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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第2部第3章:新たなる恋芽生え

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154.何かの前触れ的な野郎が来た朝


 姐御改め、嵐花の邸宅は間違いなく本物であり、某残念娘とはモノが違いすぎるお嬢様だ。


 あれが年上の魅力なんだなと、何とも久しぶりに胸ドキな感覚になってしまった。


 今の時点では、俺はまだチャリ通学を継続中でウェブを見ることがないさよりには、それとなく引っ越しのことを伝えてから、自宅を離れることを決めている。


「――ってことだから、まだ引っ越しは決まってないんで、よろしく!」

「あら、そうなの? さよりちゃんと同棲でもするつもりなら、部屋を綺麗にしておくけど?」

「何でそうなる! さよりは友達……お隣さんなだけであって、そうじゃないっての!」

「何にしても、母さんは寂しくないからあなたの自由にしなさいよ? 全く帰って来ないわけじゃないんだろうし」

「そりゃあまぁ……」


 俺の母さんは、どういうわけかさより推しである。


 それというのも社畜の親父さんと何度か顔を合わせ、挨拶も交わしているくらいの近所付き合いがあるからなわけだが。


 そこに姫ちゃんという選択肢どころか、妹ちゃんは話題にも上がらないというのが可哀想ではある。


 登校して教室に入るとすぐに、鮫島の姿が見えたので声をかけようとすると、俺の知らない奴が鮫島と話をしている。


 鮫島は姫ちゃんとチカ情報によれば、ただの変態ということなので警戒する必要は無くなった。


 しかし話をしたことが無い奴が、鮫島と話をしている所に割って入るのは、中々勇気がいる。


「お! おはよっす、高洲!」

「おす。じゃ、そういうことで」

「何だぁ? 何でさっさと席に着こうとしてんの?」

「友達と話をしている所を邪魔するつもりは無い」

「あ、あぁ! 高洲はアレか。人見知りする奴なのか」

「そうじゃない」


 人見知りも何も、会話してる所に入って行って、わざわざ自己紹介はしないだろう。


「まぁ、待ってくれ! 高洲、コイツはこのクラスじゃない奴で……」

「だろうな」


 同じクラスだとしても、女子が優勢過ぎて鮫島以外の男と話す機会が、中々ないわけだが。


 消極的な野郎ばかりが集っているせいもあって、自ら自分アピールをしに来る奴もいないから放置していただけに、まさかのアピールをされるとは思わなかった。


「あんたが、高洲湊……?」

「……多分」

「何だよ、何で?」

「何でと言われても困るけど、何か用が? 俺の名前だけ尋ねて自分は名乗らないのか?」

「名乗りたくない。でも、高洲って奴を知っておく必要があるから、名乗る」


 何だコイツは? 友好的そうな外見というとアレだが、俺よりやや身長が低くて大人しそうな奴だと思えたのに、まさかの喧嘩売りか。


砂庭すなばかいり。あんた、椿の知り合いで、それと……みちるの……」

「ん? 椿……? ボクっ娘か? それとも……」


 みちるというと、俺の引っ越し先(仮)の女子の名前か。


 よく分からんけど、椿のことを気にしているということは、鮫島がピンチという奴では。


「いや、待った! 高洲もかいりも喧嘩するなよ? 朝は始まったばかりだぞ」

「そう見えたか? 俺は名前を聞いただけだぞ。鮫島こそいいのか? 椿のライバルっぽいぞ?」

「そうじゃないっての! かいりが好きなのは……」

りょう!」

「あ、やべ……と、とにかく、朝は平穏で頼むわ」


 よく分からないままに、砂庭とかいう喧嘩っ早そうな奴は教室から出て行った。


 何だありゃあ。


「高洲、あ、あいつの好きな奴なんだけど……」

「知らん。てか、どうでもいい。お前こそ、あのボクっ娘を何とかしろ」

「あ、あぁ……それは努力しているけど」

「土下座してねえんだろ? 何で俺に嘘をついてんの? お前本当に優雨のこと追いかけてんのかよ」

「も、もちろんだろ! ボーイッシュ女子は好み過ぎるからな。手強いのも、ボーイッシュ女子の特徴でもあるし、俺は努力しないと駄目なんだよ」


 ボーイッシュ女子……丸みを帯びた頭の彼女も、ボーイッシュ女子といえばそうだった気がする。


「おはよっ、湊くん!」

「はい、おはようございます」

「冷たいなぁ……と、年は気にしなくていいって言ったよ? だから敬語はやめて欲しいんだけど……」

「おはようです、明海さん」

「むぅ……お、おはよ」


 明海さんが来たと同時に、鮫島の奴はいつの間にか席を離れていた。


 恐らく優雨のことで努力しろと説教されたのが、堪えたのかもしれない。


 そういえば嵐花の姿がまだ無いのが気になるが、まさか風邪を引いてしまったのでは?


「――湊くん、聞いてる?」

「はっ? な、何すか?」

「お昼、作って来たから食べてくれる?」

「へ? 何故急にそんなことをされておいでで?」

「キミが可愛いから」

「俺は野郎ですよ? 背中と声だけが取り柄の野郎ですよ? どこに可愛い要素があると……」

「年下くんに優しくするのはいけないことかな? かな?」

「いえいえ、そんなことは」

「いつもじゃなくて、今日だけでもいいんだ。お昼ご飯、食べてくれるかなぁ?」

「はぁまぁ……いいすけど」


 人の話を聞いていないうちに、ただ飯をゲットしていたとは驚きだ。


 お昼というと、大体はさよりもしくは優雨が邪魔をしてくるが、先約が出来てしまった以上は近づいて来ないはず。


 朝の野郎といい、昼の急な昼飯ゲットといい……転校して来て毎日が忙しい気がするのは気のせいか?


「湊くんは年上が好きなのかな?」

「気になる程度ですよ。まだ好きとかってのは分かりませんけど」

「そっか、そっか。うん、おっけ」


 何がOKなのか聞かないでおくが、年上女子に惹かれつつあるのは確かだ。


 高音ボイスの嵐花と違って、低音ハスキーボイスの明海さんも悪くないかもしれない。


 とにかく昼は豪勢すぎる飯にありつけそうなので、これはこれで良かった。

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