66.某お嬢様の日常すぎる日常 SS③
線の細い男に興味など無いわ。外面がいいだけの男なんて、お父様の会社にはたくさんいたわ。中身までいい男なんて会ったことが無い。それって、わたくしがまだ子供過ぎたということかもしれないのだけれど。
「さよりちゃん、君はきっと美人さんになれるよ。だから俺と婚約をしといてくれたら嬉しいな」
「イヤ」
「そうすればキミのパパはもっと偉くなれるかもしれないよ?」
「そんなのイヤ」
今にして思えば、あの言葉の意味はお父様の地位を上げる代わりに、わたくしの夫となるという意味だった。そんな意味のない人生を置くこと自体が無意味だわ。わたくしは、わたくしの認める男でなければ夫になんてしたくないですもの。そんな悩みも消え失せたわ。高洲湊。彼を見つけてしまったのですもの。わたくしに見合うのは彼しかいないわ。家も隣だし、なんて便利に出来ているのかしら。だけれど、問題は鮫浜だわ。彼女……ううん、彼女の家の力にはどう考えても勝てそうに無いわ。あゆも普段こそ大人しくしているし、変わっているけれど、彼女が本気になったらと思うと背筋が震えっぱなしになるわね。
「さよちゃん、彼のことを?」
「ええ、湊こそわたくしに相応しい男ね。妹である姫も、湊のことを認めたのよ? だからわたくしの男になる資格が彼にはあるの」
「……本当に?」
「そ、そうよ? も、文句がおありかしら」
「無いよ。だけど、今だけはいいよ……さよりちゃん、寂しがり屋だもんね」
「――! そ、そうね」
何かしら? 何か一瞬で鳥肌が立ってしまったわ。鮫浜あゆ。何でこんな小さな女子がこんなにも大きく見えてしまうのかしら。そ、それでも最終的に選ぶのは彼、湊自身だわ。湊に近づく女は全て排除して、わたくしこそが彼に相応しい女だと認めてあげなければならないわ。だから、湊には彼女なんて作らせない。




