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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第1部第一章:天使と悪魔と美少女

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15.ライバル宣言? それはなんのライバルなの?


「湊。どこに行く?」

「ちと、呼ばれたから外に行くだけだ。俺に気にせず、家に帰ってていいからな。もちろん、お前の家に」

「分かった。じゃあ見ておく」

「いや、やめて。心配しなくても会うのは男だ」

「それならいい。帰る。じゃあ、また」

「またな、鮫浜」

 俺のことを好きでもないのにリアルタイムで見つめていたい鮫浜は、放課後のバイト以外で、動く場所全てに付いてくる気満々だった。誰でもいいから鮫浜をもらってあげてくれ。このままでは俺の精神が闇落ちしていきそうで怖いです。それはそうと、俺の部屋にも勝手に侵入することをやめるように注意したので、さすがに不法侵入はやめるはずだ。知らない間に見られているのも恐怖ありまくりではあるが、どうやら池谷と何かしらの関わりがある時に動くらしい。俺から池谷サイドに行くことは無いのだが、背中フェチなあいつを振り払うことも出来ないために、放置しているのが現状だ。


「あら、どこに行くのかしら?」

「男の所だ」

「あ、あなたって、やはりそうなの? 八十島くん……彼だけでは飽き足らず、とうとう二人目を」

「そうじゃねえけど、そう思っていてもいいや。俺は急ぐんでな。じゃあな、池谷」

 何故か知らんが、浅海の力を借りてもお友達は出来なかったらしい。俺と話す率が高いせいか、他のモブ男子も近寄って来ないらしく、とても可哀想な子である。鮫浜の視線のこともあるので、俺は学園の中では放置しとくことにした。もちろん、泣かせないように優しい瞳で見守っている。


「な、何なのかしら。あゆとは凄く話しているくせに、わたくしを放置だなんて生意気すぎるわ。どんな男と会うのか目撃してやろうじゃない! そしてそれをネタにしてあげるわ」


 静かな学園生活はどこへ行ってしまったというのか。浅海と俺だけの気ままな学生生活を送る計画だったのに、どうしてこうなった。まぁ、肩の荷の一人でもあるさよりを好きな物好きさんがいるなら、一生懸命に耳を傾けてやろうじゃないか。そうすれば俺の重荷は鮫浜だけになる。背中も軽くなるだろう。


「で? お前は誰? 俺のクラスの奴じゃないよな? モブしか確認出来ていないぞ」

「いや、同じクラスだ。高洲にとってはその他大勢で眼中にないかもしれないが、俺はきちんと生きているんだ。お前みたく目立つ顔でもないけどな」

「ほう? それは悪いな」

汐見しおみうしおだ。俺が池谷と付き合えるようになるまで協力してくれ」

「しおしお君に協力して俺に何のメリットが?」

「入江先輩のことが気になってるんだろ? お前のバイト先の奴は俺の知り合いなんだ。だから情報提供してもいい」

 意外な奴から意外過ぎる情報提供が舞い込んできたか。バイトの奴ってまさかあいつじゃないよな。野郎の名前は知らないし覚えてもいないけど、何度か告白の場面を見られてるしそういうことかな?


「いや、だとしても必要ないな。協力もしない。自分のことは自分でやることにしている。それが男と男のとの約束だ! 好きなら告ればいいんじゃね? そこに来ていることだし」

「な、何? 来ているって、池谷がか?」

「あぁ、いるぞ。俺の背中は池谷の視線をサーチ出来るんだよ。見られていることくらい分かる」

 予想通りの行動だった。背中に夢中になりすぎると周りを気にすることなく付いてくるからな。それでなくても、わざと付いて来させるようなことを言ったわけだし。簡単に釣れたわけだ。


「おい、さより! 出てこい! そこにいるのはバレバレだ」

「さよりだと……? 呼び捨てってことはお前、そうなのか?」

「断じて違う!」

「いや、普通呼び捨ては、よほど親しくないと出来ないもんだし、好きなのか?」


「あり得ん!」

「あり得ないわね!」

 おおっ! すごい! 全くの同意見だった。ユニゾンか? 


