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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第十章:それでも彼女は俺の

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129.夢と現実の区別と鮫浜と。


「あゆさん、湊はあの部屋に?」

「いいえ、あなたは……浮間を見張りなさい。さよりに何かしたら即……」

「……! わ、分かりました。湊は彼女に運ばせると?」

「それくらいはやらせないとうるさいから。じゃ、後始末はよろしく。浅海」


 俺はてっきり浅海の逞しい腕で抱きかかえられながら、どこかの部屋に連れて行かれるかと思っていた。だが、予想外の人に抱きかかえられることになった。今の時点で、学園で姿を見せているのは鮫浜に関わっている人間だけだとは思っていたが、お前も関係者だったね、しず。


「あ、あたしが湊を抱っことかいいのかよ?」


「私にそこまでの腕力は無い。好きなのはバレバレ。だからこういう時に好きなだけ触れればいい……」


「そりゃまぁそうだけど。どこに連れて行くんだ? あゆについて行けばいいのか?」


「そう、黙って付いてくる。見る物全て、他言無用。もう転校したくないでしょ? しず」


「わ、分かった」


 イトコってのはマジで、逆らえない存在なのは分かった。じゃあ妹ちゃんは妹なのか? それもその部屋に着けば全て分かることなのか。いや、もう大体何となくあゆの正体が分かって来たヨ。浅海が恐れている存在とか、多分俺の予想の別視点側だ。


 学園内をそこそこ歩いていたらしいしずとあゆはどこかで立ち止まった。そして俺はようやくふわふわすぎるベッドの上に寝かされたと思っていたのに、何かが俺の両腕と両足を拘束し始めたよ? 


「うおっ! あ、あゆ、コイツは何だ? というか、湊を傷つけないよな?」


「傷つけたらすぐに燃やすからそうさせない。大丈夫……この子は私の意思で動く。しず、ご苦労……あなたはもう帰っていい。今日はどのみち、学園にいても授業も何も無いのだから……」


「そ、そうだけど、でも……あたしは湊が気に入ってるんだ。いくらあゆでも度が過ぎることをしたら、そん時は駆けつけるからな?」


「させない……早く出て行って」


 何をしようというのかね? もうすぐ目覚めてしまうわけだが、とりあえず身動きが取れないのは確定ですね。これはリアル? それとも夢? なんて分からないことが起きてるようです。


「……んんーん?」


「高洲君、起きた? ううん、起きてた?」


「起きてたけど起きれなかった。で? まるで触手のようなこの植物というか茨みたいなのは何かな?」


「私の部屋で会ったでしょ? この子は光……電気の光で起きるの。痛くしないように命令してるから、大人しくしてね?」


 大人しくも何も、拘束されてるから何も出来ないわけだが? 予想通り光を浴びて意思を持って動く植物さんでしたか、こんにちは。


「高洲湊くん。薄々気づいているかもしれないけど、私のことを嫌いになる?」


「いや、だけど……どうして俺なのかな? 一目惚れって言うほどイケメンじゃないし、お目に留まるほど大した奴じゃないぞ。鮫浜あゆさん、それともキミの遊び相手に選ばれたのかな?」


 俺が拘束されている部屋。それは学園内の全てを監視出来る部屋だった。この部屋は権限を持つ者じゃなければ入れないし、少なくとも学生はその存在すら知らない場所だ。まぁ、そうだろうな。俺個人やさよりのプライバシーを監視出来たり、俺個人の携帯に一方的に連絡出来たりするレベルなんて彼女しか出来ん。


「そういうことなわけですね、あゆさん?」


「あゆでいいよ? キミは私のモノだもの。でもごめんね? 私は学園の学生じゃないの……年齢こそ同じだけど、本当は通わなくていいし授業に出る必要もない。こう見えて忙しいの。使えない連中を排除したり、湊くんのことを気に入らない連中を消すのに忙しいんだよ?」


「道理であまり文句を言う奴がいないと思ってた。先生も知っていた、というより手下的な扱いか」


「逆らうものなどいないよ? だって、鮫浜のトップだもの。両親の財産も含めて、全て私のモノなの。湊くんが通っているこの学園も私のモノなんだよ? この学園にキミを陥れる輩は要らない……」


