91.某お嬢様の日常すぎる日常 SS⑧
あゆのようには行かない。そう感じた朝だった。初めて湊と一緒に教室まで入ったは良かったものの、あゆと違ってわたしは恥ずかしさがあった。あゆは臆することもない。
「――っ!」
「さよ――」
湊がわたしの名前を呼ぼうとしていたみたいだったけれど、あゆに止められたみたいだった。今まで教室にいても、彼女は割と自由意思で動いていたのに、どうして急に対抗を見せてくるようになったのだろう。
彼女の中で、湊の存在が大きくなったのだろうか。わたしが敵と言ってもまるで関係ない風にしていたのに、突然の変わりように驚きを隠せない。
「あなた、あゆも本気なのかしら?」
「そうだとしたら?」
「て、敵だと言ったわ。そういうつもりがあるなら、わたくしもそういう態度を取らせて頂くわ」
「勝手にしていいし……お昼は高洲君といていい。どうせ――」
続きを言いかけて言わないのは彼女の悪い癖だわ。それでもわたしは何があっても、何かが起ころうとしても、湊に伝えたい。
お昼は湊と一緒にカフェに行くのも悪くないわね。あゆは、お昼は譲ると言った。それならそうさせて頂かないとね。
そうして、お昼休みになろうとした時、わたしは湊のいる席に向かって歩き出そうとした。そこに、何故かはわからないけれど、話をしたことのない女子に声をかけられた。
「池谷さん、廊下に彼が来ているよ? 行ってあげて」
「彼? よ、よく分からないけれど、行けばいいのね?」
「あ、です。自分は伝言を頼まれただけだから。じゃあ、伝えましたから」
そう言うと、話のしたことのない女子は、浅海さんたちと教室から出ていった。彼の取り巻きだったのね。
湊に声をかけてから、廊下で待っているという彼の所に行くしかなさそうね。湊にはカフェで待っててもらわなきゃ。
「み、湊。お昼はわたくしと行きましょ。わたくしは用を済ませてから行くわ。あなたは先にカフェの席を確保なさい」
「あん? 分かったよ。早く済ませろよ」
「当然だわ」
さて、わたくしを待つ彼は誰なのかしらね。すぐに済ませて、湊が待つカフェに行かなくちゃ。




