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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第4章:彼と彼女たちの思惑

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172.池谷姉妹は譲らない 姫パート2-1


「ひ、姫ちゃん……ソレは良くないと思うんだけど、やらなきゃ許してくれないのかな?」

「はい。もちろんです」


 俺とさよりがあーだこーだと言っていた中、ようやく姫ちゃんが校舎の中から出て来た。


 おもちゃ候補である砂庭とは話をつけたのか、奴の姿は見えなかった。


 それはいいとしても、さよりの発言権はこの時点から失われ、さよりだけが先に車に乗って待機しているという状況にある。


 やはりというべきか予想はしていたが、姫ちゃんのお願いは、学校の玄関でされるには、あまりに難易度が高すぎた。


「まだですか? 遅くすると母の機嫌も損ねることになりますし、湊さんにもいいことなんてありませんよ?」

「い、いや、おかしいと思うんだ。ここは学校だよ? どうしてここなのかな?」

「どこでやろうと、男である湊さんには役得と言っていいと思いますよ。この機会に、存分に触れてください。多分、これが最後だと思いますし……そうですよね?」

「――あ」


 姫ちゃんは頭の良さに加えて、別の意味でも勘がいい子だ。


 恐らく、今日の俺の訪問は答えを出すつもりがあると、彼女の中で出しているのかもしれない。


「そんな、最後だなんて……」

「いいえ、湊さんはもう決めていますよ? そうですよね。なので、存分に触れて運んでください」


 すでに車内の後部座席で待機しているさよりは、一見するとおしとやかそうな状態で待っている。


 しかし、この行動をしてしまえば運転手がいることに関係なく、窓に顔を張り付けて悔しがる光景が目に浮かぶ。


「わ、分かったよ。じゃあ腰に手を回すから、少しかがんでくれる?」

「どうぞ」


 なんてことは無い、姫ちゃんをお姫様抱っこして、車の後部座席に運ぶだけなのだが。


 車への距離は目と鼻の先にもかかわらず、姫ちゃんの要求は、玄関口から車へ向かうという距離をわざわざ作り出した。


 これで分かりやすいのが、校舎に残っている学生にその姿を見られてしまうことにある。


 外履きに履き替える必要があったわけだが、姫ちゃんはそこから試練を課して来た。


「湊さん、右足からがいいですか? それとも左足……」

「い、いやぁ、素直に靴を履こうか」

「嫌です……湊さんが脱がせてくれないと、叫びますよ?」

「ひ、左足から脱がせようかな~」

「はい、どうぞ。湊さんの両手に乗せますね」

「好きなように……」


 姫ちゃんの試練その一は、もはや場所に関係なく至れり尽くせりな状況を、俺に求めてきたことだ。


 帰宅するだけの学生が白い目で俺を見ていることは分かっているが、今日だけなのだと思うしかない。


 白くスベスベな姫ちゃんの左足が、差し出した俺の両手の上に乗せられる。


 ここからすることと言えば、なんてことはない靴下脱がしであり、そこにやましい思いを持つ方がどうかしている。


「聞いていい?」

「何ですか?」

「ここで素足になるってことは、家に着いても抱っこをするのは必須だよね?」

「そうですけど、何か問題でも?」

「うん、大丈夫。理解したよ」


 疑問を浮かべることがこんなにも無駄なことだと知るのは、この時が最大かもしれない。


「ひゃぅ……湊さんの手が」

「え、ど、どうしたの? 何か……」

「湊さんの手、その感触……覚えておきますね」

「忘れていいからね……」

「……忘れませんよ。私の初めて、初めての――」


 このままでは何かが危険なので、心を無にして姫ちゃんのスベスベな素足から、靴下を速攻で脱がした。


 チラッと外で待っている車を見てみたが、車が内部から破壊されているように見えないので、さよりは大人しく待っているようだ。


「駄目です!」

「えっ」


 ぐいっと首を正面に戻されたかと思えば、目の前には姫ちゃんの顔があった。


「……今は私だけを見てくださいね? 湊さん」

「は、はい」

「時間をかけて欲しかったですけど、家の中、お部屋の中でたっぷりと使わせてもらいます」


 恥ずかしい目に遭いながらも、姫ちゃんの両足から靴下を脱がすことに成功した。


「それじゃあ、湊さん。お願いしますね……あ、手が滑って胸に触れても私は構わないので」

「はは……冗談きついなぁ」

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