表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第6章:見えない何かからの逃避

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

201/345

201.元カノと俺のヨメ? 1


 噂だったり思い出しなんかをすると、割と本人と遭遇するという話を聞いたことがある。


 それを予知でもしたかのように、隣のみちるは俺の表情に気付いてすぐに、別の顔を”彼女”に向けだした。


「あなた、彼女はどなた?」

「え? あ……うん、えと……」


 家とか、さっきまで話していたみちるはどこへ行ったのかと思ってしまうくらい、話し方と態度が変化していた。


「彼女は前の学園の”友達”の、鮫浜あゆさんだよ」

「鮫浜……あぁ、この人が――」


 鮫浜に向けた目は、いつものみちると違い過ぎるほど迫力があって、迂闊に話しかけてはいけない雰囲気を醸し出している。


 俺をバイトに勧誘している時点で、鮫浜のことも筒抜けだったとすれば、今見せている態度も、想定してのことだったのかもしれない。


『湊くん、彼女は湊くんの誰……?』


「え、えーと……」

「あなたは答えなくてもいいよ。わたしが答えますから」

「あ、はい」


 答えなんて決まりきっているが、みちるの豹変ぶりに何も言えなくなったので、黙ることにする。


 鮫浜あゆ……彼女には普通なら、護衛役である浅海がいるはずだった。


 しかし浅海は俺の護衛となり、鮫浜からは離れたと聞いている。


 そうなると鮫浜には他の誰かが付いていてもおかしくないが、見た感じ黒服も見えなければ車も近くにいるわけではなさそうだ。


「……さよりとは一緒じゃないんだ? 湊くん、今は違う……違うのかな?」

「違うとは? 鮫浜、君こそどう思ってる? どうして平気な顔で話せるんだ?」

「平気じゃない」

「君が今の時間、ここにいることに対しては何も疑問を浮かべないけど……どうして一人で?」

「……」


 俺がここに来ることも事前に分かっていたとすれば、いても不思議じゃない。


 しかし以前とは違う雰囲気にも見えるし、本当に一人でいるということなのか。


「あなた、もう行きましょう?」

「そ、そうだね」

「そういうわけですので、私たちは行きます。うちの湊に関わらないでくれます?」


 自称ヨメのみちるの迫力が半端ないので、ここは素直に立ち去るべきかもしれないが、いつも強気な鮫浜がしおらしく見えるのは、みちるのギャップのせいなのだろうか。


「さっきから、誰? 何? 湊くんの気持ちを考えて言っていること?」

「あなたに関係の無いこと。元カノさんなら、湊の立場になって考えてみればいいじゃない! どれだけこの人が傷ついたのか、分からないんでしょうけれど」

「……分からない、分からなかった。でも、それでも……」

「もういいですから! あなた、帰りましょ」

「は、はい……」


 有無を言わさぬ力強さで、俺の腕に腕をからめて来たみちるは、そのまま移動しようとしている。


 確かに予期せぬ遭遇ではあったし、何をどう言えばいいのか分からない。それでも何となく、聞きたいことは色々あるわけで。


「――湊くんの今の彼女は誰?」

「え? 彼女? こ、ここにいる……カノ……」

「違う、違うよね? 彼女はそうじゃないって、湊くんの顔に書いてある」

「い、いや」

「分かる、分かるよ? 湊くんの考えていること、思っていること……聞きたいこと。分かるよ」

「……っ!」


 闇天使に闇となる心は隠せませんか、そうですか。


 それはさておき、みちるが俺を守ってくれていることくらいは分かるし、話すことはないのは理解出来る。


 だけど、鮫浜が一人だけでいるのはかなり珍しいだけに、聞けるものなら聞いておきたい。


「みちる、少しだけいいか? 俺はこの人に聞いておきたいことがある」

「……湊がいいならいい。でも、辛くなる前に離れて!」

「分かったよ、ありがとう」

「……うん」


 少しだけ離れてくれたみちるは、俺と鮫浜の様子を見ることにしてくれた。


「鮫浜……」

「いいよ? 何でも聞いてあげる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