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第15話 祠~ほこら~

『宗助さんと楓さんが来てから、20日が経ちました。


宗助さんは風香の修行に耐え、一時期は悩みもしていましたが


今はめまぐるしいスピードで上達していっています。


足腰の筋肉も付き毎晩の素振りの効果もあり、一振りに力があり


風香も両手で防ぐようになってきました。


また今は茨木童子も宗助さんの中へ戻し、鬼の力の使い方の修行も加わりました。


楓さんは小さな結界は、1時間以上維持できるようになり今は大きな結界を張る


修行をしています。展開はできるようにはなってますが、


やはり維持となると結界が歪んでしまいすぐに消滅してしまいます。


最終日までにあの大きさの結界を維持することは難しいでしょうが、


それでも初めて学んだ結界をあそこまで張れるのは今まで培った努力の証でしょう。


あと数日ですが、あなた方のお孫さんを預からせていただいてる以上


力をつけて帰らせたいと思います。


最後に一つだけ。あの子たちはこれからもっと強くなります。


神来社家、三鏡家を見る周りの目は確実に変わます。


良く思わない家も出てくることでしょう。しかし、あの子たちならそれを


物ともせず前に進めます。もし倒れそうな時。その時は、あの子たちを支え


てあげてください。どうかよろしくお願いいたします』


「御二方もお健やかにお過ごしくださいませっと。うん。できましたね」


手紙を上包みに入れ、使いの者に渡す。


「それではどうかお願いいたします」


使いの者は短く頷くと部屋を出ていった。


今日は雲一つない青空で心地がよい。


「残り数日ですか。寂しくなりますね」



((おい!宗助!もっと力使え!猫が逃げてくぞ!))


「アホか!これ以上やったらまた足折れるわ!」


((すぐ治るだろうが!!))


「いてぇんだよ!いいよな!お前は痛みほぼ感じなもんな!

あの激痛味あわなくてもいいもんな!」


最近修行に、鬼の力のコントロールが新しく追加された。


内容は相変わらず山で鬼ごっこだったが、今度は俺が鬼で風香と猫又を捕まえる。


(おい・・・あ奴らまた喧嘩しておるぞ)


「ホントに仲いいよにゃ~。にゃんたもあれくらい私に懐いて欲しいにゃ~」


(たわけ)


猫又を使わずとも風香の身体能力は超人並だったが、猫又のおかげで更に


身体能力が倍増していた。


普通なら一瞬で見失うが、茨木の力のおかげでなんとか鬼ごっことして


成り立ってる。


「てか茨木。お前今って何割くらい力出せるんだ?」


((どうだろうな。お前がビビって力使えてないからな。感覚的に

五割くらいは使えるんじゃねぇか?))


「マジか。狒々の時はどのくらいだったんだ?」


((一割))


「マジか・・・」


意外と衝撃の事実。そんなにひ弱だったのか・・・


風香は木の上を軽々と飛びわたり、山奥に逃げていく。


((あーあ。また見失っちまった。こりゃあ探すの一苦労だな))


「またこの中から探すのかよ!」


俺はまだ鬼の力の制御ができず、油断すると足に力を入れたときに


足元の地面をぶち抜く。ついでに俺の足の骨も折れる。


「風香のやつ木の上ばっか移動するから、痕跡探すのも難しいしな」


ここで立ってても仕方ないと思い、とりあえず最後に姿が見えた方向に


走っていく。


「ん?そういえば、あの時は楓の匂いしたよな・・・」


そう狒々の事件の時、楓を探して町を走りまわった時、あの甘い匂いがした。


なのに今は、同じ状況で風香を探してるのに匂いがしない。


そもそも、あの甘ったるい匂いは何なんだ?


「おい茨木。お前なんか匂いとか嗅ぎ分けれるのか?」


((あ?そんなことできるか。畜生じゃあるまいし))


「じゃあなんでお前を宿した時から、甘ったるい匂いが強くなったんだ?」


((甘ったるい?あぁそのことか。そういえばアイツも最初はそう言ってたな。

宗助。狒々が言ってたこと覚えてるか?赤子の生き胆の話だ))


そういえば、なんかそんな話してた気がする。赤ちゃんの生き胆は


とてつもない力が得れるとかなんとかだった気がする。


「あ~何となく」


((赤子の生き胆は俺らにとってはご馳走だ。あと、お前らのような神に仕えるもの。

つまり巫女とか神主とかだな。そういうのも、俺らにとっては千人力の力を与えてくれる

ご馳走だ。俺にはそういう奴はすげぇ美味そうな匂いがすんだよ。だけど、風香はただの器。

面白い奴だが、美味そうではない))


つまり俺が甘ったるいと思ってた匂いは、茨木にとっては美味そうなご馳走の


匂いだったってわけか。


えっ、じゃあなんで俺は茨木を宿す前からあの匂いがわかったんだ?


