334.追放からのリターン 2
「なぁ、お前ら……」
「お前では無いわ! 全く、何度言っても学習能力の無い男なのね」
「高洲もお前って呼ばれたい?」
「ちげー!! 何でどっちも俺の腕を掴んで歩いているのか、理由を聞こうか」
「愚問だわ。サボり野郎の湊のことですもの、どうせ途中でどこかに行方不明になるに決まっているわ! それを未然に防いであげているのだわ。むしろ感謝して欲しいものね!」
「高洲の左側は、あみの場所だから」
「ただのお隣さん同士でこんなハーレムを作り出すのは、おかしいだろうがー!!」
さよりは俺の背中ではなく、右腕をがっしりと掴み、左腕はあみが引っ張っている。
鮫浜ではなく、沖水あみがその位置にいるというのも新鮮……とかではなく、やはり姉妹なのだなと感じてしまう。
元々いた学園とはいえ、数か月……特に学年上がりで去っているだけに、俺の背中のことを覚えている奴はいないだろう。
しかも鮫浜支配ではなくなっているとすれば、全く知らない女子や男たちしかいないというのも予想出来る。
「ふふん、ハーレムですって? ハムは作るものではなく、食べるものだわ! 作りだしてなんかいなくってよ?」
「あー……うん、さよりはアレだったな。ハーレムは確かに作らない方がいいな。悪かった」
「どうして憐れみを向けられているというのかしらね。何かおかしなことを言ったかしら……?」
「気にするな! さよりには関係無いぞ」
あまり賢くは無く、免疫も無いと思っていたが、さよりに横文字は使ってはいけなかったようだ。
「彼女は天然記念物?」
「それを言うなら天然な。あみも大概だと思うぞ」
「……?」
首を傾げるあみが可愛いと思ってはいけない。
鮫浜とは反応がまるで違うし、妹でもあるが、男に対して意識をするといったことがないだけなのかもしれない。
学園に着いたところで二人の手を無理やり引き剥がし、まずは職員室に向かう。
「面倒ね」
「どこへ?」
「教員がいる部屋だ」
「目はまだいるのかしら?」
「いるだろうな。よく出会ってたし……」
「……目?」
「目と書いてサガンという先生がいる。気さく過ぎてうざいが、悪い人じゃない」
あの人は鮫浜に取り入っていたわけでは無かったが、変わらずいるのだろうか。
「高洲……手続きは終えてる。先に行く。廊下で待つから」
「ん? そうなのか? だけどクラスが同じとは限らないだろ」
「同じ。行けばお馴染みがいるから」
「お馴染み? 上福岡くんのことか? それとも……うき――」
「それ以上言うつもりなら、湊をここで弾き飛ばしてあげるわ」
さよりの天敵……いや、もうそれ以上のタブーな奴になったか。
これ以上は言わず、あみだけを行かせて俺とさよりだけが職員室に向かった。
『バシーン!!』
「いてぇな……どこの野郎だ……ったく!」
「いい音をさせるな、相変わらず。久しいな、高洲。いくら親しいからって、野郎呼びは看過できんぞ」
まだ教員もまばらな職員室に入ろうとしたら、背中に衝撃と痛みを感じた。
居酒屋バイトをしていたとはいえ、今の背中はかつての盾では無くなっている。
こんなことをやる奴は、目しかいないわけだが。
「そこの教師! とっとと手続きを済ませて下さらないかしら?」
「誰かと思えば池谷か。高洲を追いかけて転校して行ったと聞いたが、戻りも同じか。仲がいいな!」
「な、なななな、仲なんて良くなくってよ! とにかくさっさと手続きを――」
「何言ってるんだお前らは。手続きなんてもんは、すでに向こうの学校からされているぞ。学園がする事務処理なんて無いようなもんだ」
いやに手際が良すぎるし、あみの言っていたことも気になる。
「おい、さより! 教室に向かうぞ! 急げ」
「お待ちなさい。どこの教室か知っていて?」
「……だよな」
「ふふん、仕方のない男の子ね。わたくしが先導してあげてもよろしくてよ?」
「じゃあ頼む」
「す、素直なあなたは嫌いでは無いわ。こっちよ」
この際細かいことは気にしないことにした。
教室に行けば分かることだが、外観も中身も東上学園なのは間違いが無いだろうが……




