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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第2部第1章:メモリーズリターン~カノジョになるにはまだ早い!

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141.興奮よりも心を手に入れてみようか


「えー……っと……みちるのその行為には、何の効果があるか聞いても?」

「特には」

「何かの雑誌を参考にしただとか、もしくは男が喜びそうだから実行したとか、色々あるんじゃないかなと思うんだが、どれも違うとか?」

「――?」

「あー……よく分かった。声は可愛いが、そこから始める奴だコレ。某令嬢とは違う残念さがあったのは、まさにコレのことか」


 風呂に入れと言われたので、問答無用で初めて訪れた女子の家の風呂に入浴した。


 入浴したまでは普通だったのに、湯気の登場と同時に、素っ裸のみちるが堂々と入って来たのだ。


「うおぃ!? な、何で入って来るんだ?」

「日課だから」

「いや、うん。分かるけど、落ち着け! 俺は男だ。みちるは同年代の女子だぞ? 何故堂々と入浴してくるんだ?」

「何か悪いこと?」

「悪いも何も……俺に裸を見られて平気なのかよ! それとも男だと思ってないのか?」

「高洲はどう見ても男。女には見えない」

「ソーダネ」


 こうも心の入っていない女子は初めてかもしれない。少なくとも、鮫浜はそうじゃなかった。


 さよりは感情がありすぎて議題にも上がらないが、この女子はそのどれにも属さない。


「そのオムネさんが中々に立派なのは認める。しかし……みちるがそういう人間だとすると、俺だけが恥ずかしくなる……って、何してるー!?」

「背中に」

「気になるっての! 俺は心があって、みちるは何とも思ってないかもだけど、その立派なオムネさんを背中に付けられて平常でいられるわけが無いだろーが!」

「嬉しいってこと?」

「それな」

「……そういうことなんだ。次から気を付ける」

「いやいや、次も一緒に入るとか勘弁してくれ!」

「お湯の有効活用。それに、電気も上手に使うのが商売上手」


 ただ飯を頂いて、家も借りて……混浴も頂いてしまうなんて、そんなのは聞いてない。


 普通なら、いや、年頃の男子なら素っ裸な女子と混浴というだけで、夜中の商店街を猛ダッシュで突き抜けて行けるくらいの瞬間的な瞬発力が生まれてもおかしくない。


 もっとも俺の場合はすでに鮫浜とか、さよりとか……学園の二大美少女とそれに近いことが起きてしまっているだけに、今さら驚くことでは無いはずだ。


「おぉぉぉ……かつてない感触が襲って来ている……鮫浜よりもこれは――」

「鮫浜? それは彼女?」

「違う……」


 鮫浜に告白を決め、その後に色々あったが、彼女の場合……どうやら俺を手に入れるまでが楽しかったらしく、俺からの告白に戸惑っていたのは最初だけだったらしい。


 好きを知る前に、彼女は元カノになってしまった。


 鮫浜あゆの闇は、そう簡単にはこじ開けることが出来ないみたいで、付き合ったからには彼女の素性を知ろうと近づいたのに、それを危険だと判断されて今に至っている。


「と、とにかく俺は先にあがる!」

「服はまだ乾いていないから、体をきちんと拭いてそのまま寝ていい」

「……春先はまだ寒いんだけどな」

「じゃあ添い寝する」

「それはちょっと勘弁」

「何故?」

「俺にはその覚悟が無いからだ」


 ――といいつつ、さよりとか偽妹さんと添い寝したことがあるけど。


「部屋を暖かくしていい。高洲が風邪をひくのは困る」

「責任があるからだろ?」

「そうじゃない。とにかく、風邪ひかないで。おやすみ」

「お、おやすみ」


 オムネさんも何もかもを隠さないみちるは、色んな意味で大物過ぎた。


 しかし心が無い女子は、鮫浜の闇よりも強敵かもしれない。


「……ううーん? ん?」

「起きた?」

「……っ!? 待て! 何で布団の中にいる?」

「添い寝効果で風邪知らず」

「そりゃ、寒くは無かったけど……って、みちるはちゃっかり服に着替えてるんだな」

「わたしも裸になる必要が?」

「無い! あるわけない! と、とにかく、起きるから布団から出てくれ」


 この場にさよりがいれば、一気に修羅場になりそうな光景なのに、俺自身も興奮する気持ちがどこかへ消えてしまったみたいだ。


 みちるが男子の理想女子になってしまったら、それはそれで一緒に居づらくなるかもしれない。


 とはいえ、感情も興奮も覚えず、何も感じない心を持つ女子とはどう向き合えばいいというのか。


「ご飯食べて」

「分かった」


 一見すると既に夫婦みたいな感じに思えるが、そうじゃないと断言出来る。


 バイト先が開示されている以上、下手なことも出来ないし、本当に厄介なことに巻き込まれたかも。


 朝食を食べ終えると、みちるは先に学校へ行くと言って出て行ってしまった。


 その時点で悟ったのは、チャリを早く改造し直せという無言の圧力だ。


 さすがに今日は自宅に帰らないと身が持ちそうにない。


「オッハーヨー! 湊くん!」

「何だよ、朝からそういうテンションで話しかけて来るなよ」

「むっふふ……そんなことを言っていいのかなぁ? いいわけ無いと思うんだ~」


 まさかコイツ、どこかで盗撮してるのか? どうせみちるとのことだと思うが。


 学校にすぐ着くのは魅力的だが、優雨も家が近いのか、着いた途端に話しかけられてしまった。


「あの子は優雨と同じクラスなんだろ?」

「そうだよー! 可愛いよね~」

「可愛い? 心無き女子だぞ? そりゃあ声は可愛いけど……」

「ノンノンノン! 湊くんは女子を知らなすぎだと思うんだ~」


 鮫浜とさよりと姫ちゃんと……しずも入れれば4人くらいは知っているんだけどな。


「お前に言われたくねー! このボクっ娘が!」

「……蒼ちゃんは男子に大人気なんだぞ? ボクよりもモテモテ女子なのだー! そんな子と一緒に住むとか、湊くんは早死にすると思うな」

「勝手に殺すな! 優雨よりもモテモテとか、それは比べようが無いだろ」

「じゃあボクのクラスに遊びに来てよ! 驚くと思うしー」

「断る! 会いに行く理由がない」

「何でさー! 湊くんは欲が無さ過ぎるぞー」

「性欲なんぞ出したところで、心が無かったら無駄に等しいと分かったからな」


 学校でのみちるが違うと言っても、恐らく姫ちゃんと似た感じだと思われる。


 それこそ俺と話す時と、同学年の女子と話す時とで違う程度のはず。


「それにお前の兄が同じクラスなんだろ? 俺は顔を合わせたくないし、話もしたくない」

「秋晴は怖くないよ? どっちかというとへりくつばっかで、面倒くさいだけ」

「余計に断る! 俺は面倒な野郎と関わりたくない」

「湊くんは優しいもんなぁ~確かに秋晴とは話が合わなさそうかな?」

「いい加減戻れ。そろそろ俺のクラス連中が来る頃で、面倒になりそうなんだよ!」

「じゃあ、お昼~! バイバイ~」

「永遠にバイバイ!」

「ムカつくー!」


 学園の時よりも、馴れ馴れしく近づく女子が多いのは気のせいだろうか。


 もっとも、学園では共学感は得られなかったくらいに女子が圧倒的過ぎたのもあるのか。


『うぜえ! ついて来るんじゃねえ、へりくつ野郎が!』


 ん? あれは嵐花さんか? 何やら足を目がけて付いて来ている野郎がいるみたいだが……

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