 夢か妄想か、いや、リアルだろうなぁ。姿はいつも見る背の小さな女子で、思わず撫でたくなるような丸みのあるショートヘアー。ただ一つ確かなのは、誰も寄せ付けないくらいの見えない闇のオーラが凄まじいってことくらいか。


 お金持ちのお嬢様以上の存在だったわけですね、分かります。そりゃあ闇も抱えますよね。


「じゃ、じゃあいつも一人で?」


「浅海は駒。しずはイトコ。その他の連中は私に従う者。私を満足させてくれる存在なんていなかったよ? でもね、高洲君。キミが浅海と出会ってこの学園に来たのは運命。私と出会う運命だったんだよ。だからこそ、池谷がキミの家の隣に引っ越して来るタイミングを見計らって、私も引っ越しを装った。高洲君はさよりの他に転校してきたのは私だと思っていたけど、私は初めからいた。キミが入学する前からね」


「おおぅ……そういうことか~闇を抱えている理由が分かってしまったなぁ」


 舟渡は彼女というか、恐らく浅海の手によってああなってしまったわけか。なんて世界かな。美少女なのにそんな闇を抱えてるとか、それはさよりでは敵わない相手だよな。


「ファミレスの時にいた両親っぽい人たちは?」


「私には親なんていないし、妹もいない。そうさせるのは簡単だよ? ばら撒けば、ね」


 深い、深すぎるぞ。これがマジもんの勝ち組かな? 闇天使は孤独の天使だったわけね。しかしそんな子に好かれるとか、俺って実はスゴイのか。さよりも美少女すぎるのに俺が好きだし、訳アリだけど。


「嫌いになった?」


「むしろ何で俺なのかなと? なんてことは無い平凡な男の子ですよ?」


「優しい子だから。好きになるのに理由が必要? 高洲君は、あり得ないくらいの距離から侵入してきた私を拒まなかった。あんな窓から乗り移れる部屋なんておかしいのに、それなのにいつでも怒るまではしなかった。私を怪しまずに、受け入れてくれた。キスもそう……拒む男は突き飛ばすのに」


「キスは拒まないだろ。よほど嫌いな奴からなら分かるけど、気持ちが無いとしないだろうし……だから、受け入れるってか、嬉しさの方が勝っていたっていうかね」


「そういうところが好きになった所だよ? これが私の全て……湊くん、私を知ってそれでも私と付き合いたい? 私がキミの彼女になってあげる。そうすれば何もかもがキミのモノになるよ。私の心もカラダも……全て湊くんのモノ」


 お前のモノは俺のモノが現実になるのか。いやいや、それよりもまずは彼女の行方と無事を確かめたいぞ。拘束されている俺が言うのも何だけど。


「さよりはどこに? 何であんな奴……浮間を放置しているんだ? あゆちゃんには無関係だったかもだけど、あいつは俺から俺に関わっている子を奪おうとした奴だぞ?」


「そんなに好きなの? 胸が無くて、最初にあんな暴力性の言葉を投げ続けられてきたのに、それでも彼女のことが欲しいの? 私なら全てキミにあげられるよ? 胸もさよりよりあるし、すでに何度か揉んでくれたよね。それでも彼女がいいの?」


「この期に及んでアレなんだけど、好きなのはさよりなんだ。確かに残念なオムネさんだけど、放っておけないっていうか、だからその……」


 本人には告白してないのに、何で俺は自分の置かれている状況を不利にしてしまうことを言うのか。


「ふふっ……好きなのはいいんじゃない? それだけのことだし。将来の妄想をしているさよりの思い通りにはならない。それならなおのこと、湊くんは私のモノとなることが決まっているよ? そうしないと、さよりは今度こそ助けられないし、唇以外も奪われることになるけどいいのかな?」


「そこも見られるんだろ? そこの無数のモニターでさよりを見せてくれ」


 浅海が見張っているから心配はしていないが、どこまで見張るのかが問題だ。さよりの唇程度なら何も口出ししないだろうし、だけどそれは嫌だ。


「高洲君。さよりを助けてあげる代わりに、私のモノになる? なってくれる?」


 こうくるだろうと思っていた。闇天使なあゆのことは嫌いじゃない。迷ってる余裕はないな。ここまでさんざん助けられてきたし、守られて来たのは事実だ。鮫浜と浅海がいなければ、俺は入江先輩から逃げられなかっただろう。バイトのこともそうだ。全部鮫浜あゆが仕組んだことだ。だから俺の答えは決まってる。

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