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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第1部第一章:天使と悪魔と美少女

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23.天使の微笑みは闇堕ちへの入り口らしいです。


 平日のバイトがしばらく無くなってしまい、放課後は教室または、学園内を無駄歩きするようになった。そうすると普段は気にしていなかった光景が見えてきたり、自分だけしか知らない、見ていない彼女たちの仕草や美少女っぷりが見えてきたりするものである。特に同じ教室にいながら、自分からはお互いに話しかけない美少女二人と周りの動きをじっくりと眺められるような余裕さえ生まれていた。


 美少女二人は浅海のいるBTフィールドには入っておらず、それぞれの席で何者をも寄せ付けない何かが出ているようだ。特にあゆに関しては、見えない闇の結界か何かが常に発動していて、名も無きモブ男子の生命力を、一瞬にしてライフゼロにしてしまうという世にも恐ろしい微笑みが稼働中だ。俺が慣れすぎて耐性が出来たのか、あるいはすでに闇に足を突っ込んでいるからなのか、あゆの微笑みにはむしろ快感さえ覚えているかもしれない。そして今日は、体育の授業で天使の闇を全方位に向けられる日でもあった。


「鮫浜さん、あの、ネットを張るので倉庫から、も、持ってきてもらえないかな?」

 勇気ある男子に敬意を表したいと言いたいところだが実のところ、あゆに話しかけられる男子は多くない。俺は彼女の彼氏でもなんでもないのだが、俺だけがゼロ距離で近付ける男ということもあり、一部男子からは羨望の眼差しを受け始めてきているようだ。しかしこれにも狙いがあって、「高洲が近くにいれば天使の微笑みは必ずゲット出来るぞ」などと、よく分からん都市伝説が広まり始めた。安心してください、それは気のせいです。俺から声をかけた時は何かのスイッチが入るらしく、よく話し出すあゆだが、近くにいても声をかけずにいる状態だと、心の入っていない天使が降臨し、天使の微笑みを誰かれ構わずに発動するようだ。


 つまり、俺と話すときには敵対心ゼロ状態をキープしているが、近くにいながら口を聞かない状態であれば、そこにいるのは鮫浜あゆであってそうではない何かが、他の男子に微笑みを与えているという、想像したくもない何かが降りてきていることになる。もちろんこれはホラー物語ではない。それが鮫浜なのである。


「……」

「あ、あの、鮫浜さん? 聞こえてるかな」

 無駄だ。たとえ先生がいようと、体育でみんなが協力しなければならない状況であっても、天使はお休み中であり、見知らぬ奴に反応するほど平和な世界ではない。そう思っていたのに、俺がたまたま鮫浜の近くを通ってトイレに行こうとしたら、「くすっ……」と、笑いが聞こえたと同時に、周りの男子が照れながら自主的に動き始めていた。俺がスイッチ入れちゃったかな? いやいや、怖いよ?


 トイレから戻ると、すでにバレーボール用のネットやら何やらが取り付けられていて、鮫浜は立ったままで特に何もしていなかった。天使の微笑みは最強ですか? 声も発していないのに微笑むだけで男が勝手に動いてくれるなんて、便利すぎる世の中じゃないか。これではますますクラス内で、鮫浜と他の女子が関わりを持たないじゃないか。なんて思っていたが、池谷も関わっていなかったので良しとしよう。まぁ、アレの場合は、男子のみならず女子に対しても自動的に敵を量産しまくる奴だから、見た目がアレでも好意を持たれる心配は無いのだ。未だにお嬢様だけは特別扱いされて当然と思っているようだし、初期に比べても男子に対する見下し感が半端ない。あれはもう放置した方がクラスの為にもなる。それに引き換え、たとえ心が入っていなくても、誰にでも天使の微笑みを振りまく鮫浜は、男子からの人気が高いのだった。そして久々に黒いウワサを流しまくった汐見君が登場である。準レギュラー昇格かな?


「高洲、俺さ、鮫浜に告りたいんだよ。いいかな?」

「汐見君は何故俺に許可を求めてんの? 俺は彼氏じゃないし好きでもないぞ。いや、その前に池谷が好きなんじゃなかったか?」

「え? 池谷? そうだったか。好きだったかどうかの記憶が無いんだよな。それに、池谷はレベルが高すぎるし、俺らのことを生物扱いしてるしアレは無理だ。それに引き換え、鮫浜は俺らにも微笑んでくれるし、可愛いからな」

 そういや俺に流れていた黒いウワサがピタリと流れなくなったんだが、一体どういうことなんだろうな。まだ75日経ってないし、池谷自身は何も変わってないのに。汐見の言う通りなのだとしたら、記憶が消されたか、あるいは無かったことにされた何かが起こったかのどちらかなんだけど、まさか、な。

