204.元カノと俺のヨメ? 3
『あなた、もういいんじゃない? ここで口論とか、それは駄目。用事を済ませて、学校に行かないと』
このまま話し続けると鮫浜のペースに嵌ってしまいそうだったその時、黙って見ていたみちるが声をかけてくれた。
「あ……そ、そうだった。俺たちは買い物に来ただけだった。一日中、学校をサボるつもりはないし、もう行くよ。再会出来たのは奇縁かもしれないけど、鮫浜には俺よりも相応しい人がいるだろうし、もういいよ」
「駄目……」
「いや、駄目って言われてもキミから突き放しといてそんなこと言うのは……」
「会いに行く。湊くんのいる所に会いに行く。行くから……」
こんなことを言う鮫浜は初めてかもしれない。
今まで散々俺を監視しまくって、そのことを悪いとも思わなかった鮫浜あゆが、一体どうしたというのだろう。
例の許婚が何かしたのか、それともこの前出会った父親に、何かを命じられているのか。
「へ、変なことをしないって約束出来るなら……」
「しない。湊くんに会いたいだけだから、だからしない」
話し始めて何分か経っているけど、怖そうな黒い人は姿を見せて来ないし、側近のような人の気配も無い。
本当に一人だけで出歩いているということは、何かがあったとしか思えないけど、果たして彼女を信じていいものなのか。
「信じない? 信じられない?」
「……まぁ」
「湊くんに許されるまで、しないから」
「な、何を?」
「ずっとわたしがしてきたこと……覚えていること、だよ」
色々思い当たりがありすぎるけど、全部ってことになるのだろうか。
「それが何なのかは詳しく聞かないけど、約束出来るなら……俺じゃなくて、そこにいるみちると握手して欲しい」
「ん、分かった。する」
とんだとばっちりのようなことをさせてしまったけど、みちるは鮫浜と握手していた。
「……湊くん、またね」
「あ、うん」
意外なことに、あっさりと鮫浜はこの場から離れていった。
みちるという自称ヨメがいなければ、どうなっていたかは分からないけど、以前の鮫浜とはまるで違うだけに、そのまま二人でどこかに行っていたのかもしれない。
「高洲、気が済んだ?」
「ど、どうかな……でも、ありがとう」
「気にしなくていい。高洲の為にしたこと」
鮫浜……あゆは、俺やさよりが通う学校に来てしまうのだろうか。
それでも今の俺の心にいるのは、彼女なんだ――
鮫浜あゆ、もうキミじゃない。




