168.とある年上女子の報告会SS 第二回
「浅海が高洲くんに?」
「はい、どうしますか?」
「……いいも悪いも無い。この前も言ったはずだけど、浅海は自由、自由だから」
「それであの……」
浅海くんに言われたことを伝えるべきか迷う。
恐らくこのこともすでに、彼女はお見通しかもしれない。
「あなたも行く? 行くんだよね? いいよ別に」
「えっ? どうして……」
「湊くんのクラスメイトとして傍にいるのに、それを使わないのは勿体ない、ないよ?」
あゆさんの側近である私が浅海くんに味方して、あのお店で会うこと自体が問題だというのに、あゆさんは私がすること、浅海くんがすることは気にも留めていないの?
「本当によろしいのですね?」
「あの店は湊くんと出会った場所だから、壊される前に呼ぶのは何の問題も無い。だけど、あの人がお店に入るのは許さない。もし入ろうとしたら、きちんと止めて!」
「はい、それは確実に……」
あゆさんの許婚であるあの人……浅海くんも私も、素性を知らされていない。
だけど浅海くんを護衛から外し、あゆさんの傍から、男を排除するくらいの厄介な人物なのは理解出来た。
「高洲湊とは直に会わないのですか?」
「危険……危険なんだよ。彼は」
「守るためにお会いしないのですよね? 違いますか?」
「……」
高洲君には彼女から振った印象を持たせたけど、実際はそうじゃない。
危険なのは高洲君ではなく、許婚のあの人の方なんだ。
危ない橋を渡らせないためにも、あゆさんは高洲君を学園から追放した。
それなのに、あの人がいたなんてきっと想定外だったに違いない。
「高洲くんとわたしは会わない。もし会ったら、高洲くんが危険……危険だから駄目」
「で、でも、万が一の場合……どうされますか? 私はあなたと高洲君のどちらを守れば?」
「好きにしていい……とにかく、事情が変わったから。あの人が動くようなら、高洲くんは戻すから」
「し、しかし、高洲君の気持ちもお考えください! 鮫浜とは無関係にするべきかと……」
「高洲くんがあの学校で誰かと付き合うことを決めたら、そうする……するよ?」
「では、私は八十島と行動を起こします」
「……ん、お願い」
鮫浜あゆも素直じゃないということかな。
父親……会長の言いなりとはいえ、許婚が今さら出て来てそれに抗おうとするなんて。
しかも高洲君を中心としているなんて、結局諦めてないってことなのかもしれない。




