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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第6章:見えない何かからの逃避

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200/345

200.思いがけない望まぬ再会 


「タオルケットをしっかり掛けて。服は朝には乾いているから」

「またこのパターンか?」

「どういうパターン?」

「何でもないです」


 以前と同じで、お互いの服が乾かないまま裸で添い寝をして来るかと身構えていたら、少しは意識をしてくれたのか、みちるだけはネグリジェを着て来た。


 だとしても、同じ寝床で密着されると感触からは逃れられない。


 理性を失わないようにするのが大変なのだが、これも意識しているのは俺だけだとすれば気にすることでもないかもしれない。


「高洲、明日は?」

「え? いや、学校でしょ? まぁ、カバンその他は家に置きっぱだけど……」

「遅刻して行けばいい」

「今日は朝からサボリで明日は遅刻とか、大丈夫なんだろうか……」

「体調不良の高洲。そういうことにすれば問題ないから、朝は付き合ってもらう」

「ど、どこに?」

「買い出し。でも、遠くの商店」


 こっちの学校に来てから、随分とサボり癖がついたような気がする。


 少なくとも東上学園に通っている時は、そんなことは無かったと記憶しているし、そもそも隣には口うるさくも、面倒見の良すぎる美少女たちがいたからなわけで。


 さよりは俺の背中を自動追尾していたが、鮫浜は出会った頃にはすでに学園への道のりを把握していて、俺の隣を歩きながらすんなりと通学が出来ていた。


 それも後から知れば、そりゃそうだと言わざるを得ないけど、あれも全て計算済みだとすれば、どうして彼女は俺だったのだろうか。


 今となっては、会いたい気持ちも無ければ向こうからも会いに来る様子は見られない。


 それだけに今さら聞くことも無いだろうけど、好きとか嫌いは置いといても、彼女の本音はどうなのかが心残りでもある。


「というか、三つ編みはやめたんだな?」

「あれは外用。ここでそれをする必要はないから」

「そ、外用って……誰の為に?」

「高洲」

「俺、三つ編みが好きだとか誰にも言ったことないけど……」

「でもすぐに気付いたし、目を引いた。違う?」

「まぁ……そうだけど」


 萌えるボイスで話すみちるは、俺の背中に自分の背中を合わせて横になっている。


 意識がどうだとか気にする彼女ではないが、俺の言葉を少しは気にしてくれたみたいだ。


「明日どこの商店へ行くって?」

「東上学園の近く」

「えっ!?」

「声が大きい」

「ご、ごめん」

「何か問題?」


 さよりと一緒に歩いているだけで、危険を感じまくったばかりなのに、今度はみちると一緒とか大丈夫なんだろうか。


「俺の前の学園なんだけど……」

「だから?」

「朝に歩いていたら、先生とかに会うかもだし……」

「高洲にはもう関係ないよ? 違う?」

「そ、そうだけど」

「じゃあ腕を組んで歩いて。それなら誰かと会っても、問題は起きない」


 さよりではなく、学園とは無関係のみちると一緒というだけで何も心配はしなくても良さそうだが、通学の連中に出会うことはなくても、誰かと出会いそうなのが嫌な感じがする。


「何か聞かれたり、高洲が嫌だと感じていたら夫婦って答える。それなら問題ない?」

「夫婦? 何でそこまで飛躍出来るのか意味が分からないけど、もうそれでいいや」

「……気まずい相手は、元カノ?」

「んー……そうとも言えるし、そうでないとも」

「とにかく早く寝て」

「オヤスミ」


 何かが起きたわけでもなく、何故か隣り合わせで寝るのが当たり前になっているのが気にはなるが、何となく落ち着くのはどうしてなのか。


 迫られることも無いまま、朝を迎えた。


「朝ごはん出来てるから食べて」

「うん」


 いつもの日常とは何かが違う、非日常体験のような気もするけど、心地は悪くない。


「じゃあ行こう? チャリじゃなくて、途中までバスで行くから」

「お、おー」


 拒否も無ければ迷いも無いみちるは、俺と一緒にバスに乗り込んで、俺の地元に降り立った。


「やっぱり、まだ学生が多いから、腕組みじゃなくて引っ張り続けるから」

「ん? 了解」


 いつもの見慣れた道ではないみちるは、何となくぎこちなさを出しながら、俺の服の袖を控えめに掴みながら歩き始めた。


 俺にとっては一年以上は通い慣れた道と商店なだけに、今回ばかりは何となく自分が主導権を握っているような気がして、落ち着いて堂々と背筋を伸ばしながら歩くことが出来た。


「震えは?」

「無いよ。みちるこそ、怖くないの?」

「高洲がいるから平気」


 恐らくこの言葉も、みちるにとっては意識の無い言葉なのだろうと思えば、気が楽に思えた。


「買い出しの店はどの辺?」

「人通りが寂しい角」

「じゃあ、あの辺かな。みちるは道を知っているかもだけど、俺も知ってるからついて来て」

「分かった。高洲にしては自信満々だから、面白いね」

「まぁ、散々歩き回った場――!?」

「どうかした?」


 どうしてかと言われれば、当たり前だろうと誰もが言いそうだが、それにしたって本当に。


『湊くん……?』


 彼女の姿、声を聞いただけで、それだけで緊張が走った気がした……

200話到達です。


お読みいただきありがとうございます。

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