第2回 これからもよく死ぬ
見事(?)四天王の一角を落とした勇者・ユウコと付き人のマチルゼ。
魔王の間を目指して二人は魔王城をさらに奥へと進んで行こうとしていた。
その時。
ヒュウゥゥゥ
風が吹いた。
魔王城。魔族とひとくくりにしてみても、様々な形態・サイズの者がいる。誰であれ難なく過ごせるように部屋であれ廊下であれ全てが大きめに設計されていると思われるその城。どこかで窓が開いているのかもしれない。亜k是くらい吹くこともあるであろう。
だが、人間界の勇者・ユウコは知っていた。『風の魔力を操る魔王の側近』がいる、と。
「伏せて!!」
「え!びゃああ!」
言うが早いか、ユウコの腕がマチルゼを抱きかかえてジャンプする。
ズパァン!
と音を立て、広めの魔王城の壁に大きな亀裂が走る。鎌鼬だ。
「な、な、なんですか!?」
「まさか…疾風のヒュウジ!?」
風を纏い現れたのは、魔王の側近の一人、ヒュウジであった。
「魔王様の元へは行かせない」
「よくもまぁこんなところまで入り込んだものだ」
「えっ!」
マチルゼが声を出して驚く。ユウコも完全に不意を突かれていた。背後の暗闇からさらにもう一人の魔族が姿を現す。宰相・マゴリットである。
「やばくないですか!?やばくないですかユウコさん!」
「落ち着きなさい、これくらい…!」
「あー、死んでたー」
むくり、と、倒したはずのヒズ=ターナが起き上がる。致命傷を与えようとも生き返る。それがアンデッドである。敵の根城に攻め込んでいるのだが当たり前といえば当たり前であるのだが、ユウコは、魔王の右腕・左腕と四天王の一人に取り囲まれる形になっていた。
「どうします!?どうします!?」
「決まってる…こんなやつらいちいち相手にしてらんない。魔王のところまで突っ切るよ!」
「させると思うか?」
風の流れが変わる。ヒュウジが臨戦態勢に入ったのだ。
と、同時にユウコがターナに斬りかかる。
「ぎゃー!いたーい!」
ターナは不死。だけど、それ故か隙が多い。
再度四天王の一角を落とし、ユウコとマチルゼはさらに城の奥へと駆け出してゆく。