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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第二章:美少女たちの恋活祭り

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26.恋仲という名のカタストロフィですが、何か?


 朝目覚めると、部屋の中の一角……そう、秘蔵すぎるディスクが無くなっていたことに気づいた。無くなって困るものは無いというのは、さよりに向けた言葉であって実はあったんだなこれが。


 まさか私物というか、他人の部屋に勝手に来た奴が、それを手にしてパクっていくなど予想すらしなかった。ましてや、あれは女子のさよりには何の関係も無い中身であり、一人で家にいてもそれでも、部屋でこそこそと楽しむためのものであって、さよりごときが手にしていいものではないのだ。


 部屋で怒り心頭になっても仕方ないので、適当飯を口にして家を出ると何故か池谷家の社畜、いや、親父さんから声をかけられてしまった。


 とてもじゃないがどこかの社長様には見えなくて、どこにでもいる人が良すぎるオッサンにしか見えない。そして親父さんの陰に隠れるように、さよりが俺の方をじっとりと見ている。


「おっ! おはよう! キミが高洲君だね?」


「おはようございます。はぁ、まぁ……」


「ふぅむ。そうか、キミがか。娘の言った通りのいい背中をしているな! もちろん、顔つきもいい。これならいつでも嫁にやれそうだ。いや、朝の忙しい時に失礼したね。ご両親にもよろしく頼むよ! では」


「はっ? あぁ、はい。言っておきます」


 何か知らんが、池谷家の親父とアホ娘は背中フェチなの? 姫ちゃんはどっちにも属してないからまともということが分かる。


 会ってはいないけど恐らく、母親もまともなんだろう。ということは、親父さんとさよりがおかしな親子ということになる。


 それはそうと、親父さんはさっさと会社へ行ったのにさよりは何故動こうとしないのか。過ちに気づいて、秘蔵ディスクを返しに来たか?


「湊! あなた、危険すぎるわ。何なのかしら、あなたのお部屋に置いてあったアレは!」


「やっぱりお前か。アレは俺の心のよりどころディスクであって、お前の手に負えるモンじゃない。返してもらおうか」


「それにしてもお父様ってば、恋仲と勘違いをなさったままで会社へ向かってしまったけれど、湊のようなろくでなし野郎とはそんな関係にすらなるわけがないわ」


「人の話を聞けっての! 俺の秘蔵すぎるディスクを返してもらおうか」


「無いわ」


「なにっ? じゃあお前の部屋にあるのか? 部屋に乗り込んででも返してもらうぞ」


「無駄ね。犯罪になる前に防いで差し上げたの。危険すぎるわ、あんなの。危険って書いてあったのですもの。燃えないゴミに出してあげたわ。どう? 嬉しいかしら? 感謝こそすれど、恨まれる筋合いなどなくってよ?」


 この野郎! いや、残念を通り越して気の毒としか言えないな。心の広すぎる俺は、この無残なオムネの美少女を、憐れむような眼差しで見つめてやろう。


「ふぅ……いいさ、さよりんは残念なお嬢様だものな。犯罪を犯したのは自分自身だということに気づいていないようだから、俺はお前を一生憐れんでやるよ」


「あぁ!? ガタガタとこまけぇこと抜かしてんじゃねえぞ、背中野郎! ろくでなし野郎がわたしを憐れむなんざ、500、あれ……1000万年だったかしら? と、とにかく、早すぎるわ!」


「お前会うたびに退化してるのか? きちんと飯を食べてんのか? その割には育ってないようだが……」


「そんな口ごたえをしてもいいのかしらね? わたくしが湊ごときのお部屋に、ただ黙って入ったとでも思っているのかしら?」

「ん? どういう意味だ?」


「ふふっ、お父様が開発した小型カメラの飛行体。それをあなたのお部屋に置きっぱなしにしておいたわ。あれを使えば、あなたのあられもない、見たくも無い寝姿を全世帯に……あら、違うわね。全世界だったかしら。とにかく、放映されてしまうわよ? ふふん、何かわたくしに言うことは無いのかしら?」


 何を言うかと思えば、小型カメラの飛行体? あぁ、なるほど。社畜の鏡のようなお方だったのか。


 そしてコイツがお嬢様と連呼するのは、どうせ小さい頃から撮影サンプル的なことをされまくりで、撮られまくったことをどういう解釈したかは分からんが、特別な扱いをされていると思い続けているんだろうな。事実、美少女だから映像映えするだろうけど。


「さより、お前……それの使い方は知っているのか? ただ置いただけで動くならそれはかなりの高性能だぞ? それは遠隔操作で動かす物なんだ。つまり置いただけでは動くことすら出来ないし、飛ぶことで本領発揮だ。それにいいのか? そんな極秘なモンを勝手に持ち出して。お前こそ犯罪に触れてんじゃねえの?」


「え? ええ? そ、そんなことはないわ。と、とととにかく、湊は大いに反省すべきよ! そ、それではわたくしは先に行かせてもらうわ」


「お前、一人で学園に行けるようになったんだな。進化したな」


「ふ、ふんっ!」


 これはさよりの出まかせだ。先に進んでおいて、何故か姿が見えなくなる時がある。気にせずに歩き続けていると、知らぬ間に背中に対してだけ、一点集中型の視線を感じてしまうことが多くある。どうせ途中で道に迷って進めなくなり、俺が通り過ぎるのを待って後ろに付いているのだろう。


 あまりにも可哀想なくらい残念な所は直っていない。一年単位で成長できるのかとても不安だ。そして親父さんにエールを送ろう。


 教室に着くと、何やらざわざわと騒がしかった。もしやこれは刑が執行された後か? 肝心の鮫浜は、至って静かに読書をしていた。俺から声をかけていいものだろうか。


 それというのも、昨日の夜のことが関係している。オバカなさよりと違って、鮫浜にはどうにも苦手意識がある。俺の部屋に入っていたり、膝枕をされたりしていても、それでも油断出来ない女子であり簡単には心を開いていない気がするからだ。それでもやはり、例の彼の姿が見えないのが気になる。


 もちろん既にモブへ戻してあげた、あるいは、本当に滅してしまったかなどと聞けやしない。鮫浜に声をかけようか迷っていると、目先生が入って来てしまった。


「静かにな! えー突然のことだがウチのクラスから、二人ほど他校に転校していった奴がいる。一人は汐見だ。彼は思い出が出来たとかで、満足しながら移って行った。そしてもう一人は、東上とうじょうはな子さんだ。二人が転校していったので秋からは、新たに二人の転校生が入って来る予定となっている」


 そうか、汐見君はいい思い出を作れたのか。鮫浜に告って笑顔をもらって……それ以上は聞くまい。そして東上はな子さんか。まるで氏名の記入例みたいな名前の女子だな。結局会うことも見ることも出来なかったが、それも彼女の運命だったのだろう。


 気づかれないようにチラっと鮫浜を見てみると、俺をジっと見ていた。その目はまるで獲物か何かを狩るような目をしていた。さ、寒気がするが、耐えて見せる。そして口角を上げて、くすっとしているようにも見えた。


 その微笑みで今までどれくらいの男子が転校していったのだろうか。そう思ってはいけないけど、そんな微笑みにしか思えなかった。


「高洲君は安心していいよ……」


「へっ?」


「私がいるからね。私が」


「お、おぉ」


「誰も、誰にも――」


 何か呟いているけど気にしないようにしよう。もうすぐ体育祭なのだし、気を引き締めなければな。

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