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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第6章:見えない何かからの逃避

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202/345

202.某闇天使は、やり直したいSS③


「――とまぁ、そんなところですよ? 役立つでしょ、俺」

「……さよりとデート……」

「俺は気に入りませんけどね、最近この辺りをうろうろしてるのは、間違いないってことは伝えておくんで! 報酬を……」


 小賢しいチンピラ風情が、調子のいい時だけ顔を出す。


 どうせいつものように街を意味もなく歩いていた時に、偶然にも見かけただけのくせに。


「この場で渡すのは無いから。後で山女に言ってくれる?」

「へっへへ……それはどうも。俺の勘ですが、戻りたくなったと思うんすよね。あいつ……ま、どうでもいいすけど」

「用は済んだ。もう帰っていい……もっと有力な情報を得ないと、あなたはまた苦痛を得ることになる」

「ひっ……! い、いや、手は出してない! 出してねえからな!」

「出していたら、二度と歩けないようにする……理解したなら消えて」


 浮間なんて男をいつまでも使う意味は無い。


 それでもこの辺りを無駄にうろついている奴を使わないわけには行かないし、わたしの個人的な想いで、鮫浜の人間を使うわけには行かない。


 もし使えば、会長に報告が行ってしまう。


 浮間の言っていたことが正しいなら、周辺の視察を名目に、出歩いてもいいのかもしれない。


「失礼いたします」

「何? 何の用――」


『久しいことだな、あゆ』


 え、何で!? どうして何の予告も無く、アポも無い状態でここに来たの?


「お、お久しぶりです、卯休さま……」

「父とは呼ばぬのか?」

「いえ、そんな……」

「よい。娘なのだから好きに呼べばいいことだ」


 何故父がわたしのいる場所に来る必要があるというのか。


 全て任せると言ったきり、いないものだと思って今まで過ごして来たのに。


「……あゆの意中の男に出会った」

「え!? そ、それは、あの……ど――」

「もちろん、背中のたくましい男の方だ。池谷と一緒にいたから間違いはない」


 浮間の言っていたことは合っていた。


「そ、それで、わたしにどういった用件が……」

「あの男から監視されているだろう?」

「……はい」

「あれはこちらでしばらく抑える。その間、あゆは自由に動け」

「どういうことですか? 自由に?」


 会長自らが会いに来て、自由の身にさせるということは、わたしは用済みなのか。


「期限は秋までとする。お前が意中の男をどうしたいかを決め、その男が再び戻るようなら力を貸す」

「何故そんなことをして頂けるのですか?」

「高洲湊に恩をもらった。それをあゆに渡す。学園の権限と、命令権は全てこちらに戻すが……どうだ?」


 それが条件なんだ。湊くんが会長に何かの優しさを出したのは間違いないけど、それでもわたしには何も残してはくれない。


「それは護衛も……ですか?」

「そうだ。お前は鮫浜あゆではあるが、何もない鮫浜となる。それでいいなら、しばらく自由とする! 学園から離れ、高洲のいる所へ行くのもいいだろう。だが、ここも引き払い……住む場所はあやつの所とする」

「は、母ですか?」

「二度は聞かぬ」


 全てを失い、それでも湊くんに近づいて……母の元へなんて厳しすぎる。


「わ、分かりました。い、一年だけお許しください……彼を、高洲湊をわたしの元に……そうならなければ、許婚は受け入れます」

「……いや、許婚の男は鮫浜に従わず動いた。わしは許婚ではなく、鮫浜を昔から支えて来た八十島に任せるつもりだ。お前もそうだと思っていたのではないのか?」


 八十島やそじま……つまり、浅海。やはり湊くんに近い人間と因縁を作ることになるんだ。


「しかし、母は……」

「それもお前が何とかすることだな。とにかく、それでいいのであればどこにでも行け! ただの鮫浜あゆとしてな」

「――はい、ありがとうございます、父さま」

「来年の秋まで、頑張れよ」


 護衛の浅海はすでに湊くんの元に行った。山女はわたしの所には戻らないだろう。


 湊くんに会える……でも、わたしから離して、追い出して、それでどういう顔をして会えというのか。


 別れて数か月……湊くんは、彼女を作ったのだろうか。


 さより? それとも新たな学校の誰か?


 優しい彼のことだ、決めるに決められず、彼女と決められずに過ごしているに違いない。


 湊くん、あゆはあなたに会いに行く。


 会って、それから……謝って……あなたの傍にいられたら――

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