152.姐御による舎弟の為の教育 A-3
これはもしやトラウマよ、再び……なのか?
「お、俺をどうするつもりですか!? 姐御は違うと信じて付いて来たのに!」
「――は? おい、待て。何の想像をしているか知らねえが、何をされると思っていやがる?」
「嵐花お嬢様の怪しいレッスン……ですよね?」
「あぁ!? 何でそうなる! というか、お嬢様って言うのやめろ!」
「お嬢様なのは間違い無いのに!? じゃ、じゃあ、何の施しをされるのでしょう? ガクブルなんですが……」
姐御のお上品なお嬢様区間は、あまりに短すぎたのでがっかり感が半端ない。
どう見渡しても牢の中なのに、まるでここが姐御のお部屋のようにも見えるのは、何故だろうか。
「みなと、お前彼女いねえんだよな?」
「いないですね……今は」
「ならいいが、いつもお前の近くにいる女は何だ?」
「それは美少女のことですか? それとも妹キャラ……あるいは萌え……」
「おい! お前、遊んでやがんのか? そいつらのことはどう思ってんだ? 好きなのがいるのか?」
遊んでもいなければ、好きな奴……今はそこに達していないのが現状か。
振られたからといって、吹っ切れたわけでもないし……彼女が俺の監視を続けているという時点で、どうなるのかさえも分からないままだ。
同棲のような形になりそうな子もいるし、放っておけない残念な娘もいる。
しかし現時点では好きとは言えない。
「好きな子は、今はいません。遊んでもいません!」
「お前、あたしの舎弟だよな?」
「舎弟です」
「じゃあ、あたしのモノだよな?」
「程度に寄りますが……どういう意味なんでしょう? 恋人という意味では無いんですよね?」
「……いや、その上だ」
恋人の上? お空の人かな。
もしやこの部屋で俺は昇天をしてしまうのか!?
「みなとは、今日からここであたしの教育を受けてもらう。その上で、社交の場に一緒に出てもらう! 異論は無いな?」
「いやいやいや! めちゃくちゃありますよ! 教育って何すか? 今日からって、家には帰れるんですよね? 社交の場とか……どういう」
「ごちゃごちゃとうるせえし、細かい男だな。そのままの意味だろうが! お前は見込みがあるから、あたしがみっちりと色々教えて、社交の場に出られるようにしてやるってんだ。家には……今日は雨に降られて、このまま帰ればお前は風邪をひく。だから今日は帰さねえ」
いつかどこかで、似たようなことを聞いた気がする。
教育だとかしつけだとか……あぁ、鮫浜と付き合う前にそんなことがあったかな。
◇
「高洲君は私のモノ、モノだから」
「い、いやぁ~はは……どういう意味かな?」
「しつけをしないと、君は言うことを聞かなくなる。姉と妹、どっちがいい?」
「強いて言えば――」
私が望む高洲君を作り上げるとか何とか、さすがに人前にお披露目とかする気は無かったみたいだが。
「ここで泊りっすか? 嵐花さんと二人で!?」
「それが何だ? お前、不埒なことをずっと考えていたんじゃねえだろうな?」
「そのまさかかなぁ……は、はは……」
「腐りすぎてどうしようもねえ性根から直してやる! そこで正座しろ!」
「――ふぁっくしゅん!」
「何だぁ? もう風邪をひきやがったのか? 育て甲斐がありやがるが、健やかにいてもらわねえとあたしも困る。ちっ、みなと! 服を脱げ!」
「ふぁっ!?」
拒む理由はあったものの、地下牢はひんやりとしていたので、くしゃみをしてしまった。
それだけなのに姐御は心配性なのか、エアコンのリモコン操作をしながら、服を脱ぐのを待っている。
「地下牢なのに冷暖房完備って、さすがお嬢様!」
「牢じゃねえ! ここはあたしの二つ目の部屋だ。お前は本当に失礼な野郎だな」
鉄格子で牢だと思い込みもあったけど、まさかの正解。
勉強机があるということは、そういうお部屋で合っているらしい。
「ぬ、脱ぎましたが、下もですよね?」
「だから何だ? さっさと脱げ! あたしのモノになる野郎のモノなんざ見ても、驚かねえぞ」
「いや~それもどうかと……嵐花さんも雨に濡れましたし、体は温めた方がいいんじゃないでしょうか」
別に姐御の柔肌を見たいわけでは無かったが、俺だけが水滴を拭かれているのに、姐御だけは自然乾燥で風邪をひかれては、さすがに罪悪感がありすぎる。
「そこまで心配されるとは、あたしの見込んだ野郎だったわけか……」
「はぁ、まぁ……多分?」
「浴室はすぐそこの扉を通った先だ。みなとは、あたしの後ろを付いて来い!」
「ふぉっ!?」
「いちいちうるせーな! 裸になってるのはお前だけだろうが! こっちだから、早く来い!」
「ですよねー……」




