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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
4章:カノジョの想い

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327.キケンな彼女たちの狭間 後編


 あゆと嵐花の狭間から抜け出せたのに、栢森かやもりの彼女たちはそれを許してくれない。


 楓子と名乗った彼女だけは、一途に想う誰かがいることですぐに放してくれたが、他の女子たちは嵐花に仕える侍女ばかりで、俺をこの場から逃がすつもりはないらしい。


「嵐花とか、鮫浜とかよりも、オレにしとけよミナト。触れ合った仲だろ?」

「何だ、お前か」

「そう、ミナトのユウ」

「悪いが見ての通り、俺は鮫浜の男だ。俺に近づけば、ユウもただじゃすまないぞ」

「……本当か? 脅されてそういう関係なんじゃないのか? 嵐花と違って、鮫浜はそういうことが当たり前に出来る非情な女って聞いた。ミナトがそうなら、栢森の力でミナトを守ることが出来るぜ?」


 南中付属にいた友禅ゆうぜんは、唯一男だと思っていたが、栢森の護衛でしかも残念なオムネさんな女子だった。


 浅海と似た感じだったし悪い奴では無いが、俺によこしまな想いを抱いていた以上、深く関わらないことにしていたが……


「嵐花もそんなことを言っていたが、鮫浜から守るとか正気かよ」

「栢森なら出来る。鮫浜の言うことを聞きたくないなら、栢森家に入れよミナト」

「入る意味がどういうのか分からんが、俺は今は……あゆの彼氏だ。嵐花はやりすぎたって思うぞ」

「……」


 ユウは黙りこくってしまった。

 俺が言ったことに多少は同意していたからだろう。


 それはともかく、嵐花とあゆが言い争いをしている隙に他の彼女たちに話しかけながら、この場をどうにか脱しようとしていたのだが、どちらも行動が早かったことを忘れていた。


 四つん這いになりながら、姿勢を低くして去ろうとしたのが良くなかった。


「ねぇ、湊くんはどこに行くの? わたしならここ。ここに来てもいいよ?」

「ふごっ!?」

「う、ん……そう、それでいいから」


 どういう態勢で俺を待ち構えていたのかなんて、考える余裕は無い。

 視界は真っ暗、それでいて前にも後ろにも動けない……という時点で、あゆによって羽交い絞めを喰らっているということだろう。


 それも背後からではない。

 目を開くことが出来ず、息継ぎもかろうじて出来るということは、俺の顔はあゆのたゆんとしたオムネさんに埋まってしまっている、というのが正しいはず。


「むがっ!? ほがっ……」

「――駄目、駄目だよ? 言ったはずだよ? 湊くんは逃げられないって」


 鮫浜あゆはダチの浅海に護衛されていたが、実のところ、か弱い令嬢では無い。

 少なくとも華奢なさよりの蹴りなんぞよりも鋭さがあるし、小柄ではあっても、格闘が出来る程度の鍛錬をして来たと聞いていた。


 つまり、俺なんかより全然強い。

 対する嵐花は、蹴りこそ鋭いが鮫浜より強いかというと、そうではないのが実情だ。


「はーふー……もがっっ!!」

「うん、興奮して来た、来たよね? でも、ここじゃ駄目。だから、帰ろ?」

「(タースーケーテー)」


 意識がヤバいというか、深すぎるキスよりも強力な力で本当に落ちそうだ。


 嵐花はあゆの力に太刀打ち出来なかったのか、声も聞こえて来ない。

 豊か過ぎるオムネさんの闇の中で、俺は意識を―― 


『鮫浜! あんたはみなとのことを分かっていないようだね!』


 意識を落としかけたが、何かに優しく介抱されながらどこかに運ばれてしまう。


「……どういうつもり?」

「そのまんまの意味だな! あたしはあんたと違って、本気で見つけてるんだよ!! 鮫浜なんぞに目の前の男を取られるわけには行かねえな」

「――本気? 鮫浜を敵にするんだ?」

「鮫浜って言ったって、あんた実娘じゃねえだろ?」

「それが何?」

「必死に男を捕まえるんなら、みなとじゃなくてもいいだろって話だ。許婚は追放に成功したんだろうが、もう一人の男がいるんなら、ソイツのことを見てやれよ!」

「……関係ない」


 ううむ……許婚というと鮫島のことなんだろうが、国外追放に成功したのか?

 もう一人はもちろん、浅海のことになる。


 あゆはどうして浅海を避けるのか。

 あの手紙に書いていたことを鵜吞みにするわけじゃないが、浅海の気持ちを考えてもいないとか、それはあんまりだ。


「ちょ、たんま。俺を助けてくれたのはありがたいんだが、ゼーゼー言っているのが丸聞こえだぞ? ルリ」

「こ、これでも元カノなの。悪の鮫浜から引き離すのも、ルリの役目なの!」


 嵐花に命令されて一時的に彼女にされた挙句に、転校させられた小さなルリまでいるとは驚いた。

 

 栢森嵐花の気持ちもハッキリ聞けていないが、現彼女となったあゆに厳しく言ってみるしかなさそうだ。


「ルリ、頼むから立たせてくれ」

「どうするおつもりですの?」

「話し合いだ」

「行っては駄目ですの! 高洲さまの背中にくっついていたい……」

「ルリのオムネさんも魅力的なモノがあるが、俺は鮫浜と話をつける。そういうわけだから、もし嵐花の方につくことになったら、またよろしくな」

「……どうせあなたは、鮫浜でもなければ嵐花さまでもないくせに」

「――かもな」


 色んな色仕掛けやオムネさんに遭遇して来たが、あゆには厳しい言葉をかけるしか術はない。

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