俺は考えるのが怖くなってそれ以降考えるのを止めた


しばらく、走ったが風香は全く見つからない。


でも、あてもくそもないからとりあえず足で探し回るしかねぇ。


そう思いながら、走り回っていると切り立った崖の下に出た。


「うおっ。すげぇ。この山まだ高い所あるのかよ・・・」


思わず上を見上げると、そこには不自然な穴が開いていた。


((おい。あそこなんか穴空いてないか?面白そうだし行ってみようぜ!))


「バカ言うな。あんなところどうやって・・・」


その瞬間体にとてつもないGがかかった。


茨木がいきなり力を使って跳んだ。そのおかげで穴にはたどり着いたが、


俺の気持ち悪さも頂点を迎えた。


「こういう時は事前に言ってくれ・・・気持ちわる・・・」


((お前はホントによ・・・))


穴の入り口で気持ち悪さからうなだれていると、奥から人の声が聞こえてきた。


「貴様、何者だ!そこで何をやっている!」


やべ!なんかやばい所に来ちゃったか?


「ん?何だ宗助君ではないか。何故こんなところに?」


「あっ筋肉達磨さん。いや、風香と修行中だったんだけど見失っちゃって」


奥から現れたのは、誓願寺の同志だった。


「はっはっはっ!そうかそうか!風香殿と!それは難儀だな!

しかし、宗助君。ここは危ないから近づいてはいけないよ」


「危ない?奥に何かあるんですか?」


「ごめんなそれは秘密なんだ。ここは深見家の中でも限られた人しか

近づけないんだ。それに、風香殿なら日当たりのいい場所にいるんじゃないかな?

猫だし」


そんな本物の猫みたいな事あるのかよ。


「あぁ。そうなんですか。ごめんなさい。すぐに下へ降りますね」


降りようと下を見ると何故か風香がいた。


「あっ居た居た。宗ちゃーん。お腹すいたから帰ろ~。それにダメだよ。

ここに来ちゃ~」


「あぁワリィ。今降りるわ。それじゃあ」


同志に挨拶をして下へ降りる。


「もう、ここは来ちゃダメって言ってたでしょ~」


「いや、初めて聞いたわ。お前絶対言うの忘れてれたよな。結構大事なことだよなこれ」


「あれ?そうだっけ?まぁいいじゃん!早く帰ろ~」


風香は誤魔化すと、さっさと山へ向かってしまった。


「おい待てって!俺帰り道わかんねぇから!お願い待って!」


俺は急いで風香を追いかけた。


((・・・あそこ、やばいな))


「ん?なんか言ったか?」


しかし、茨木が答えることはなかった。


風呂から上がると、広間に夕食が用意されていた。最近は楓も盛り付けを手伝っている。


最初は料理も手伝うと言っていたが、全力で阻止した。


みんなの命を危険にさらす訳にはいかない。だから、今は渋々盛り付けを手伝っている。


なぜか料理はできないのに、盛り付けは素晴らしく綺麗だった。


続々とみんなが集まり、食事を始める。


「二人とも後数日ですね。寂しくなります」


「そうですね。ここに来てもうそんなに経ってしまったんですね。

つい昨日来たような感じがします」


「ふふっ。そうですよね。わたくしもそんな感じがします。

それにしても、二人とも大きくなりましたね」


「まぁ、ここに来てから結構食べてるんで。俺も楓も。結構増えてると思いますよ。なぁ楓」


隣の楓を見ると、目つぶしが飛んでくる。


「うおぉぉぉ!何すんだ!!」


「今のは宗ちゃんが悪いにゃ~」


「いつも賑やかですね、宗助さんは」


広間が笑いに包まれる。


いつもの光景、誓願寺の人はみんな優しい人ばかりだ。


すると、突然広間の扉が勢いよく開いた。そこには息を切らした康太さんがいた。


「はぁはぁ。真綾さん大変です!祠の封印の結界が破られました!!」


いつもの夜。それは突然終わりを告げた。


宗助は同志のみんなのことを筋肉達磨さんと呼んでいます。

いつも閲覧、ブクマありがとうございます。次話もよろしくお願いします。

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