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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
5章:日常、再び

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344.残念彼氏と満足彼女は、本気で恋をする


「ほら、早く歩いて」

「はぁひぃ……さよりだけズルくないか? いくら何でもあんまりだと思わないのか?」

「愚問ね。わたくしは運動不足を解消させてあげているの。彼氏が残念な見た目では、わたくしの方こそ可哀想だわ!」

「イケメンじゃないのは自負しているが、容赦無いなお前」

「お前――」

「さより」

「ふふん、あなたのイイトコは、初めから背中と声だと気付いているのだけれど?」

「そ、そうかよ……極上美少女さんは言うことが違うな」


 彼女となり、家同士の付き合いもこれまで以上に親密となった俺たち。


 学園ではあまり話しかけて来なくなっているが、外に出ると当たり前のようにお迎えの車に乗り、そのまま腕を掴まれて買い物デートばかりな日々である。


 庶民からの成り上がり令嬢ではあるが、令嬢歴が長くなったのか、初期に感じたわざとらしさはすっかりと消え失せた。


 浅海と鮫浜は学園にも姿を見せて来ていないが、さより曰く『あゆはかなりしつこいの。油断してはいけないのだから、あなたの腕はいつもわたくしが捕まえておくわね』ということらしい。


 栢森ヶ丘のみちるとは話がついた日以降、会うことも無ければ連絡も取っていない。

 もっとも、さよりはお友達として連絡をしているのだとか。


「あなたの背中は随分と……」

「何だよ?」

「はぁ……残念過ぎるわ。かつてわたくしを虜にした鋼鉄のような背中は、どこへ消えたの? これは気合を入れてかからなければいけないわね」

「何の気合だよ……っていうか、前と逆になってるんだが?」

「残念なわたくしから、残念な彼氏……あなたに変わってしまったわね。それも仕方がないというものだわ! それでも、あなたの背中はわたくしが守るわ! げほっ……」


 ナイムネを張り、拳で叩いて咳き込む残念さは健在のようだ。

 いや、以前よりはあるが……希望が多少出て来ただけで、姫のソレとは比べようがない。


 姫といえば留学に行っていたが、俺とさよりが正式にくっついたことを知って、どういうわけかしばらく池谷家に留まっている。


 元々成績優秀なことから、留学先でも自由に過ごしていいのだとか。

 自由な妹は羨ましい限りだ。


「ふふん!」

「ん? 何だ、嬉しそうにしているみたいだが、なんかいいことでもあったのか?」

「ええ、嬉しいわ。こうして自然にあなたと一緒にいられることが、どれだけ素敵なことか……色んな女子を日替わりに過ごして来たあなたとは、満足度が違うの」

「日替わりって……そりゃ、あんまりだろ」

「寛大なわたくしだからこそ、湊は湊でいられるの! あなたがまた流されるままに、あゆの所へ戻っていたらと思うとゾッとするわ」

「そ、そうだな」


 鮫浜は浅海の本気行為によって、ようやく浅海を見直したらしい。

 しかし闇天使は、一度狙った獲物は絶対逃さない性質らしく、今もどこかで俺を監視しているようだ。


「それよりも、沖水……あゆの妹とはどうなの?」

「あみは……東上学園に転校して来てからは、ぼっちじゃなくなったみたいだし、姫と気が合うらしいぞ」

「そうね、姫からあなたのことを聞けば、あなたのことを諦めるかもしれないわね」


 それは無いと断言しておこう。

 あみの性格は闇天使一歩手前で、人見知り。しかしあゆと違うのは、判断する能力があるということだ。


 あゆは権力を盾に店を潰し、俺を含めて人を平気で追放して来た。

 容赦の無さが鮫浜といえばらしかったが、沖水あみは超個性派揃いの女子高に隔離されていたことで、鮫浜よりは人の話を冷静に聞ける器量がある。


 とはいえ、姫同様に見えない場所で俺に声をかけて来たり、何の悪気も無く俺の部屋にお邪魔している辺りは、姉の遺伝子は確実に受け継いでいると見ていい。


 鮫浜あゆの直接的な脅威は未だに残っているが、鮫浜には感謝もしている。

 南中付属の女子たちの問題は、公約通りに全て片を付けてくれたからだ。


 俺の理想の彼女像は、美少女で優しくて楽しい奴だった。

 だが現実は厳しすぎた。


「……二つだな」

「何かしら? そんなに見つめられると妊娠してしまうのだけれど」

「はいはい、わかったわかった」

「はい、は一度だけと教えたわ!」

「……はい」

「いいわ。いい子ね」


 当初からさよりは細かくてうるさくて、厳しい女だと認識していた。

 反対にあゆは緩くて、自由な感じがあったが実は闇天使という、何とも残念な結果になったわけだが。


 出会った時から、さよりとは何かの運命を感じたのは否めないが、口うるさいのが災いしてずっと避けて来た。


 結局その小言も含めて、放っておけないという、妙な感情が沸いて来たわけで。

 理想の彼女の条件が全て揃っていたのは、さよりだけだった。


 オムネさんに関しては、母親の遺伝を継いでいることが判明したのでそれはいいとする。


「ってか、まだ買うのかよ。車を近くに待たせておけっての!」

「情けない男ね。あなたのその腐り過ぎた根性と、だらけ切った背中は、わたくしが叩いて直して……あら? 叩き……何だったかしら」

「はっ、ははは、可愛い奴」

「当然ね。何を今さらのことをほざいているというの? わたくしは自称美少女なの! 他称ではなくってよ?」

「さよりはどこから見ても極上美少女で、俺の彼女だぞ。俺が認めてやる」

「ふふん、湊ごときに認められても、嬉し……嬉しいに決まっているわ!! やっと、やっとあなたと正式に恋が出来るのですもの。わたくしは満足しているわ! あなたもそうでしょう?」


 今の段階で満足されても、それはそれで困るが……恋をする、か。


「さより、俺はお前のことが本気で好きだ。ずっと、これからもずっとだ」


「お前では無いわ! でも、でもね、わたしもあなたのこと、高洲湊という残念な男の子のことが……ずっと、ずっと大好き!!」


 闇天使の鮫浜、妹の姫……。


 まだまだ悩みは尽きそうに無いが、俺の彼女はそれでもさよりただ一人なわけで。


お読みいただきありがとうございました。

これで完結です。

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