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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第2部第3章:新たなる恋芽生え

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151.姐御による舎弟の為の教育 A-2


 姐御の言葉遣いがさよりみたいな感じでも違和感はない。


 あいつの言葉はエセだし、本性は駄々っ子だから、アレを聞いている以上は驚きは無いだろう。


「おらっ! さっさと来やがれ!」

「姐御……嵐花らんかさんは体を拭かないのですか? 風邪でもひいたら……」

「ふん、お前みたいにひ弱じゃねえよ。それにお前を拭いたタオルで拭けるとでも?」

「俺の為に使ったんすか? な、何で……」

「舎弟だからだ」

「あ、姐御……抱きついていいですか?」

「バカなコト言ってねえで、黙ってろ!」


 どうやら舎弟には何かを与えるという使命を持っている様子。


 そして姐御の力強い手で引かれた俺は、とうとう邸宅へ足を踏み入れてしまった。


『ランカお嬢様、お帰りなさいませ!』


「「お帰りなさいませ、ランカお嬢様!」」


「ええ、只今戻りました」


 おぉぉ……これが本物のメイドさんか?


 玄関から大広間の両側の壁を背に、毅然とした態度で列を乱すことの無い整った並び。


 どこかの外国にいるような出で立ちのメイドさんの声が、一糸乱れずに姐御を出迎えている。


 そして想像していた言葉遣いは、さよりの作られた令嬢言葉と違い、丁寧な言葉によるものだった。


『それで、ソレは?』


「言葉を慎みなさい。彼は嵐花の――です。ようやく出会えた人を、ソレ呼ばわりとは何事ですか! それとも、嵐花が選んだ殿方に不満でもおありなのですか? 侍女長!」


 ソレとかアレとか、俺はモノ扱いですね、察しました。


 なるほど……姐御は自分のことを名前呼びするのか。


 外では『あたし』だとか、言葉遣いがどこかの番長っぽく悪くなっているようだが、かけ離れたイメージを周りに抱かせて、自己防衛を働かせているのだとすれば、相当にキレる先輩だ。


『申し訳ございません! そうですか、彼が嵐花お嬢様がお決めになった御方……でしたら、今宵は宴を?』


「いえ、近く……社交の場で披露目をすることとします。そこには名のある財閥の淑女が来るのですから、彼を得たことで、栢森かやもりの名を轟かせること間違いないでしょう」


 よく分からんけど、もしやまだ見ぬ社交界という本物のセレブリティな世界に、近付けるのか?


「ラ、嵐……」

「……!」


 無言を貫くしか生き残れないらしいので黙っておく。


「これから彼を、嵐花の第二室で施しを致します。誰も立ち入らないようにお願いします」


『かしこまりました。侍女の誰も寄せ付けることないようにします……ゆっくりと歩まれ下さいませ……」


 やはり言葉の端節だけを聞いていれば、怪しげな教育を施されそうな予感でドキがムネムネ状態。


 嵐花さんの取り決めに従うようにして、ずらりと並んでいた大勢のメイドさんたちは、一斉に上階の部屋へと戻って行く。


「みなとさん、こちらへ……」

「は、はい」


 なんてお上品すぎるお嬢様なのだろうか。


 病んでもいないし、オムネさんも申し分ないし、いい香りが満載過ぎる。


「ここから地下へ降ります。お足元を気を付けて……」

「はい……どこまででも」


 外観が明らかにお城で、いくつもの部屋がありそうだったが、地下室も完備とか完璧すぎる。


「こちらへ……入って下さいね……」

「入ります……どこでも」


 かなり深い所まで下っていくと、これもよく外国の城で見たことのある鉄格子が、至る所にあった。


「……ん? 鉄格子?」

「そこでしばらくお待ちなさいね、みなと……」

「あ、はい……えっ!?」


 ガチャンと鍵をかけられたと思ったら、嵐花さんは俺を牢に閉じ込めてどこかへ行ってしまった。


 おいおい……これはどういうこと?


 牢の中はよく見る場所では無く、勉強机と縄と手錠……何故かキッチンがあり……ベッドもある。


 そして不明の扉が壁にいくつも存在している部屋の広さは、牢にしては広く俺の部屋二つ分といったところだ。


 壁にはA-2と書かれていて、カレンダーも見えている。


 そもそも施しって何だろうか。もしや嵌められたのか!?


「さぁ、みなと! 始めんぞ!」

「は、はひっ!?」

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