩に担ぐオメガに顔を向けた。オメガも口元に笑みを浮かべたまま、アラタを見返している。

「あなたという人は……」

「こんにちは、アラタ管理官。やはり駆け付けて来られましたね。待っていましたよ」

 オメガはにこやかに言うと、手にした大剣で床を突いた。

「〝隔離(ロヤヒ・)結界(クインロツ)〟」

 オメガが形成した光の結界が、オメガとアラタたちを包み込む。やがて障壁となって外界から隔離した。

「さ、これで邪魔は入りません。私の役目は、アラタ管理官を含めた主要管理官の始末ですから」

 オメガは大剣を引き抜き、一歩、アラタに近づく。

 アラタも無言で双剣を構えた。

「キエラ管理官、院長のことを頼みます」

「はい、どうかお気をつけて」

 アラタの言葉に、キエラが院長とともに数歩下がった。

「ミ……ジツ管理官、アラタ管理官の援護を」

「了解です」

 マコトの指示に、ジツも短剣を構えた。

「全員でかかってきていただいて結構ですよ? 私は手間が省けますので」

 オメガが大剣を両手で握りしめるなり、大きく振り払った。

「〝加圧(ロワイ)〟」

 圧縮された空気の斬撃が、床や壁を抜いていく。その中を、双剣に炎を纏わせたアラタが疾駆した。

「〝業火(オーサロ)〟!」

 アラタが双剣を振り下ろし、オメガが正面から受け止める。アラタの炎が、オメガの全身を焼いた。

「〝自動(ニーホーサ)再生(・ウツネツ)〟」

 オメガが負った火傷が、みるみるうちに消えていく。

「〝妨害(トーサローツ)〟」

 アラタがすぐさまオメガの魔法を打ち消しにかかる。

「管理官権限執行、風神のため息!」

 ジツの魔法がアラタの炎に追い風を吹かせる。

「〝(ニーミヤ)〟〝穿て(サローラ)〟」

 オメガが呟き、虚空に生み出された無数の水滴が槍となってアラタたちへ降り注いだ。

「院長権限執行、守護神の防壁!」

 咄嗟に腕を突き出し、マコトが生み出した結界がアラタたちを包んだ。オメガが舌打ちをする。

「やりますね。咄嗟の連携も大したものです」

「管理官権限執行、氷弾!」

 キエラも双銃を構え、すぐさま発砲する。オメガは大剣をひと振りし、その剣身に纏った魔力で薙ぎ払う。

「〝怨嗟(ヨタウ)〟」

 オメガの持つ大剣に、不穏な靄が付きまとう。大剣が上げる、魂を揺さぶるような金切り声にアラタたちは耳を塞いで顔を顰めた。

 オメガが地を蹴り、アラタへ大剣を振り下ろす。双剣を交差させ、アラタは正面から受け止めた。火花が散り、二人が同時に離れる。

 そこへ大きく建物が揺れた。

「なっ、地震……っ!?」

「違う。これは……」

 身構えるキエラの横で、マコトが愕然と呟いた。

「永獄への道を……こじ開けたのか」

 悔しそうに吐き捨てるマコトに、オメガが満足そうに笑った。

「やれやれ、思ったよりも時間がかかりましたね」

「皆、ここは退くぞ!」

 マコトの言葉に、アラタたちは彼を振り返った。普段は見せない差し迫ったマコトの表情に、その場にいた全員が頷く。

「こちら院長のマコトだ! 総員、急ぎアディヴを離れろ!」

 マコトが指輪に向かって叫んだ。その間も、崩れかけた中央塔が悲鳴を上げる。崩れてきた瓦礫を避けながら、アラタとジツはオメガの攻撃をいなしていた。

「ノア管理官、これから、アディヴに残った全ての管理官を強制転移させる。魔導軍艦への座標を送れ!」

〝承知いたしました!〟

「キエラ管理官、アラタ管理官の攻撃に合わせてこの防壁を破ってくれ」

「はい、院長」

 マコトは斬り合うアラタたちを注意深く見据えながら、傍らのキエラにも指示を飛ばす。キエラがすぐさま双銃を構えた。

「逃がしませんよ! あなた方はここで殺しておかないといけませんので!」

「ぐっ、ほんと……しつこい! 管理官権限執行、影槍!」

 ジツが嫌気の差した顔で吐き捨てた。オメガの足元から無数の影の槍が伸び、オメガの全身を貫く。しかし、オメガは止まらない。全身の肉が引きちぎられようと、魔法ですぐさま傷口が治癒、再生してしまう。

「〝業火(オーサロ)〟!」

 アラタの放つ炎が、オメガを飲み込む。

「今だ! キエラ管理官」

 マコトの鋭い声が響いた。

「管理官権限執行、守護結界、鉄砂塵!」

 アラタたちの全身を光の障壁が覆い、キエラの生み出した黒い粉塵が辺りを舞う。刹那、爆発が防壁ごと塔を吹き飛ばした。

「うわっ!?」

 アラタたちは爆風に煽られ、塔から飛ばされる。

 虚空に投げ出されたところで、マコトが虚空に巨大な魔法陣を生み出す。

「院長権限執行、強制転移!」

 マコトの転移魔法がアディヴの各地で光の柱を生み出す。そのまま、アラタの身体も空へと引き寄せられていった。


「逃がさないと言ったでしょう?」


 禍々しい瘴気を纏った大剣を構え、オメガが虚空で構える。

「〝断罪の剣(ハータウーツ・クタ)〟」

 虚空に生み出された無数の剣がアラタたちへ迫る。

「させるか! 〝救済の光(ナチンサウツ・リロヒ)〟!」

 アラタの生み出した無数の光の剣が、放たれたオメガの剣を全て打ち消す。砕かれた剣が光となって舞う中、オメガの顔に笑みが浮かぶ。

「〝魂の(ハルニツ・)消滅(ニエンサへイ)〟」

 アラタたちの視界が光に包まれる瞬間、オメガの放った黒い剣がマコトの身体を深々と貫いた。

Copyright(C)Itsuka Kuresaki 2022

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