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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第5章:湊とカノジョの交際編

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185.令嬢による候補の為の教育 B-end


「さーてと、みなとのことは八十島やそじまに任せて、あたしはやりたくもない仕事でもしてくるとするか」

「嵐花は栢森の代表だから忙しいのですか? だから学校もダブりを?」

「い、いや……ダブりは栢森と無関係だ。それを知りたかったら、あたしと登下校することだな! あたしと話をしながら歩きたいだろ?」

「は、はい、したいです」


 返事をしたところで、嵐花はまたしても俺の首に腕をかけながら囁いてきた。


 しかも令嬢モードの言葉遣いで。


「(みなと、敬語じゃなくて構わないわ)」

「(え、でも……舎弟だし、年上――んぷ……)」

「(その口が悪いのね? 塞げば治るのかな? どうする、みなと)」

「(そ、それは、その……)」


 すぐ傍には浅海がいて、俺と嵐花の様子を眺めているのに、どうしてこの人はそんなことも気にしないんだろうか。


 俺の気持ちに気付いていながら、そんなことをしてくるなんて、言葉に出して言えるはずがない。


栢森かやもりさん、湊を困らせるのはやめてくれませんか?」

「割って来るなよ。すぐ済む話さ……」

「護衛であり、親友でもありますんでね……」


 まさかと思うが、浅海は俺に手を出してこないよな。


 俺に対する気持ちがあるのは前々から知っているし、頬キスまでされたことがあるから油断したくない。


「ふふっ、お預けにしとく。今回の教育は、それをするつもりはなかったからな!」

「えっ」


 間近に近付いていた嵐花の唇はすでに遠く、反対に俺の口は彼女の手によって、バチッと音をさせて軽く叩かれていた。


 もちろん痛みがあるものではなく、手のひらで口の上を滑らせるようにして、離されただけだった。


「……ふーん? 栢森さんはそうなんだ?」

「どういう風に思ってくれても、あたしはいいぜ? ともかく、みなとのことはよろしくな!」

「それは当たり前ですよ。明日からで構わないんですよね?」

「それは任せるさ。どのみち、今日で二回目の教育日程は終わりだしな」


 二回目ということは次もあるのか。


 今回はもっと親密なことになるかと思っていた。


 それなのに、新たな女の子であるルリと彼女にされたと思えば、さよりも追加で彼女になるとか、嵐花が何をして、させようとしているのかがまるで見えて来ない。


 見えたといえば、彼女の気持ちは近くには無いということだけだ。


「湊は栢森さんのことが?」

「……どうかな」

「鮫浜あゆとは確かに違うけど、助けてくれる相手が正しいとは限らない。湊はそれを覚えた方がいいよ」

「悪い人ではないだろ? それを言ってしまえば、浅海は話をしに来ることもなかったんじゃないの?」


 簡単に一人の学生を転校させられる時点で、正しくないということくらい分かる。


 鮫浜の場合は、有無を言わさずだった。


 目に見えるか、見えないか、それだけのことなんだ。


「俺は……湊がいなくなった学園にいても、楽しくないってずっと思ってた。中学の時に出会って、あの学園に入ることを決めたのも、湊が一緒だったからね。そこにやましい思いはないよ」

「いや、やましい思いは募らせなくていいぞ」

「あははっ! 湊はいいなぁ……俺はさ、鮫浜家と近くの人間だったからこそ、ずっと仕えて来た人間だったんだよ。だからどっちかと言えば、見たくもないやりたくもないことばかりをやって来てた」

「それは一部なら知ってる」

「そうだね、湊に見せたのは本当に一部だよ」


 俺の憧れの先輩の件とか、学園の人間を一斉に休ませるとかその他諸々。


 そんなのは、闇でもなんでもなかったりするけど、庶民の俺には何もかもが衝撃過ぎた。


「鮫浜は俺のことは何か言ってた?」

「……同じことを言うんだね。知らない間に、心が近付いていたのかな」

「えっ?」

「ううん、湊のことは大して気にしていなかったよ……俺にはそう聞こえた」

「そっか、まぁそうだよなぁ。転校させといて、それでも監視したいとか言い出されたら、真面目にトラウマになりそうだ」

「湊は今は誰かと付き合っている?」


 あれ、ルリとさよりのことは知らないのか。


 あの二人を帰した後に、浅海がいたのもそういうことなのだろうか。


「え、えーと、い、一応いるよ……浅海とは、多分学校で会うことになるかも」

「そっか。よかった……湊は、普通に恋愛をして好きになって、そうして気持ちを固めて付き合った方がいいよ。一時の感情とか、衝撃的な出会い方なんかで流されちゃダメなんだ」


 心にグサグサと突き刺さる言葉なんだが、どう聞いても鮫浜とのことだよな。


「それとさ、俺が湊の為に転校して来たのは理由があって――」

「ん?」

「もしかしたら、彼女が転校して来――」


『みなとー! 仕事を片付けたから、あたしと話をしようぜ!』


 浅海が何かを言いかけたところで、嵐花が戻って来たみたいだ。


 俺を守るために栢森家に入って来たはずなのに、浅海はあまり歓迎されていないのだろうか。


「……栢森さん、どうしてです?」

「あん? 何のことだ?」

「湊に聞かせてはいけないことですかね?」

「別に。ただ、八十島の言おうとしたことの可能性はゼロだよ。それはあたしが保証する」

「でも会わせるつもりがありますよね?」

「……さぁね」


 何やら見えない火花が散っているような気がしないでもない。


「みなと、明日から学校が楽しみだな?」

「はは、そ、そうですかね~」

「彼女に優しくしろよ? もちろん、分け隔てなくだぞ?」

「も、もちろんですよ。あいつに対しても、今まで通り変わりませんよ!」

「ふふっ、ならいい」

「湊、分け隔てなくって何?」

「あ、浅海にはきちんと話すよ。半分は反対する上に嫌になるかもだけどな……」

「んんん?」


 そんなこんなで、栢森家での教育第二回目? は、彼女と気持ちと浅海の登場で終えた。

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