「い、池谷さん!」

「あら、あなたは……どちらさまかしら? ここにいる男と逢引きしていたのでしょう? 背中以外のどこがお好きなの? 正直におっしゃっていただければ、このことはわたくしの心の中にだけ閉じ込めておくわ」

「俺は汐見潮です。俺、池谷さんのことが好きです。だから、この場ででも構わないので返事をくれませんか?」

 おー! 男だな。すぐに告白とかやるじゃないか。俺がいなくてもよかったんじゃないか? いや、俺に付いてきたからこその告白になるのか。そういうことなら協力済みじゃないか。良かった良かった。


「うし……も、もう一度お名前を教えてくださらない?」

「うしおです。俺と付き合って欲しいんです!」

「えと、その……」

「さより、頑張れ。応援してるぞ! これで俺の背中から卒業だな。じゃあ、さらばだ」

 いやー良かった。これで一人の小悪魔は俺の元から離れるだろう。さよりが美少女なのは事実だし、黙っていれば俺と違って、声をかけてくる物好きな奴はいたはずだからな。ってことで、バイトに行くとするか。


「お、お待ちなさい! わたくしの許可もなくどこへ行こうというのかしら?」

「んあ? いや、お前告られてるし。俺がいたらしおしお君に悪いだろ。だからバイトに行く」

「だ、駄目よ。許さないわ!」

「お前の許可は求めてないぞ。ほら、しおしお君にきちんと向き合ってやれ。そして受け止めろ」

「ラ……ライバル。わたくしのライバルであるあなたは、勝手にわたくしから離れることは出来ないわ! 勝負の決着もついていないのに、そんなの許さないわ」

 何を言ってやがりますか、この偽胸さんは。偽胸……これは最近になって、便利なアイテムが出回った関係で、さよりのナイムネがいきなり魅力的な輝きを放つようになった意味である。俺は知っていたから驚きもしなかったが、周りの野郎どもは顔しか見ていなかったのに、偽胸にも注目をするようになって女子人気を独り占めだ。そのせいでますます友達が出来なくなっているという、悲しい現実がさよりを襲っている。それにしても、ライバルって何だ? ライバルというと恋敵とか好敵手とか、宿敵とか、とにかく何かしらでの意味なのだが、目先生の紹介通り、コイツは世間のことを知らない可哀想な女子なのかもしれない。


「湊は、とにかくライバルなの! だ、だから、許さないったら許さないの!」

「駄々っ子か! じゃあ勝負するか?」

「の、望むところよ!」

「俺はお前に誰かを、今に限って言えば、そこの潮をお前の彼氏にしてやろう」

「それならわたくしは、湊に彼女が出来ないようにして差し上げるわ! ど、どうかしら?」

 勝負にならないし意味が分からん。恋の敵どころか味方になってやるのに、なのにどうしてコイツは俺の恋路を邪魔するんだ。彼女が出来ないとか、悲しい学園生活過ぎるだろ。ムカつくぞ。


「ふざけんな! お前に俺の恋を邪魔する権利なんてあり得ねえ。お前そんなんだから残念な女――」

「あ?」

 あっ……しまった! よりにもよってしおしお君が沈黙してモブ化しかけている状態で、禁句を口走ってしまった。これはまずい。せっかく彼氏が出来そうな予感さえしていたのに。静まれ、静まってくれ。


「おい、湊。てめえに言われたくねえんだよ! 背中と卑猥な声だけの奴に、そんなことを言われる筋合いは――」

「さより!」

「なっ、なにしやが……んむーんむー」

 思わず手で口を押さえつけちまったが、ギリギリセーフか? しおしお君の表情はどうなった? って、あれ? いなくなってる……だと? 遅かったのか? それとも非現実的な言動を信じられずに去ってしまったか。だとしたらまだ機会は残されているな。しおしお君。せっかくちゃんと名前を与えられたのだから、一度だけで消えるのは切ないぞ。俺としては何としても、さよりに彼氏を作らせて俺の邪魔をしないようにしたい。


「い――ってえええ! や、やめろ、やめて! 噛みつかないで」

「あなた、わたくしを死なす気? あなたのその手は危険すぎるわ。好きでもないのに妊娠したらどうしてくれるのかしら?」

「はっ? 妊娠? 何を言っているのか聞いてもいいかな?」

「昨日見たテレビで言っていたわ。何のアニメかは分からないけれど、その手に触れるだけで子供が出来るって言っていたわ。あなたもそのたぐいなのでしょう? そんな手をわたくしの口に……こ、困るわ」

「アホかーー! アホの子だと思っていたが、本物すぎるわマジで! どんなアニメかは知らんけど、あり得ねえからな! もう少し教養を身に付けろっての。マジでお前、放っておけねえ」

「えっ?」

「とにかく、バイトの時間だから先に行く。じゃあな、お前も気を付けてきちんと家にたどり着けよ?」

「え、ええ……」

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