191.さよりと甘い時間 ①
彼女宣言をして肩を抱いただけなのに、さよりは興奮しすぎて熱を出してしまった。
浅海の協力で保健室に運んで来たのはいいとして、これからどうするべきか。
「何で保健の先生がいないんだよ……」
「湊……湊~」
「ん? どうした、さより」
「えへへ……」
「なんだ、寝言か」
どうやら心地のいい夢を見ているようだ。
こいつがこんな無防備な状態で寝顔を見せているのは、いつ以来だろうか。
俺の部屋に来て、涙を流しまくった時に眠ってしまった時だったはず。
さよりは誰から見ても、とてつもない美人だ。俺も出会った当初、言葉遣いの悪さと変な言葉を抜かせば、すぐに惚れてしまってもおかしくないとさえ感じていた。
好きにもなっていたし、惹かれてもいたけど、選んだのは鮫浜あゆの方だった。
そのことで誰よりもショックを受けたのはさよりであり、俺も自責の念にかられていたりする。
「……うーん……あれ? ここはどこ?」
どうやら回復したらしいが、これからどうすればいいんだ。
「ここは、さより。俺は保健室だ」
「保健室……そうなのね。ねえ、湊」
「ん?」
「このまま連れ出して、湊のお部屋に行きたいの……」
「いや、学校来たばかりでまだ朝なんだが?」
教室にも入ってないから、このまま帰ればさぼりどころか、ただのずる休み。
クラス連中と姫に見られているだけに、明日からどうなることやら。
「嫌?」
「そうじゃないけど、どうやって学校から出ていくんだ?」
「湊と手を繋いで出たいの」
珍しく弱気になっているさよりだが、彼女になった記念日として、たまにはこういうサボり方もいいのかもしれない。
「分かったよ。熱を出させたのも俺が原因でもあるし……ほら、手を出して」
「湊が優しいわ。竹槍でも降るの?」
「降らねーよ! 何で槍限定なんだか」
「……ん」
「行くぞ? 立てるよな?」
「立てない……抱っこ」
くそう、可愛いと思ったらなんか駄目だ。
「おんぶならやってやる」
「じゃあ、背中見せて」
「ほらよ」
お姫様抱っこで学校から抜け出してサボるのは、何となく気が引けるのでおんぶで手を打った。
「彼氏の湊、外に連れて行って?」
「彼女のさより、行くからな? 後悔するなよ?」
「しないもん。好きなの」
「あ、あぁ」