 

「構わねえよ(ただし、命の保証はしないよ)」

「うおっしゃー! 俺はやる。やってやるぜ!」

 逆に殺られなければいいのだが、もちろん身体的な意味じゃない。精神汚染という意味で。でも美少女というか、鮫浜は可愛いタイプだし好きになっちゃう気持ちは分かる。少なくとも心のゲートさえ開けば、あら不思議! 何かの魅力に憑りつかれて、鮫浜さえいればいい。なんてことになってしまう。とはいえ、俺からも鮫浜に一言言っておいてやろう。告白には笑顔で返せよと。


「あゆちゃん、ちょっといいかな?」

「今日は白だけど見る?」

「後でいくらでも見てやるから、それはやめようか」

「分かった。で、何?」

「あゆは好きになれそうな男はいないの? お前って可愛いし人気があるんだ。だから、今の時間が終わったら告られるかもしれないぞ。もしソイツが良さそうだと思ったら、返事をきちんと返してやってくれ」

「なぜ?」

「返事を返すだけでも救われるからだよ」

「高洲君は? 君は嫌じゃない? 私をいつも見ている高洲君は私が他の男子に見られてもいいの?」

 俺の視線に気づいていた、だと? 恐ろしい察知能力だ。じっと見ていたわけじゃなくて後ろの席だから視界に鮫浜が入って来た時に気にしているだけなのに。サーチ能力広すぎだろ! 君は狩人なの? いや、待てよ……以前料理の時に、あの肉を狩ってきたとか言ってたが、本当に狩人か? まさかだろう、うん。


「見るのは自由だからね。それが俺じゃなくても。黒とか白を見られるわけでもないし、あゆの笑顔を思いきり見せるだけなら、俺は何も嫌じゃないし何も文句は言わないよ」

「そう……それなら返事する。本当にいいの?」

「うん。問題なし。あゆの笑顔を見られるだけでソイツは満足するはずだ。それ以上は求めてこないはずだぞ」 

「――分かった」

 何やら随分と念を押して聞いてきたが、もしかして告白を受けてもいいの? って感じに聞こえなくも無かった。そして笑顔を他の男に見せて精気を吸ってもいいんだね? 何て意味にも聞こえた気もしないでもない。考えすぎだろう。鮫浜は闇天使だが、何もしなければ相手を堕とすような天使ではないはず。


「なん……だと……? 今なんて?」

「ん、オーケーした。何か問題でも?」

「ナ、ナニモナイヨー。で、でも、何でそんな……よりにもよって汐見なんだ?」

「すごく褒められたから。好きとも言ってくれたし。だから」

「いやいやいや、急すぎるぞ。俺の心の準備が出来上がってなかったのに! 俺はあゆなら相手をブラックアウトさせてそのまま暗闇の世界へご招待するかと思っていたのに。何で、どうして……」

「私、高洲君に聞いた。聞いたよ? 本当にいいの? って」

「いや、そ、そうなんだけど。で、でも、そんなバカな」

 しかも消えたとはいえ、黒いウワサを流しまくった張本人だぞ? 本人には記憶が無いらしいが。まさか告白をオーケーするだなんて思わないじゃないか。ど、どうしよう。でも俺は好かれてないし、ただの隣近所なだけだし。ヤメロとも言えない。うう、何てこった。


「フフッ……明日が楽しみ」

「そ、そうか、鮫浜にも彼氏が出来たんだな。明日からは見える世界も変わるから、楽しみにもなるよな。俺は鮫浜の恋路を応援するぞ。頑張れよ!」

「何のこと?」

「え? いや、汐見と付き合うんだろ?」

「そんなこと言ってない。オーケーしたとしか言ってない」

「ほえ? じゃ、じゃあ何をオーケーしたって?」

「私の笑顔を見せる。そして――」

「うん? 最後聞こえなかったけどナンダッテ?」

「明日になれば分かるよ。このクラスには私とさよちゃんと、高洲君、浅海くん。それと後二人くらいしか存在と名前を残すのは許されていないの。他のクラスならいいけど、このクラスは駄目」

「後二人なら汐見もいいんじゃ?」

「男は黙ってモブ化。残り二人は美少女限定枠だから」

 何それ、何その宣伝文句……コワイ、怖いぞ。俺もモブ化しないだろうな? 汐見君……短い付き合いだったな。友達にもなれなかったが、明日でキミの運命は決定したみたいだ。というか、鮫浜に何を告ったの?

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