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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第5章:湊とカノジョの交際編

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189.夢でもいいので抜け穴とか道を希望します


 おいおいおい、俺は最大の大馬鹿野郎なの? 


 あれだけさよりに何も変わらないぞ? とか言っていた俺が、一番浮かれまくっているとか!


「あぁぁ……湊ぉ……好きなの……」

「う、うん。と、とりあえず、とにかく俺だけを見つめて口は開くなよ?」

「は、はい、あなた」


 これはいかんぞ。


 仮の交際、正式な彼女じゃないのに、その気にさせたら駄目なのに!


 しかももう一人の彼女もいるというのに、分け隔てなくしなくてはいけないというのに駄目だぞこれは。


「みなと~! 早くも関白宣言か? いいねぇ、あたしはそういうシチュエーションも嫌いじゃないぜ!」

「え、いや……嵐花が何とかしてくれないんですか?」

「彼女だろ? ()()

「そ、そうですけど……だけど、ここまでするつもりはなくて」

「あたしは、そういうのを作り出したみなとを大いに期待してるぜ? 最後はあたしが――だけどな!」

「え?」


 もはや後戻りが出来ない状況だ。


 嘘ではないのだから、このまますました顔で、教室に入ってしまえばいいわけなのだが……


「っと、そ、そういうことなら、悪かった。高洲、お、俺は教室に入っとく。彼女と仲良くな!」

「お、おい、鮫島!」

「もう怒らせることは言わないでおく。マジで悪かった」


 鮫島が俺を怒らせる、もしくはわざとけしかけていたのは、鮫浜とのことが関係していたようだ。

 

 しかし今は、この際どうでもいい。


 鮫島を始めとして、他の連中は何食わぬ顔でぞろぞろと教室に入って行くのは誤解が確定で、非常によろしくない。


 嵐花もニヤニヤしながら入って行くし、これは修羅の妹だけを残して行ってますか?


「なーんだ、高洲君はその子で決めていたんだね? お姉さんは無駄に取り越し苦労したよ。てっきり……まぁ、ガンバレ!」

「あ、明海さん、ちょっと待ってぇ~」


 俺の顔をじっと見つめまくっているさよりは、がっしりと腕を組んで離さなくなっているわけだが、この場に残されているのは、ただ一人の修羅である。


「へぇ……そういうことだったんですね? わざとわたしを怒らせて嫌われようとしたのは、そういうことだったんだ」

「ち、違うよ?」

「何が違いますか? ()()()は、さよりと付き合っているからわたしから離れたんですよね?」


 一番厄介な相手だけ残して行くとか、同じクラスの連中は優しすぎるじゃないか。


 さよりはもう、姫がいるとか関係なしに俺にくっついて離れないし、逃げられない運命?


 まさかさよりと交際するってだけで、こんなに危険なことになるとは思わないぞ。


『あははっ、相変わらず大変なことになっているね』


 ん? この声は今度こそ、救世主かな。


『湊、右手は空いているよね? 右手を出してくれないかな』


 左手というか、左半身にはさよりがくっついていて、もはや金縛り状態。


 かろうじて右半身は自由が効いているが、右手を差し出して何かが変わるのか。


「こ、こうかな?」

「は? 湊さん、その右手は何ですか? わたしと仲直りの握手でもするつもりですか?」

「姫ちゃん、言葉遣いが直ってるよ?」

「お言葉をお返しします! わたしに許されたいなら、さよりを剥がしてください!」

「それは難しいなぁ……」


 もちろん、仲直りの右手では無いわけで。


 右手を差し出したものの、握手をしない俺の態度が煮え切らないのか、姫は腕を組んで威圧的な態度を取り始めたようだ。


『湊、今だ! 走れ!』


 お、おお?


 姫の隙を狙っていたのか、とにかく声のする方といっても、姫の横をすり抜けて行くわけだが。 


「あー! どこに逃げるんですか! 卑怯者! 湊さんの変態! バカッ!」

「ご、ごめんね~! あ、あとでいくらでも謝るから、変態は叫ばないで欲しいなぁ……」

「うるさい! 変態と浮気野郎!」


 何でよりにもよって、俺のクラスの前で叫ぶのかな。


「さより、走るからそのまま捕まってろ……ん? おい?」

「はぁはぁはぁ……湊……」

「沸騰しすぎてまさかの熱暴走とか、お前どれだけなの?」

「お、お前じゃないもん……さよりなの」

「あーはいはい。さより」

「ふにゃ~えへへ」


 これはこれで可愛いが、それどころじゃない。


「湊も大変だね、本当に。場所が変わっても、そういう運命なのかな?」

「……放っておいてくれ、浅海」

「池谷さん、どうしたの? すごく赤いけど……」

「見ての通り、くっついたままで熱暴走だ。興奮が頂点に達して、マジで発熱したみたいだ。このまま保健室に運んでいくけど、浅海はどうする?」


 どうやらさよりの中の興奮は限界を突破してしまったらしく、マジで意識が飛んだようだ。


「せっかくこの学校で再会出来たから、このまま湊と一緒に逃避行しようと思ってたけど、池谷さんがいるからやめとくよ。気付かれたくもないし、俺は湊を保健室に案内したら消える」

「……許したつもりでも、やはりそうじゃないのか?」

「あぁ、まぁね。湊のことはダチだし好きだけど、池谷さんを好きになるわけじゃない。線引きは簡単に行くわけじゃないよ。湊だって、鮫浜関係のことは何一つ終わらせていないだろ?」

「それは……」

「ま、そういうことだよ。湊はいつも大変なことが起きてるけど、危険なことに関しては俺が守るから、それ以外のことは頑張ってよ!」


 そうこうしているうちに、保健室にたどり着いていた。


 浅海とはそこで別れ、さよりを抱っこしたまま保健室に入ることに成功した。


「すみませーん?」


 返事が無い……ただの保健室のようだ。


 嘘だろ? いや、何もしないし、寝かせるだけだし。


「湊、ベッド~むにゃ……」

「はいはい」

「返事は一度だけなの~」

「はいよ」

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